1986年度に発足した認定保安検査実施者の制度が,直接的に設備管理を利益に結びつけたために,化学・石油精製プラントの設備管理の質は近年飛躍的に向上している.しかし,一方では,競争の劇化に伴い,保全費の削減,オペレータ数の削減,保全部門の分社化などの逆風が吹き荒れている.したがって,従来のように,設計,製作,施工の不具合を設備管理に背負わせ,設備の不具合をオペレータに背負わせてプラントの安全を確保するという方法はとれなくなってきた。このような状況に適応するために,設備管理と異常時対応システムを見直すことが本稿の目的である.
昨年発生したJCO臨界事故は,さまざまな組織要因が関与して発生した組織事故であるととらえるべきことが次第に明らかにされてきた.これは,JCO事故特有のことではなく,近年発生した医療事故や県警不祥事などにも共通して見られる特徴である.そこで,本稿では臨界事故を始めとする過去の重大事故にどのような組織要因が関与していたかを示し,どのような戦略でこれらの組織要因の影響から逃れうるかにっいて述べた.特に,安全文化が組織要因の改善に果たすべき役割について言及し,安全文化の醸成には組織がとる行動としての(安全)管理が重要であることを示した.具体的には,「動的な潜在リスク」を発見し,軽減するための情報収集システムおよび従業員参加型の安全活動の重要性 を指摘した.
コンクリート構造物は,適切に設計・施工をされたものであれば,他の建設材料を用いたものに比較して十分な耐久性を有していると考えられる.しかし,近年,トンネルコンクリートの崩落や補強鉄筋の発錆が相次ぎ,コンクリート構造物の耐久性が問題になるとともに,その安全性までもが問題となっ ている. 本稿では,本来,耐久的なコンクリート構造物が,特殊環境で生じる経年劣化機構にっいて概説するとともに,施工に伴うコンクリートの初期欠陥がこれを助長する機構を説明している.また,これらの初期欠陥や劣化機構から山陽新幹線の福岡トンネルおよび北九州トンネルにおける覆工コンクリートの崩落状況とその原因についての私見を述べ,今後のコンクリート構造物の施工に対する要望についてと りまとめる.
環境中に残留する多数の微量化学物質にヒトや生態系が暴露される機会は今後とも増加すると予想され,環境リスクを回避するための包括的な化学物質管理体系の確立が求められている.化学物質の総括的影響を評価するバイオアッセイは既存の個別物質ごとの事後管理を補完する有力な環境管理の道具として期待されている.環境管理のためのバイオアッセィの役割,特徴,種類を述べ,さらに水環境管 理,廃棄物管理への適用例を紹介する.
埋設低圧ガス導管の破損部分から漏洩する音響信号を管内および管外で検知することで,破損箇所を探査する方法について検討を行った.孔状破損に伴う管外への漏洩音響信号の周波数特性および破損径の変化による周波数スペクトルの変化を明らかにした.また,音響インテンシティ法により地表面上から漏洩音源の位置同定は可能であるが,ガス導管上の土被り厚さの増大に伴い急速に探査精度が低下することも判明した.さらに,埋設条件下の管内への漏洩音響信号は管内暗騒音とのレベル差が大きく破損有無を判断でき,破損状況の違いを周波数スペクトルの違いから判断可能であることを示した.管内への漏洩音響信号の距離伝搬減衰特性から,導管口径よりも波長が長い成分に着目し,相互相関法による破損箇所の位置同定の可能性について言及した.
プロセスプラントの事故は単一の原因によって発生することはまれで,設計,施工,操作,設備管理などの複数の不備が複雑に絡み合って発生することが多い,このため,一つの側面のみからの対策では片手落ちになり,総合的な対策,管理が必要となる. 本稿は前号に続きプラントの安全性確保にあたり重要な安全性解析手法のうち,What-if解析,FMEA,FTAにっき概説し最終回とする.