安全工学
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47 巻, 6 号
安全工学_2008_6
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
巻頭言
安全教育への取組み特集
  • 刈間 理介
    2008 年 47 巻 6 号 p. 334-338
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    わが国の大学の教育・研究における安全管理と安全教育の方向性を考えるための知見を得る目的から米国の大学の教育・研究における安全管理と安全教育の現状について12 の大学を対象に,実地調査を行った.米国の大学では,わが国の労働安全衛生法とは異なり,労働安全衛生に関する法規は化学物質管理に関する規程であるOSHA Laboratory Standards など,企業の工場や建設現場などとは別に大学などの高等教育機関に特化した規程が定められ,そのもとに安全衛生管理や安全教育が行われていた.そして,米国の大学では,各大学に教育・研究における安全衛生管理と環境管理を任務とするEnvironmental Health & Safety Office(EHS Office)が設けられ,十分な人的資源が配備されており,そのもとでOn─line 教育を中心に安全教育が整備されていた.これらの米国の大学における安全教育に関する知見は,わが国の大学などの高等教育機関における安全管理および安全教育を充実させていくうえで参考にすべきものであると考える.

  • 日野出 洋文, 岡本 昌樹
    2008 年 47 巻 6 号 p. 339-346
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    “安全”とは「危害または損傷・損害を受ける恐れのないこと,危険がなく安心なさま.安らかで危険のないこと」と広辞苑に記載されている.現在,安心・安全に関してさまざまな報道がなされているが,教育・研究の現場である大学の“安全”はどうなっているのであろうか. 大学での安全衛生管理は,民間企業に比較して劣っているとの批判を受けているが,国立大学が法人化したことを契機に,安全衛生管理の改革および環境安全教育に取り組んできた.本稿では,国立大学法人東京工業大学(以下,東工大とする)大学院理工学研究科の安全衛生管理の現状と,2001 年5 月に設置された工学系安全管理室の活動等を紹介するとともに,大学における研究の担い手であり,研究の初心者である学生に対する,環境安全教育を紹介する.

  • 橘 淳治
    2008 年 47 巻 6 号 p. 347-354
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    小・中・高等学校の教員を対象に理科実験の安全性や廃棄物処理についてアンケート調査を行った結果,学校においては実験廃棄物処理や実験時の安全対策が課題であることが明らかになった.また,事故やヒヤリ体験も多くの教員が経験している結果であった. 事故防止と環境負荷の軽減の観点から,学校で行われる実験について,教育効果を保ちつつ実験スケールの縮小,安全な試薬への変更,実験方法そのものの検討などを行った. 教員研修においては,薬品管理などの従来の安全教育に加え,経験の浅い教員に対しては実験器具の取扱いに関する実習と理科研修受講時の安全防護具の着用を義務づけるほか,安全な理科実験法と実験廃棄物処理実習などを取り入れた.

  • 池上 正
    2008 年 47 巻 6 号 p. 355-361
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    経済産業省は平成17 年度に「産学連携製造中核人材育成事業」を立ち上げ,産業横断的・日本縦断的に65 プロジェクトが採択されている.化学関連では水島と千葉の2 プロジェクトが製造中核人材育成の課題に取り組んでいるが,本稿では水島での活動について報告する.水島では中核オペレータ向けの安全・安定運転関連2 コース12 講座,中堅マネージャー対象のリスク管理・競争力強化関連2 コース7 講座の教材を開発し,実証授業を経て昨年度より事業を開始している. 講義への参加は中国地域を中心に関東,近畿,四国,九州地区から約57 社・事業所,受講者800 人にのぼっている.本講座の活用・取組みについては企業・事業所それぞれの考え方が反映されているが,Know─Why に基づいたKnow─How・考える人材の育成という基本方針には強い共感が寄せられている.

  • 中野 義之
    2008 年 47 巻 6 号 p. 362-368
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    石油産業活性化センター(PEC)では,石油産業における事故防止に向けた対策を図るべく,2005 年度から「石油産業安全基盤整備事業」を実施している.当事業では「保安技能の伝承のための教育支援」,「設備管理および工事管理レベルの向上」,「ヒヤリハット・事故事例の知識化と体系化」を目的に種々のデータベースを作成し,石油業界でこれらを共有化し,有効に活用するためのWeb サイト「安全支援システム(PEC─SAFER)」を公開している.本稿ではこのうち「保安技能の伝承のための教育支援」のデータベースを作成するために実施した石油産業における保安教育と技能伝承に関する調査内容について紹介する.

