創立50 周年記念大会は式典,特別講演および祝賀会の3 部からなり2007 年12 月6 日(木)の午後,パシフィコ横浜会議センターにて行われ,記念講演はこの創立50 周年記念大会のメインイベントとして 15 時15 分から小ホールにて行われました. 講演者はデュポン(株)の代表取締役会長ドナルド・ジョンソン氏で,1974 年ノースカロライナ州立大学で機械工学博士号を取得し,米国デュポン社に入社,ポリエステル繊維の生産・技術を幅広く担当されました.1992 年デュポン・ヨーロッパの本部のスイス・ジュネーブに異動,1994 年米国に異動しアラミド繊維のグローバル・ビジネス・ディレクターに始まり要職を歴任,2001 年には生産部門担当上席副社長,2006 年4 月日本法人のデュポン(株)代表取締役会長に就任され,現在に至っておられます. 講演は講演要旨が配布され,司会者による経歴の紹介にひき続いて同時通訳で行われました.この講演の参加者は約160 名で,講演終了後,活発な質疑応答が行われました. また,祝賀会はこの講演後,会議センターの6 階カフェテリアで研究発表会の懇親会も兼ねて開催され,特別講演講師のドナルド・ジョンソン氏も参加され約150 名の参加者で盛大に行われました. この講演内容をご紹介いたします.
安全を最優先する組織の行動様式の土壌となるものを安全文化と呼ぶ.近年発生した事故や不祥事については,安全文化のレベルまで掘り下げて原因分析が行われるようになってきたが,これは,社会の高度技術化や相互依存化によるリスク構造の複雑化と,リスク低減に対する社会的要求の高度化によって,機器設備やマネジメントシステムの信頼性向上だけではなく組織文化や組織風土等の人間・組織のより本質的な部分にまで管理対象の範囲が拡大してきた結果と理解できる.安全文化とは組織自体のさまざまな経験と組織成員の価値観や行動パターンの変化に伴って形成されてゆくものである.これらは組織成員の心理面に大きく依存しているものであるため,安全文化の醸成は組織および組織成員が主体的に取り組んでゆくことによって初めて効果が現れる.こうした取組みは組織的安全マネジメントの一部としてとらえることができるが,仮にこれを規制による監査や検査で行おうとしても逆に問題を潜行化させる可能性がある.本稿では,組織の安全文化という概念を関連項目との関係性の中で整理し,安全文化醸成のための手法,およびその要点について紹介する.
次世代エネルギーとしての期待が高い水素は最小着火エネルギーが非常に小さく,着火範囲も広いことから静電気着火危険性が非常に高い.そこで水素がダストとともに配管上の亀裂から噴出した場合を想定して,噴出系統での電荷量を計測し,帯電機構を推定するための実験を行った.ダストとして,配管内の鉄さびを模擬して酸化鉄(Ⅲ)を用い,噴出系統を直管部分とノズルに電気的に分離して発生電流を計測した.その結果,ノズルで特に大きな帯電が発生することを明らかにした.またノズルでの帯電は,ノズル内に残存する酸化鉄の質量に大きく依存した.これはノズル内壁に衝突できる酸化鉄粒子の個数,すなわちノズル内部の酸化鉄粒子密度によって帯電が大きく支配されている可能性を示唆している.
温度可変の溶剤蒸気の着火エネルギー測定装置を用いて,15 種類の有機溶剤蒸気の着火エネルギーおよび爆発範囲ならびに水蒸気による不活性化の効果について測定を行った.いずれの溶剤蒸気も温度上昇とともに最小着火エネルギー(MIE)が指数関数的に減少し,かつ,爆発限界が拡大した.なかでもアセトンのMIE は温度依存性がきわめて高く,100 ℃におけるMIE は25 ℃のときの1/3 以下となった.静電スパークによる上・下限界濃度と交流スパークによるそれらの限界濃度の間には,線形回帰分析の結果,比例関係が近似的に成立することを示した.アセトンを対象に水蒸気による不活性化を試みたところ,温度100 ℃において水蒸気濃度30 %以上とすると実用上十分な程度に安全化が可能であることが確認された.
プロセス産業における災害や保安コンプライアンス問題への対応を図るため,経済産業省原子力安全・保安院は平成18 年11 月に「安全文化向上を目指す産業保安行政のあり方について(中間とりまとめ)」を発表した.これを受けて安全工学会では,原子力安全・保安院に協力して,企業の保安力の評価と強化に関する提案,安全文化項目などの整理,企業への自己評価の試行を含むヒアリングなどを実施している.一方,化学安全分野においても国際連携の流れが進むにつれ,事故情報を含む情報共有化の必要性が認識されている. OECD では国連環境計画(UNEP)や欧州委員会EC と連携して,化学物質を取り扱う事業所の安全に関するワーキンググループ(Working Group on Chemical Accidents)を運営している.保安力に関する国際動向の把握を目的に標記ワーキンググループに参加し,同時にEU の重大化学事故情報を収集管理する,EC の研究機関であるMajor Accident Hazards Bureau を訪問した.化学災害に関する各国の動向,事故情報の国際的な共有に関する状況を報告する.
発火性物質とは自然発火性物質および禁水性物質を合わせたものの総称である.その定義,特徴,取扱い上の注意,法規制,評価試験方法,事故事例について紹介する.消防法では,危険物第3 類に指定されており,国連勧告ではクラス4 の一部がこれに該当する.これらの物質は特殊な用途を持ち,事故例は多くはないが,漏洩,水との反応,堆積貯蔵などによって,着火源を必要とせず容易に発火する性質を持つため,その危険性に応じて注意して取り扱う必要がある.