平成15 年十勝沖地震に伴い発生した浮き屋根式屋外タンクの2 件の火災は,大型屋外タンクの今後の耐震対策に関し大きな課題を提起した. 事故後に行われた調査検討により,やや長周期地震動による浮き屋根損傷のメカニズムが明らかにされるとともに必要な耐震対策が整理され,消防法令の改正に基づいた浮き屋根の耐震機能強化が進められることとなった.本稿では,これら検討成果の概要について解説する.
化学物質の安全性に関する社会的関心が高まる中,(社)日本化学工業協会(日化協)では多くの関係者が利用できる標準的・体系的リスク評価システム開発事業をNEDO から受託し,その成果として新リスク評価システム「Risk Manager」を完成させて2005 年1 月にリリースした.本システムは事業所周辺住民や作業員が受ける健康リスクや,事故時におけるヒトへの被害リスク等を定量的に評価することができる.システムは非常に便利だが,あくまでも「道具」であるので,リスク評価者はノウハウ等を十分蓄積しながらこの道具を使いこなすことが肝要である.
プレス機械作業等における安全確保には,作業のリスクについての正しい情報が作業者に伝えられ,また作業者,管理者および工作機械等の設計者が共通の認識を有していることが必要である.そこで,本研究では,これらの作業者,管理者および設計者にアンケート調査を行い,職場でのリスクの感じ方やリスク情報の伝達について調べた.その結果,年齢が高まるほど職場のリスクを小さくとらえる割合が増加し,管理者は作業者よりもリスクを小さく見積もる傾向があった.また,中小規模の会社では,職場の安全性が不十分と考えていることが明らかになった.さらに,リスク情報については必ずしも十分ではなく,工作機械等のメーカーからの情報は活用されている割合が低いことがわかった.本研究では,これらを踏まえ安全性向上のための提言をした.
長岡技術科学大学では2004 年より,労働安全衛生法に基づく安全管理を開始した.本稿では大学,特に機械工学系における安全管理の状況を,学内安全パトロールの方法と,パトロール結果で必要とする安全対策の例として実験室内作業機械および実験設備設計,工作センター内加工機械の例で示す.
かつて国立研究機関や国立大学であった独立行政法人は,平成13 年4 月以降,労働安全衛生法に基づいて安全衛生管理を行っている.しかし,同法は最低基準を定めるに過ぎないもので,管理の一層の充実を図るには安全衛生基本計画の策定や本質的安全設計方策及び安全防護の採用をはじめとする自主的管理活動が必要である.また,今後望まれる独立行政法人の安全衛生管理は,労働安全衛生だけでなく製品安全,環境,防災,セキュリティなども含めた総合科学としての体系を整える必要がある.この体系で特に重要なのが当該技術体系の原理・原則であり,この確立には各分野の専門家が参画した徹底した討論が必要である.以上のような構想で安全衛生管理が再構築されたとき,この体系を尊重し習得しようというインセンティブが研究者に働き,形骸化を防ぐことができるであろう.
地震時においては,防火水槽は配水管等の水道施設に被害が発生しても使用でき,河川や池などの自然水利とともに重要な消防水利である.しかし,防火水槽の地震被害事例は少なからず発生している.本稿では,防火水槽が地震により減水に至る被害は,耐震性が不十分な,いわゆる“戦時型”の防火水槽や昭和20 年代に設置されたものに多く発生していること,昭和30 年代以降に設置されたものでも,地盤のすべりにより底設ピットの損傷による場合があることを述べた.また,危険物施設の消火設備用水利施設・設備の地震被害例を紹介した.
前回の最後に蓄熱について簡単な考察を試みた.特に装置を大型にする場合には,研究設備などの小型設備とはその挙動がまったく変わることを示した.熱に関する考察の続きとして伝導伝熱の不具合による事故を取り上げることにする.また,後半部分では,最近の大型事故から強く感じ取れる“芽は小さいうちに摘みとる”という管理の原則,ヒヤリハット運動他の安全活動の原則について考える.
三重,石川,大牟田のRDF 貯蔵施設で起こった発熱・発火事故に焦点をあて,RDF の性状,事故の経緯を簡潔に紹介した後,RDF 中の有機物の発酵による発熱,無機物の化学反応による発熱,高温RDF の搬入による発熱,低温化学酸化による発熱,過乾燥有機物における水分吸着熱による発熱などが発熱・発火の原因となる可能性をいくつかの文献を参考にしながら考察した.もっとも可能性の高いのは,低温化学酸化による発熱で,その開始反応が過酸化物の生成と分解である可能性についても考察した.さらに三重県で起こった爆発事故は熱分解で生成した一酸化炭素とメタンガスに引火して爆発したものと推察した.