大きな災害を伴う事故が起こると,そのような事故を防止する対策がとられる.対策を実施するためには,対策を可能とする技術的な裏付けが必要である.開発される技術の多くは,この過程を経ており,すでに発生した大きな災害と同様の災害を防止する意味では,開発した技術は万全であるといえる.それにもかかわらず事故が起き,大きな災害となる,新しい災害に対処するために新しい技術が開発される.このことを,いくつかの例をあげて解説し,技術開発における安全確保の考え方について考 察した.
ゼロエミッションは持続可能な発展のためのキーワードとして広く普及しており,その方策についてはさまざまな取り組みがなされている.本稿では,持続可能な発展を実現させるために近年提案されているいくつかのコンセプトを概説するとともに,文部省科学研究費特定領域研究「ゼロエミッション」を通して報告されている成果を交えて,環境へのエミッション低減の方策について概説する.具体的には,地域の物質フローに着目して,ライフスタイルや生産プロセスでのエミッションの低減に加えて,物質フローネットワークの構築によって,物質すなわち資源を有効に活用するための手法が有効であり,そのための地域の物質フローの解析方法について述べた.
都市環境にある薬医・理工系大学,病院,旧軍事施設跡,アマルガムを使用した金メッキ作業所跡,辰砂を赤色顔料や防腐剤として使用した寺・神社などの周辺地域の土壌には高濃度の水銀が残留している.その値は一般環境の100倍以上含有している場所もある.残留水銀の形態は常温では比較的安定な水銀塩化物,有機物結合水銀および水銀硫化物であるが,溶脱実験の結果,土壌中の水銀種は水質によって,約0.1%が溶脱することがわかった.したがって,5ppm以上の水銀を含有する表面土壌は,土壌の汚染にかかわる環境基準(検液11につき0.0005mg以下〉を超える溶脱が起こる恐れがあること が判明した.
各国の危険物の専門家の代表からなるOECD-IGUSの概要と危険物規制に関する国際情勢について紹介するとともに,危険物の国際化に向けての日本の対応,特に技術的課題についての実質審議の場で IGUSに向けての日本の対応と今後の課題について述べた.
石油化学プラントにおける運転監視システムの必要性を述べ,実用開発を進めてきた運転監視システムの実例を紹介する.具体例として,運転予測ガイダンス(バッチ重舎反応器の反応監視システム,ニューラルネットワークを用いた複合装置電力消費量の予測ガイダンス,カオス的時系列解析を用いた蒸留塔塔底温度の予測ガイダンス),異常監視・診断システム(蒸留塔におけるオンライン異常診断エキスパートシステム,重合反応器の複合形異常信号検知システム)について概説する.
ウラン溶液の製造が開始された1986年までさかのぼり,臨界事故の背景を検討した,その結果,代用設備で製造し始めたこと,作業員の工夫を生み出した不適切な工程管理や労務管理,決まりを遵守しようとしない組織風土などの背景要因が明らかになった.これらの要因が約13年の年月をかけて,臨界事故を防いでいた深層防壁の壁を壊し,臨界事故が発生したと考えられる.この事故は,安全性確保に向けた安全文化の醸成,安全のためのコストの必要性,管理とknow-why教育の重要性,設備設計 の重要性を示した.
気候変動枠組条約の京都議定書で定められた法的拘束力のある温室効果ガス排出量削減目標を順守するためには,各国の排出量の正確性を保証しうる推計方法の整備が必要である.このため,IPCCでは温室効果ガスインベントリー作成のグッドプラクティス法を,世界各国の関連専門家を集めて約1年半かけて作成し,2000年5月の総会で採択した.ハイテク産業で多く用いられている地球温暖化係数の大きい人工物質であるHFC,PFC,SF6は京都議定書の対象ガスに加えられたため,その算定方法がこのグッドプラクティス法で全面的に整備された,しかし,これらのガスはフロン代替物質として世界的にその利用が拡大多様化しっっあるため,さらなるインベントリー作成方法の見直しが必要とされており,これらのガスの主要生産・使用国である日本の積極的な貢献が望まれる.
震央距離約60~150kmにある中国石油公司の3石油タンク基地において・ほかに地震被害が全くな い中でスロッシングにより石油タンクに重大な被害が生じた.被害形態は,浮屋根ポンツーンの座屈,側板一固定屋根接合部の座屈および側板破口による油漏洩である.特に最後の事例はほぼ全量の漏洩で環境問題にもなった.これらの現象を把握するため,基地近傍で得られた地震記録を入力としたスロッシング応答解析を行った結果,対象が長周期すなわち波長が長くても,地下構造によってはタンクサイトからやや離れた地点の記録は入力地震動として用いることができない場合があることがわかった.