本稿では,機械安全に関する国際安全規格の潮流を示すために,欧州機械指令に基づいて作成された機械安全の考え方と,’99年発行の米国産業用ロボットの安全規格を一部比較して示す.米国のロボット規格は,近年発行の国際安全規格ど93年発行の米国軍用安全規格MIL-STD-882Cを配慮していると考えられる.このため本稿では,欧州機械指令およびこれに基づく国際安全規格,ならびに米国における上述の軍用規格および新発行の産業用ロボット安全規格の要求事項を比較して示し,概説する.
法令・規格への適合性を確認し表明する行為を「適合性評価」と総称し,従来から認証,認定などさまざまな言葉で呼ばれてきた活動を国際的に標準化する動きが進んでいる.その中軸に位置するISO/CASCO(国際標準化機構・適合性評価委員会)の最近の活動と周辺の状況を紹介し,統一的アプロー チに向けた基本問題の検討状況と動向を述べる.
流体力学(computationalHuid dynamics,以下CFD)モデルによる拡散シミュレーションは,これまでに数多く紹介されているが,LNGのように低温かつ高密度のガスについて評価した例は少ない。 そこで本稿では,CFDモデルの一つである“SIGMET一一J”について紹介するとともに,計算結果をLNGの流出実験と比較し,このモデルの有効性を明らかにした.
自治体が石油コンビナートの防災計画を策定するときの基礎となるアセスメント手法について概説した.この手法は,リスクの概念に基づいて,平常時と地震時にコンビナートで起こりうる災害について,発生危険と影響度の両面から評価するものである. 災害の発生危険は,日常操業での発生頻度または地震が起こったときの被害確率として表し,イベントツリー解析により推鑓する.一方影響度は,火災や爆発などに伴う物理的作用が人体に影響を及ぼす範囲として表し,確定的な解析モデルを適用して算定する.これらの結果をもとに,リスクマトリックスの考え方により対策の必要性や優先度の検討を行う.
阪神大震災5年後の被災者状況を把握する目的で,災害復興住宅での環境と居住者の健康調査を行った.調査は本人に記述してもらう健康アンケート調査,大気汚染測定のためのNO2カプセル調査と騒 音計による騒音調査であった.以下の結果が得られた. (1)NO、の下環境基準40ppbを超えた地点は半数以上に達し(44/74),上基準60ppb以上の地点も18%(13/74)であった.騒音にっいても同様で,高齢者が多数居住している居住地点であり ながら,昼間70dBを超えた地点が85地点中3地点(3.1%〉,65dB以上が23地点(27%) も存在した。 (2)105名回収した健康アンケートでは,5年経過した現在でも震災による健康影響が30%を占め,他の調査地域では見られなかった率であった.また現在,喉のいがいが,からからの有訴率 が53%をも占め,これも他地域ではなかった. (3) 2号館でのアンケート回収が5階以上になったことから,1号館回収の52%に対して,最寄りのNO2濃度とアンケートの有訴率を対比させることを行った.NO・濃度を4区分し・各区分 での有訴率と各区分平均NO,濃度とを対比すると,(7)項目(闘のチカチカ)と(9)項目(喉がいがらい)とが有意に相関していることを示した.
日本学術会議「人間と工学研究連絡委員会安全工学専門委員会」では,交通機関の安全をいっそう向上させるために交通事故調査のあり方に関する検討を重ねてきた.その結果,平成12年3月に,対外報告「交通事故調査のあり方に関する提言一安全工学の視点から 」をまとめ,具体的な9項目の提言 を行っている. 本稿では.提言をまとめるまでの経緯,提言内容を紹介するとともに,その後平成12年7月に開催された日本学術会議主催の第30回安全工学シンポジウムでのオーガナイズドセッション「災害事故調査のあり方」における議論内容も述べ,種々の視点からの意見もあわせて紹介している.
(社)日本化学工業協会労働安全衛生部会では,会員会社および協力会社の労働災害発生状況より,発生率の多い「はさまれ・巻き込まれ災害」「有害物等≧の接触災害」について,対策指針を作成した、 本稿では,会員会社および協力会社における有害物等との接触災害事例を解析・検討し,安全対策指針,対策事例,応急措置,関連法規および安全配慮義務などをまとめた「有害物等との接触災警対策指 針」を紹介する.