安全の立場から,選択肢の増加や多様化という最近の自由化の方法論について,いくつかの疑念を述べたい.ここでの主要な論点はつぎの二つである.一つは,このような方法論は情報や知識が十分でない対象においては,過剰な判断負荷を強いることになり,これは安全を阻害する可能性があるのではないかという懸念である.もう一つは,どんな場合でも選択肢の中には最善の肢があるはずだから,安全のためには選択に任せるよりも,なんらかの方法でこれを指定してルール化するほうが適当ではないかという問題である.その点,真の安全の安定性や継続性を得るには,たとえ,選択というキーワードが市場主義に基づいた現代の潮流であるとはしても,これだけを強調するのは疑問というのがここでの基 本的な考え方である.
産業安全研究所ではヒドロキシルアミン再蒸留設備における重大災害の原因究明を実施した.その結果,ヒドロキシルアミン(水溶液を含む)およびそれらの塩類について・爆発危険特性に関する多くの知見が得られた.このヒドロキシルアミン等の危険性による同種災害の再発防止のため,物理的・化学的性状,発火・爆発特性,爆ごう特性,製造・取扱い時の安全上の留意事項等について,文献等で既知のデータも収録し産業安全研究所安全ガイドを公表した.本資料は,このうちヒドロキシルアミン等の発火・爆発特性としてDSCおよび小型反応熱量計を用いた熱分析試験と圧力容器試験により得られた 実験データを中心として抜粋し,取りまとめたものである.
特定非営利活動法人災害情報センターは,約129000件の災害情報データベースを作成・公開するとともに,月刊災害情報,災害事故年鑑,平成年間の事例約450件を収録した災害事故事例事典などを発行している,データは,発生年月日,場所,事例要約,被害数値,キーワードなどの基本データと,経過概要,応急対応,事後対策などの詳細情報,および情報源の書誌情報からなる. 災害情報データベースのおもな特色は,1)多様な情報を幅広く収集し情報源としている,2)事故の原因や背景などの詳細が公表されている重大事故に重点をおいている,3)事故の時間的発展経過を含むCase Historyを重視,4)事故後の対策や判決などの法的措置,社会影響などの事後情報をフォローしている,などで,今後の対策を立てる上で役に立つデータベースを目指している.
わが国では安全装置の利用の歴史が浅く,その性能に関する国の法令はおろか,技術的な基準もない.安全装置の役割を錠前のそれに準えれば,わが国では安全は「ただ」という歴史的な背景がこの事実に大きく影響していると思われる.一方欧州では防犯を鍵のようなハードウエアを依存する歴史が古く,その技術発展は独自の路線を歩んできた.今回欧州で「機械指令」以降,機械や設備の安全機能に関する国際規格が制定されたのを機に,筆者は欧州の安全装置の専業メーカ数社を直接訪問し,その製品内容や技術開発の動向,国際規格への対応を調査した.それらは独逸のピルツ社,シュメアザール, オランダのYISS,英国のHimma sella社であるが,これらの訪問成果から最先端の技術の動向を探った。
安全工学,信頼性工学それぞれ工学的専門分野を形成しているが,学術体系として近接した関係にあり,オーバーラップしている部分もあるのではないかと推測できる.筆者は,システム安全や確率論的安全評価・管理の専門分野で教育・研究を実施してきた.この過程で,両分野の相違点,また異なるがゆえの接点について,多少の具体的な知見を得たと考えている.そこで,本講座では,当該技術・学術分野の総合あるいは境界領域の理解と発展に資することを目的として,連載の形式で,両工学の接点に っいて概説する.
平成14年4月に北海道苫小牧市の製油所において重油直接脱硫装置の爆発火災事故が発生した.地元消防本部では,短い間に同一装置で2回の火災事故が起きたため,事故原因の究明や更なる事故の防止対策を望み,消防庁長官に火災原因調査の要請を行った.これを受けて消防研究所にも火災原因調査の要請がなされた,消防研究所においては,消防庁および地元消防本部と協力し,火災原因調査を行っ た. 今回の火災事故の原因としては,最初に開口した循環ガス硫化水素吸収塔のバイパス配管にある開口部より水素ガスを含む可燃性ガスが漏えいし,それになんらかの原因で着火し,爆発に至ったものと推 定された, この開口部の異常腐食の腐食速度は年間約3mmであり,水硫化アンモニウムによる腐食が種々の要 因により加速されて生じたものと推定された.