多くの産業においては,技術的に未知の事象による事故は急激に減少してきているが,人間のさまざまな不適切行為による事故はなかなか減少しない。より一層の安全を確保するために,ヒューマンファクターへの関心が高まっている.しかしヒューマンファクターと一口に言ってもつかみどころがなく,なににどこから手をつけてよいのかわからない場合も多い.本稿ではヒューマンファクターとヒューマンエラーの関係について整理する.っぎに近年問題となっている違反にっいて,その発生メカニズムと 対策について考察する.
企業の経営環境の激変により,経営のスリム化が指向されており,より効果の高い対策を重点的に実施していこうとする傾向が顕著となりつつある。そのため安全対策費についても,その投入効果を把握するための評価の方法について関心が持たれている.そこで,事業場に対してアンケート調査を行い,その結果をもとに,事業場レベルの安全に係る費用対効果にっいて,推計を試みることとした.
ラグランジュ式またはオイラー式に基づいたいくつかの解析手法による爆発,衝撃現象の解析例をもとに,シミュレーションの現状について紹介した.今後,不安定性問題の理論的研究,計算機資源の発展,シミュレーションの前処理と後処理技術および長時間計算の安定性と信頼性の向上が期待されるとともに,流体力学のほか,材料力学,化学反応,熱力学,燃焼理論,量子化学・分子動力学などの幅広い分野に関する知識と情報が重要になると予想される.
1970年代に入ってわが国の松林では松がれ現象が各地で発生し始めた.この松がれがおもにマダラカミキリを媒体としたマツノガイセンチュウによるものと考えられ,このガイセンチュウを防除する目的で殺虫剤フェニトロチオンが大量に空中散布されている.そこで,散布されたフェニトロチオンの大気,水,土壌環境等での汚染例を整理し,さらに松くい虫防除における課題をまとめて解説した。
平成13年9月1日深夜,新宿区歌舞伎町で発生した火災は,地下2階,地上5階建て,延べ面積 516m2という小規模な建物からの出火でありながら,44名もの尊い命を失う大惨事となった. 東京消防庁ではこのような悲劇が二度と繰り返されることのないよう,火災発生後・階段廊下クリーンキャンペーン,緊急査察等,さまざまな業務を実施した.消防科学研究所では火災実験を実施することで,小規模耐火建築物の持っ潜在的危険1生,人為的危険性を具体的に明らかにすべく,火災発生から2か月後には独立行政法人消防研究所の協力を得て,小規模の実験用建物を使用して火災実験を実施した。これらの結果を基に研究計画を練り,庁内における検討会,学識経験者の専門的意見を参考に実験計画を作成し,取り壊し予定の都営住宅を改造して実大規模の火災実験を実施した. 本稿ではその概要について紹介する.
近年,危険物施設の漏えい事故が増加傾向にある.危険物の漏えいは深刻な土壌汚染や河川の水質汚染などにつながる可能性があり,また,昨今の環境保全問題に対する関心の高まりなどからも,漏えい事故の発生を防止することの重要性が高まっている. ここでは地下タンク貯蔵所の事故について取り上げ,消防庁の危険物事故等に関する統計資料をもとに,事故の状況,特徴(発生しやすい施設,事故原因,事故の発生箇所など)および事故防止のための 対策などにっいて述べる.
危険物等事故防止技術センターの業務の一環として行っている危険物等事故関連技術情報(危険物事故データベース)提供にっいてシステムの概要,提供の方法,データソース,データの種類および件数などについて述べた.1962年以来の危険物に係わる事故関連情報を保管しており,個々の事故データは約13000件に上る.危険物施設等の安全促進へ向けた,危険物事故関連データを用いた分析例を紹 介した.事故の原因,経過などを危険物施設ごとに解析し,それぞれ具体的に改善策などを呈示している.
乾燥機や集じん機などの汎用装置はさまざまな産業分野で使用されているが,これらの装置での爆発災害が繰り返し起きている.爆発災害を未然に防止するにはいくっかの方法があるが,技術的・経済的な問題もあって,完全に防止できないことがある.このような場合には,未然防止対策とともに万一装置内で爆発が起きたとしても,その被害を最小限に抑える対策を講じる必要がある.爆発圧力放散設備はそのひとつであるが,具体的方法や技術的指針が明確ではなかった. 産業安全研究所では,爆発圧力放散設備の実用化と普及のため「爆発圧力放散設備技術指針」を作成し公表した。本資料では,この技術指針の内容を中心に設計法の概要を紹介する.また,主要な参考文献のひとつであるNFPA68が2002年に改訂されているので,その内容についても触れる.