日本の労働安全衛生は成熟期にあり,世界的に見ても最良の部類に入るが,ゼロ災害にはほど遠い.四半世紀,特に最後の10年における労働衛生分野の動向を有筈要因との対応,廃棄物処理,事務所環境,情報処理,非定常的作業環境などについて述べた.20世紀末からすでに始まっている産業構造の流動化と第3次産業化・知識労働化,高年齢化など労働態様の変化に技術的,組織的に対応するととも に,21世紀には安全衛生技術の国際的移転を促進し,国内においては中小規模企業にも安全衛生が敷ふ 衛するようにするべきである.
東南アジア諸国のなかで経済発展の著しいシンガポール共和国にっいて,同国における1)安全衛生関連法と行政組織,2)労働者数と労働災害の発生状況,3)おもな安全対策などの労働安全衛生に関する事項,および4)昨今注目を集めている労働安全衛生マネジメントシステムに関する動向について現地調査を行ったので,その結果を報告する.
契約どおりの商品を提供していなければ,契約の相手方に対し契約責任を負う,欠陥製品の売主は買主に対し,欠陥プラント建築請負人は注文者に対し,損害賠償責任を負う.1995年7月からは、製造物責任(PL)法が施行されたので,欠陥製品のメーカーは,過失の有無にかかわらず,契約関係にない第三者に対しても,賠償責任を負うことになった,PL法の導入は,技術が高度化した現代社会における公平なルールであり・世の中の製品の安全性を高め,安全な社会をめざす作用も有する.事故情報は,公共の財産である.これを極力公開することが大切である.
低速回転する軸受の設備診断は,異常に起因する信号が微弱なため困難である.ところで,軸受の代表的な欠損の一っである転動面剥離では,形状,回転数によって定まった周波数の振動が,ある時問間隔で発生するので,この検知にウェーブレット変換が用いられる.しかし,これだけでは十分な検知能は得られなかった.そこで本報では,ウェーブレット変換にノイズキャンセリングを組み合わせることで,その検知能を向上させることを試みた.小型深溝型軸受を用いた試験ロータを作成し,!~5rpsで駆動し,欠陥の検知の実験を行った.比較の対象としてFFT(高速フーリエ変換)を取り上げた.そ の結果,本報の方法により,検知可能な回転数,欠陥の大きさの範囲が拡大できた.
ARCは,反応性化学物質の熱暴走危険性評価に有効な断熱熱量計である.本稿は,ARC測定データを実装置に適用する際に必要なφ補正について,当社で採用している方法を紹介した.さらに,安全面でのプロセス上限温度であるADT、、の概念とともに,自己反応性物質や有機過酸化物を輸送する際の,包装品の温度管理の指標となるSADT(自己加速分解温度)をARC測定データから推定する方法 を紹介した.
環境中に放出される有害化学物質による人の健康リスクのスクリーニングレベルでの評価の概要を 「有害性評価」,「用量一反応評価」,「曝露評価」および「リスクの判定」の主要過程に分けて解説した. さらに,関連する用量一反応評価データや化学物質環境中濃度推定モデルの入手方法を紹介し,わが国においてスクリーニングレベルの人健康リスク評価を実施するうえでの問題点を示した.
重大化学災害は物的被害,経済的損失だけなく,人的被害もまた莫大であり,予防の必要性についてはいうまでもない.問題はどのように予防ができるかである.韓国には規定数量以上の有害危険物質を保有する事業場が700余か所あり,大きな石油化学コンビナートが3か所にある.これらの場所で最近発生した重大事故150件について年度別・産業別・事故事象別・装置別・運転状態別・原因別で紹介 し,最後に韓国の産業安全対策の現況について説明した.
企業が海外進出を計画するにあたっては,現地に建設する施設や設備の安全性についての検討が不可欠であり,現地の安全防災関係の法令・規則とその運用実態をあらかじめ把握しておく意義は大きい,イギリスでは,建造物の防火・防爆関係規定には性能規定がいち早く導入され,また,労働安全関係も目標設定型の規定となっている. これらの規定の体系や根底の考え方は,昨今の日本における建築防火や労働安全規制に大きく影響を与えている.したがって,イギリスの安全防災関係の法令・規則とその運用実態を知ることは,進出を計画する企業ならずとも参考になる部分が多いと思われる・