廃棄物処理施設は,他産業に比べて労働者災害発生率は高く,昨年の三重県でのRDF 事故など施設周辺の生活環境に支障を与える恐れのある事故の発生事例も多い. 本報告は,一般廃棄物焼却施設において平成12 年4 月~15 年9 月末までの3.5 ヶ年間に生じた爆発・火災などによる事故およびトラブルの発生状況についての調査結果を示す. 調査結果によると,粗大ごみ処理施設の破砕選別設備が最も事故・トラブルの発生率が高いことが判った.これらの結果から,今後の事故防止についてごみ分別の必要性,設計上の配慮,作業要領等の再検討の必要性等について考察したので紹介する.
廃棄物の処理における安全問題に関し,法律的な側面に焦点をあて概説する.つぎに,日本においては,公衆衛生の確保あるいは効率的な最終処分等の観点から,中間処理として焼却処理がおもに採用されてきたが,焼却に伴うダイオキシン類の発生問題が顕在化した.この問題について,その経緯および対策を紹介する. また,廃棄物処理への安全工学的アプローチの先導事例として,PCB 廃棄物処理への適用例を紹介する.
食品の製造や調理の過程で生ずる動植物性残さ,食品の流通段階や消費段階(外食・家庭)で生ずる売れ残り,調理くずや食べ残し等の食品廃棄物は,年間約2 200 万トンが発生していると推計されているが,食品廃棄物のリサイクル率は,肥料,飼料等への利用が主であり,約12.1%に過ぎない.そこですべての食品関連事業者を対象に「食品リサイクル法」が制定され,平成18 年度までに再生利用等の実施率を20%に向上させることが目標とされている.食品廃棄物の再生利用の主体はたい肥化であり,たい肥化と事業系生ゴミ処理機導入の安全について考察する.
廃棄物処理ではさまざまな火災,爆発,中毒,挟まれ巻き込まれなどの行動災害が発生している.廃棄物の主要工程について典型的な事故事例を解析し,工程ごとの潜在危険性について解説した. 廃棄物は有害物の混入による事故,混合事故,堆積・保管物の蓄熱火災などが増加している.さらに,不注意や本質安全化の遅れによる労災事故も,一般製造業に比べてきわめて多い. 循環型社会の建設に向けて,廃棄物処理施設と地域社会との共存は重要な課題である.潜在的な危険性を低減して安全,安心の職場環境を構築することが市民の理解を得る重要なポイントである.
廃棄物に関わるリスクには環境リスク(人の健康および生態系リスク)と処理施設内での災害とがある.健康リスクはおもに施設設置問題として議論され,設置申請手続きの中にリスクコミュニケーションへの配慮がなされている.また,生態系リスクとしては廃棄物埋立が関わり,具体例として藤前干潟保全とリスクコミュニケーションについて説明した.昨年,三重ごみ固形燃料発電所で発生したRDF サイロ爆発事故は廃棄物が直接原因となる未経験の事故であった.リスクコミュニケーションによる再発防止が期待されている.
廃棄物の不法投棄は依然として減少傾向になく,廃棄物の排出事業者たる企業はその責任の一端を担う主体として,自社から排出される廃棄物の適正処理を推進する必要がある.廃棄物の適正処理は廃棄物処理法に規定された事項であり,企業内にその重要性が周知徹底されていない場合,不法投棄等の形で廃棄物を巡るビジネスリスクが顕在化し,ブランドイメージの低下,さらには企業経営への影響が生じることが懸念される.廃棄物の処理は,多くの場合は他社に委託するため,自社が委託した廃棄物が適正に処理されていることを確認することが難しい.したがって,廃棄物を巡るビジネスリスクを低減,回避するためには,企業内の廃棄物マネジメント体制を構築するとともに,処理・リサイクル業者との連携や関係各社,地域社会といった各関係主体との協調,連携を図ることが重要である.
大量生産・大量消費・大量廃棄型の現代社会において,廃棄物処理は喫緊の問題であり,廃棄物の削減・リサイクルとともに地球レベルで取り組んでいく必要がある.このような状況下,実際に廃棄物を処理した者の責任に加え,廃棄物を排出した事業者の責任(いわゆる“排出事業者責任”)が今後一層厳しくなると予想される.この排出事業者責任を担保する保険商品が「排出事業者賠償責任保険」であり,われわれの置かれている現状と排出事業者責任を規定する法律等の背景事情とともに,保険の概要を紹介する.
最近の廃棄物,リサイクル物の自然発火に起因する火災,爆発の調査から得られた知見,また,その研究手法について紹介した.シュレッダーダスト,RDF,RPF,木材チップ,肉骨粉,マグネシウム合金等さまざまな物質から火災になっている.堆積物内部からの蓄熱発火に起因することが多いが,その初期微少反応を特定することは難しい場合が多い.発酵や,含まれている金属等と水との反応が起因 する.熱分析だけでは難しく,高感度熱量計や各種断熱試験方法が有益なデータを提供する.
