リーダーシップが組織の安全に及ぼす影響について,理論的・実証的研究の成果を中心に検討した.特に,1)リーダーシップを特性よりも行動として把握すること,2)リーダーシップがフォロワーたちの仕事に対する意欲や満足度,さらには安全意識にも影響を及ぼすこと,3)リーダーシップを改善・向上させるトレーニングによって,安全性が向上することに焦点を当て,分析と考察を行った.
軽金属研磨作業場における爆発災害原因の究明および対策技術の確立を目的として,ベルトサンダーを中心に帯電特性を調べるとともに,マグアル合金の研磨粉じんの着火特性および着火機構を実験的に調査した.在来型研磨器は研磨作業中に大きな静電荷を発生し,帯電防止していない人体を高電位に帯電させた.このため,容易に静電スパークを生じるとともに強い電撃を作業者に与えた.帯電防止用部品を試作し,その効果を確認した.研磨粉じんは,放電着火試験装置による測定では,浮遊状態および静置状態のいずれにおいても最小着火エネルギーは10 mJ 程度以下であった.しかし,実工程においては,研磨器が非接地状態となり,1 mJ 以下のパルス状放電が連続的に発生した場合のみ着火した.
家電製品リサイクル過程で粉じん爆発の発生が懸念されるポリウレタン粉じんを中心に,爆発しやすさおよび爆発の強さについて述べる.爆発しやすさの指標として,爆発下限濃度,可燃性粉じんと可燃性ガス混合気の爆発性,浮遊粉じん雲の着火エネルギー等について概要を紹介する.また,爆発災害防止の観点から,相対湿度および浮遊粉じん雲内の酸素濃度が爆発に及ぼす効果について述べる.爆発の強さとして最大爆発圧力および爆発指数(Kmax)を紹介する.
廃棄物処理施設においては,過去頻繁に火災が発生しており,施設の構造または設備の特殊性などから延焼拡大し,周囲に多大の影響を及ぼす事例も少なくない.このため,東京消防庁では,過去の火災事例と施設の潜在危険を踏まえて,火災予防安全対策指導指針を策定するなどして,施設の実態に即した関係事業所指導を推進している. 本稿では,同一不燃ごみ処理施設における2 件の火災事例を中心に,当該安全対策指導の内容と,その効果について検証した結果を紹介する.
化学プロセスの安全性の検討にあたっては,まず化学プロセスのどこに,どのような潜在危険が存在するかを見出すことから始まる.潜在危険の特性とその原因が見出せたならば,発生原因の除去とともに潜在危険の顕在化を防止する対策を講じることが必要である.HAZOP は潜在危険の洗い出しと安全対策の確認を行うために英国で開発されたプロセス安全性評価手法であり,欧米はもとより近年わが国においてもその活用が広まってきている.本稿では,HAZOP の基本手順を示すとともに効率的な運用にあたっての留意点などを紹介する.
新しい安全工学のための講習会のあり方として,受講者が実体験できる講座をつくりだした.実験講座は,試験装置内での爆発実験,過去の火災・爆発災害を参考にしたモデル実験,座学による試験法とプロセス安全性評価の基礎知識の習得との3 講座からなっている.本資料では,各講座プログラムの概要と関連する化合物のDSC やARC データ,そして過去に実施した実験記録も掲載した.
最近,米国を中心に,反応性化学物質に関係する事故を防止するために,化学反応危険性を特定し,安全管理する必要性が指摘されている.本稿では,4 回に分けて,反応性化学物質の安全管理と危険性評価手法について概要を紹介する. 本号では,反応性化学物質が,安全・健康・環境に及ぼすハザードを評価する手法の概要を紹介する.
平成14 年11 月,神奈川県横浜市において屋外タンク貯蔵所の受入れ作業時に,当該タンクの爆発火災事故が発生した.所轄の消防局では,この火災に対して,精力的に火災原因調査を行い,火災の想定シナリオを早期に策定した.消防研究所においては,所轄の消防局の依頼を受けて,本件の屋外タンク貯蔵所の爆発火災事故について調査検討を行った. 調査検討の結果,当該爆発火災事故については,シール材の劣化や受入れ時の気泡の流入など種々の条件が重なり発生したものと推定される.