1992年のリオUNCEDにおいて危険有害性の分類および表示の調和を進めることが合意された.危険物輸送はもともと国際的な取り決めである国連勧告によっており,物理危険性の分類調和は国連勧告の試験法判定基準が採り入れられた.健康・環境有害性についてはOECDを中心に検討され,ほぼ分類の調和がなされたが,いまだ検討中のものもある.2001年の実施を目標に現在は表示の国際的調和システムの検討が開始されている.これらの状況について概要を述べる.
都市環境における表面土壌中の残留水銀の挙動について,熱分解法による形態およびその動態について調査した.一般都市環境の公園土壌,大学キャンパスおよび奈良市東大寺周辺土壌について調査した.その結果,用いた試料中の水銀種はおもに塩化水銀,有機物質結合水銀および硫化水銀であった.金属水銀は検出されなかった.酸性雨による溶脱実験では,抽出される水銀種はなかった.都市環境において,一旦土壌に吸着された水銀は化学的に安定な残留水銀種になることが判明した.土壌中の残留水銀の消失は大気への気化が唯一の経路である.
内径52mm,長さ100mmの円筒内に,超音波ネブライザーで発生させたドライクリーニング用有 機溶剤のミストを導入し,移動型電極を使った火花放電により,最小発火エネルギーを酸素濃度16~35%の範囲で測定した.また,酸素濃度21%における最小発火エネルギーの温度変化を26~44℃の範囲で求めた.酸素濃度を18%程度に下げると,ミストの最小発火エネルギーが高まるとともに消炎効果が大きくなるので,防災対策として有効である。一方,最小発火エネルギーは,温度が溶剤の引火点に近づくと急激に下り,常温の20分の1以下になることがわかった.
日本社会は,21世紀を目前に控え,大きな転換期に直面している.このような状況下,従業員の特性(ヒューマンファクター),組織の構造,企業活動の結果としての組織成果の関連を見直す必要がある.三者の関連を明らかにし,ヒューマンファクターおよび組織を構成する要素を操作することで,組織成果の向上に結びつけることが可能と考えられる.本稿では,組織と組織成果の一つの指標に絞って検証を行い,組織成果向上のために実施すべき事項の判断材料を作成した.
化学品が起因となる災害では取扱い物質がさまざまな危険物性をもっていたり,熱や圧力などのエネルギーが加えられたりするためヒューマンエラーが起因となる例が少なくない.1984年までの30年間に石油化学工業で発生した重大災害の分析では,ヒューマンエラーは2番目に高い事故原因で,それに起因する被害額は5億ドル以上,1985年から1990年の問に20億ドルもの損害を与えたという報告もある.しかし,事故の原因が複雑な要素の組合せであることが多く,ヒューマンファクターの解析は容易ではない.本稿では,化学災害の事故事例データベースであるTAD(IChemE,英国化学工学者協会),FACTS(TNO,オランダ応用科学研究機構)からヒューマンファクターの発生傾向を検討し た.
家電製品は,不特定多数のユーザーが取り扱うので,誤使用を前提とした安全性設計が必要である.この安全性設計を進めるための考え方,方法および手順について説明する. さらに,安全性設計のチェックには,既存の代表的なFMEA,FTAが広く用いられているが,誤使 用と製品安全の解析にはあまり向かない.また,潜在的な不安全要因の検出力も十分とはいえない.そこで,これらの技法をべ一スとして改善を行った新しい,安全性解析技法二つを紹介する。ここで は,技法をより効果的に活用するためのポイントに重点をおいて述べる.
高齢者等にみられる加齢に伴う聴力低下と音情報伝達に着目した研究の中で,地下空間が有するさまぎまな環境条件下における研究結果を述べた.明瞭度試験音節を用いた聴取実験から,聴力低下がある高齢者の音声聴取は環境条件に容易に影響されることがわかり,その聴取率は健聴者にくらべて低いだけでなく,異聴傾向にも若干の差異がみられることを示した.高齢化に対応した社会構築を考えるとき,人間にとって最良のコミュニケーション手段である音あるいは音声による情報伝達という観点は不 可欠と考える.
バッチ反応器は放散設備や計装設備によって過圧(過大な圧力)から防護されている.これらの防護対策に対する影響因子を解析するために,国内外の反応器の過圧事故を調査した.まず,事故原因の分類項目を設定し,それに基づいてFTAを作成した.また化学会社への聞き取り調査も実施した.そして,事故事例をもとに箏故原因ごとの相対発生頻度を算出した.さらに,破裂板と,それに付属するベントシステムの故障率を算出し,放散設備と放散以外の安全対策の事故防止確率を比較した.
プロセスプラントの事故は単一の原因によって発生することはまれで設計,施工,操作,設備管理などの複数の不備が複雑に絡み合って発生することが多い.このため,一つの側面のみからの対策では片手落ちになり総合的な対策,管理が必要となる。 先回は,安全化にあたっての防護レベルの考え方と,フェイルセーフ設計の考え方について説明した.今回は,プラントの安全確保にあたりきわめて重要なシステムであるインターロックシステムについて誤操作防止ならびに危険事態回避という観点から概説する.