  • 三井 達郎・岡村 和子
    2008 年 47 巻 6 号 p. 369-377
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    平成21 年の6 月から75 歳以上の高齢者には運転免許更新前に認知機能検査を受けることが義務づけら れる.この制度の開始により個々の高齢者の認知特性に応じた運転者教育が実施されることになる.このような教育を効果的に推進するためには,認知機能が低下した高齢者が自動車を運転する際に具体的にどのような問題点があるかを明らかにしておく必要がある.本稿では,最初に,わが国の高齢者に対する運転者教育の概要を運転免許更新時の高齢者講習を中心に紹介する.認知機能検査はこの高齢者講習の一環として行われる予定である.つぎに,科学警察研究所が実施した高齢者の認知機能が自動車の運転に及ぼす影響に関する研究について概説する.この研究は,新しく作成した安全運転診断法を用いて高齢者の認知機能と運転特性の関連性を検討することをねらいとしている.

  • 池上 三喜子
    2008 年 47 巻 6 号 p. 378-382
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)以前は,全国的に,災害の文献や口伝,地域活動などを主体とする伝承でしたが,阪神・淡路大震災以降,民間での伝承教育や資料の収集・展示,e─ラーニングなどが充実し,防災学習に取り組みやすい環境が整ってきました. さらに,公的な動きとして,学校教育においても変化が現れ,国や県などから,マニュアル等の支援教材が示されるようになりました. 地域防災は「自助」,「共助」のもとにあり,こどもから大人に至るまでの市民一人ひとりが協力し合うことが大切であることから,「こどものときからの防災教育」の必要性について,まとめました.

  • 中村 隆宏
    2008 年 47 巻 6 号 p. 383-390
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    「危険体験」をはじめ「体験型教育」,「体感教育」といった安全教育手法が注目されている.その内容や手法は多岐にわたり,今後ともさまざまに発展する可能性を示している.一方で,今後の普及およびさらなる発展のためには,どのようなコンセプトに基づく教育であるべきかといった議論が不可避であり,危険体験という教育手法についてその成り立ちや経緯,実施上の問題点や課題についても検討・整理する必要がある. 本研究においては,さまざまな展開を示しつつある危険体験教育について,安全教育としての実質的な効果を高め有効な教育手法としての発展の方向性を探る観点から,危険体験教育を実施する教習機関などへの聞き取り調査を実施した.本稿では,調査結果の報告を含め,教育手法開発の背景,教育実施上の課題など,危険体験教育の問題点と今後の展開について検討する.

  • 澤  昭夫・浅野 孝志・早坂 和裕
    2008 年 47 巻 6 号 p. 391-395
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    弊社は安全・防災・環境保全を最優先の経営課題としており,安全教育は専門教育だけではなく,階層別教育等あらゆる教育・研修にもカリキュラムの一つとして防災・環境教育とともに組み込んでいる(以下,安全教育とする).さらにこれらを補完するため中央労働災害防止協会の研修も活用している.また,安全教育は東レ単体のみならず,国内関係会社および海外関係会社を含めた東レグループとして実施している.そのなかでも火災・爆発デモンストレーション実験教育および労働災害疑似体験教育は,ユニークで効果を上げており,本稿ではこれらを中心に東レグループの安全教育を紹介する.

  • 福成 雄三
    2008 年 47 巻 6 号 p. 396-401
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    住友金属工業(株)では1998 年に安全体感教育設備を常設して体感型の安全教育を開始した.危険な状態を見せたり聞かせたりすることよりも,体験させることに重点を置き,身に染み込ませた感覚を実際の作業における安全行動に結びつけようとする教育である.安全体感教育は,社外からの受講者を受け入れたこともあり,全国に広まりを見せているが,「危険を安全に体感させる」ことなどの課題もある.この他,住友金属工業(株)では,座学での安全衛生教育に経験型の教育を取り入れている.安全な行動が当たり前のこととしてできる人材の育成を目指したこれらの教育について紹介する.