三重県,福岡県,石川県に設置されたごみ固形燃料(RDF)の貯蔵槽で起こった発熱・発火,爆発事故の概要を紹介した. つぎに,RDF が発熱・発火する危険性を生物発酵,化学酸化,無機成分の化学反応,高温RDF の持ち込みの観点から考察した結果,含水率が15%以上の場合には生物発酵で温度が60~80℃になり,化学酸化反応が促進されて発火する危険性があり,含水率が低い場合には低温化学酸化で発生した反応熱が蓄熱されて温度が上がっていき,反応速度の増大による発熱が温度を上昇させるという繰返しによって発火する危険性が明らかにされた. これらの結果を参考に三重県で起こった事故の原因を推測した.
2003 年8 月14 日,19 日に発生した三重ごみ固形燃料発電所の火災・爆発事故により消防職員2 名が殉職し,作業員5 人が負傷するとともに完全鎮火までに長時間を要した. RDF は,酸化反応や微生物発酵による発熱の危険性,燃焼時の消火困難性を考慮すると指定可燃物と同等の危険性を有していることから指定可燃物として規制し,貯蔵・取扱いに係る情報を消防機関が把握する必要があります.本報は,法令等の改正等に至る検討経緯を報告するものです.
廃棄物の中間処理として従来よりストーカ炉で代表されるごみ焼却施設に代わるように,近年ガス化溶融施設の建設実績が増え,また最終処分場の枯渇や有効資源の再利用といった観点で灰溶融施設の採用が多くなってきている.またごみの固形燃料化(RDF)のニーズが高まり,全国で50 施設を超えるRDF 製造施設が建設されている.しかし,このような新技術の採用に対して,従来の技術では経験していなかった,もしくは想定できなかった災害や事故が多発するようになってきており,今後注意を喚起すべき技術や安全対策についての最新の情報などをまとめている.
資源化破砕ごみ処理施設の運営においては,「絶対に火災を起こさない」という防災のコンセプトが基本となる.可能な限りリスクを排除する危機管理の視点から,危険物を施設に入れない住民へのPR 活動を積極的に実施するとともに,施設での防災対策を運転管理の最重要項目となっている. 本報告では,破砕ごみの湿潤化による着火抑制や炎検知の基礎的な調査研究により,新たなプラント防災システムを構築し,防災能力の向上に努めてきた,資源化破砕ごみ処理施設における防災対策の実態を紹介する.
医療関係機関などから排出される医療廃棄物,特に感染症を生ずる可能性のある感染性廃棄物によってB 型肝炎,C 型肝炎,エイズなどに罹患することが報告されており,医療廃棄物処理従事者などは感染の危険性に曝されている.したがって,感染性廃棄物は廃棄物処理法で特別管理廃棄物に指定されている.その中間処理技術として焼却,溶融,高圧蒸気(オートクレーブ)滅菌などが従来から使用されているほか,新処理技術としてガス化溶融処理,マイクロ(高周)波処理など,ならびにプリオン蛋白汚染廃棄物などに適用されている加圧式アルカリ加水分解処理の現状と問題点について述べる.そして,感染性廃棄物の範囲,取扱い,処理計画,マニフェストシステム,排出事業者の責任,抗悪性腫瘍剤の処理,在宅医療廃棄物の処理責任などについても触れる.
化学系産業廃棄物は扱い方を一つ間違えただけで大災害の起こる可能性は極めて高くなる.そのため,内容物の情報伝達や適切な容器の選択など排出する側と処理する側の連携や廃棄物への意識改革が必要となる. 廃棄するものに時間や経費をかけたくないのが人情だが,廃棄物災害が引き起こす環境負荷やリスク,また後始末を考えれば現在の常識を見直し,できるだけリスクを軽減できるよう排出者と処理業者が相互に協力する事が必要である.
家庭系有害廃棄物のリスク解析に向けて,まず現在の国内外の対応状況を整理した.また,初期調査として,家庭系有害廃棄物の所有状況やその処分方法,回収・リサイクルに対する意識を尋ねた市民アンケートの結果を報告した.それによると,所有状況については,使用済み電池や蛍光管,スプレー缶等の保有率が高いことがわかった.処分方法については,自治体の指定とは異なるルートへ排出されている製品が相当量ある可能性が示唆された.製品の危険性や回収・リサイクルに関する情報に対しては,認知度および関心度ともに概して高いことがわかった.また,回収・リサイクルシステムへの参加については,製品の危険性等に関する情報を提示することにより,大幅に参加率(支払い意志額)が上がることがわかり,関係者の情報共有が重要であることが示唆された.