本論文では,知識工学的手法を用いた異常診断システムを提案する.化学プラントなどを構成する要素は,さまざまなプロセスに共通に用いられており,異常に関する知識も共通に利用することができる.ここでは,要素ごとにプロセス変数の異常と故障モードの因果関係を明らかにし,要素のフローグラフとしてまとめる.対象プロセスについて,その構成要素を明らかにし,各要素のフローグラフを結合することにより,対象プロセス全体のフローグラフを作成し,これを異常診断のための知識べ一スとする.診断ではプロセス内で検出される各要素の変数のずれ(異常)を基に,異常伝播経路を明らかにし,プロセス異常発生の原因を推定する.実験プラントに対して異常診断システムを構築し,異常診断実験により手法の有用性を明らかにした.
本邦では都市環境の土壌中水銀に関連する研究は少ない.水銀の環境保全を意図した環境対策には,環境への発生源の一つである土壌における水銀動態を把握しておく必要がある,そのため,都市地域の公園土壌41試料および大学キャンパスの土壌42試料にっいて調査した.その結果,土壌中の総水銀濃度は0,029~1.27ppm,平均0,30ppmであった.水銀濃度が0.25ppm以上の場合は人為的汚染の残留水銀が考えられた。土壌中の水銀濃度が0.25ppmを超える汚染形態にある試料土壌は公園が12%,大学キャンパスが64%であった.
原子力発電所においては,事故や故障・トラブルの重要度を,国際原子力事象評価尺度(INES)により,レベル0からレベル7までの8クラスに分類した評価が行われている.レベル4を超えた事象が事故と位置づけられているが,実際には重大な事故にまで至ることはきわめて少ない,しかしながら軽微な故障やトラブルはある頻度でもって発生しており,わが国では年間50件程度が通産省に報告されている.米国においては,このようなトラブルや事故に対して,その重要性をより定量的に理解することを目的とした評価と分析が行われている.本稿では,このような重大事故の前兆事象と考えられる故障・トラブルの分析手法について紹介する.
発電プラントを長期的な視点に立って効率的に運転・保守を行っていくためには,プラントを構成する機器等の総合的な設備管理すなわちプラントライフマネジメント(PLM〉が適切に行われる必要があ る、 ここでは,諸外国とわが国の原子力発電プラントのPLMへの取組みの状況を述べるとともに,機器 の寿命管理およびプラントの寿命管理にかかわる諸課題を経済性の面から検討した事例を紹介する.
プラスチックの合成に投入されたエネルギーをどれだけ保持したまま再資源化されたかで比べると容器等の再使用が最も好ましい.しかし,衛生性の確保,人件費高騰に対応して変化した流通販売システム等の問題があり普及していない, マテリアルリサイクルは再使用に次いで好ましいループといえる.マテリアルリサイクル率は平均10%である.製造工程の廃プラスチックのリサイクルは早くから行われていたが,現在はその85%が素材として再利用されている。一方使用済み廃プラスチックからの素材利用は3%と少ない.PSPトレ 単一素材で回収が不可能なものを対象とした資源化技術として,高炉での微粉炭の代替や一般可燃ごみとしての混合燃焼の熱回収発電が注目される.
設備診断に用いられている手法は,大別して信号べ一スのものとモデルベースのものがある.この手法を概説し,後者のなかからカルマンフィルタを用いた方法の事例を示した.また診断には誤りも発生しうるから,その評価について考えることが必要である.本稿では,“コスト”を評価指標とした方法とROC(動作特性)曲線による表し方にっいて述べた.さらに,ROCを用いてコスト最小となる動作点を 見いだす方法について,例を示した.
製造物責任制度に対する製造業者の対応として必要な製造物責任予防は,製造物責任防御と製品安全 より構成される. 製造物責任防御は,訴訟に備えた危機管理の一っであり開発・製造過程の文書管理と損害賠償に対する履行確保の生産物賠償責任保険が重要である.一方,製品安全は「消費者に安全な商品を供給する」ことであり,製品の故障とユーザーのエラーへの対応である製品信頼性と人間信頼性への配慮が大切に なる.