  • 臼井 修
    2008 年 47 巻 6 号 p. 402-407
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    最近の事故の発生状況を見てみると危険物,高圧ガス関係ともに増加傾向にあり,当社の状況も横ばいまたは増加の傾向にあり減少の傾向にありません.事故の原因を分析してみると運転管理,設計管理,工事管理の問題と多岐に渡っており,総合的な技術力(保安力)の低下が懸念されております. この要因としては,熟練者の大量退職の2007 年問題,長期安定運転による失敗体験の喪失などによる危険性に対する感性の低下などが考えられ,三井化学では特に表題にあります,体験教育,安全教育,技術伝承に力を入れて取り組んでいるところであります. 以下,2006 年10 月に千葉県茂原市に工場の運転員のために新設した技術研修センターでの体験教育を中心にご紹介するとともに,全社の安全教育,技術伝承に関する諸施策についても紹介させて頂きます.

  • 田中 則章・太田  潔・丸野  忍
    2008 年 47 巻 6 号 p. 408-415
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    住友化学(株)は総合化学会社であり,種々の新しい製品を開発している.また,既存プラントにおいても,たえずプロセスの改善,合理化が行われており,プロセスの安全確保が重要な課題の一つである.ここでは, 当社におけるプロセスの安全管理の考え方と安全確保上重要な安全教育,そのなかでも最近教育を強化してきている体験型安全教育を中心に紹介する.

  • 宮下 直人
    2008 年 47 巻 6 号 p. 416-420
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    当社は,会社発足以来「安全」を経営の最重要課題として位置付け,お客さまに安心してご利用いただける鉄道システムづくりに社員・グループ会社社員が一体となって取り組んでいる. 1989 年度から安全に関する中期計画を策定し,「守る安全」から「チャレンジする安全」への転換を図ってきた.また,2008 年3 月に発表した「グループ経営ビジョン2020 ─挑む─」において,当社は「究極の安全」を継続して目指すこととし,今後も「ゆるがぬ決意」として表明したところである.そのなかで,「お客さまの死傷事故ゼロ・社員の死亡事故ゼロ」を目指すため,安全に対する教育・訓練の充実を図っている. 本稿では,列車の安全運行を担う運転士の養成における安全教育,体験教育を紹介する.

  • 坂井 秀夫
    2008 年 47 巻 6 号 p. 421-427
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    東京電力(株)技術開発研究所ヒューマンファクターグループでは,人間の特性に基づいた技術を開発し,広く社内外に展開することで,リスク低減,ヒューマンパフォーマンス向上を目指している.本報では,安全にかかわる教育,技術継承という観点から自主開発し,外販に至った二つの支援ツール(SAFER およびK─SHOW)を紹介する.事例分析手法SAFER は,トラブル事例の原因分析から対策立案,効果確認までのPDCA を体系的に手順化したもので,第一線職場が自ら活用し,効果的な再発防止を狙った手法である.また,技術継承支援ツールK─SHOW は,動画を中心として,現場の操作や作業を効果的に表現・伝達し,技術・技能継承や教育訓練を支援できるツールである.

  • 田中 龍郎
    2008 年 47 巻 6 号 p. 428-435
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    航空会社にとって「安全」はまさに経営の基盤である.安全性を維持向上させていくためには,運航安全のリスクマネジメントや内部安全監査など仕組みを構築することと同時に,社員一人ひとりが決して事故は起こさないという強い安全への意識を持って業務に当たることが必要である. ANA グループ安全教育センターは社員の教育・啓発を目的として,過去に起きた事故を風化させないという意思とともにヒューマンファクターに関する基礎的教育の要素を付加した施設である.このセンターではパイロットや整備士など高度な専門性を必要とする職種に対するプロフェッショナルな教育とは別に,ANA グループ全社員を対象とした教育・啓発を実施している.本稿ではセンターのコンセプトと教育内容を紹介するとともに,企業の安全文化・風土の醸成について考える.

  • 中田 邦臣
    2008 年 47 巻 6 号 p. 436-440
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    失敗学の研究分野である失敗事例の収集のうち,失敗の原因の保有を推進するとともに保有例を収集し,その保有事例を発信する活動,またそれら保有物から失敗を風化させないで“失敗事例から学ぶ”活動を紹介する.前者の保有事例の情報はそれら保有物を見学する際に参考にするよう独自の評価を付して「失敗体験施設名鑑」として発信している.また後者の活動の一つとして,失敗の擬似体験の場の提供の実施事例,2008 年4 月に東京大学工学部と共催した「失敗体験研修(第一部体験研修「失敗体験」,第二部講義「クライシス・コミュニケーション」)の実施状況を紹介する.さらなる発展を目指したそれぞれの活動に関する今後について言及する.

  • 菱山 正樹
    2008 年 47 巻 6 号 p. 441-444
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    いつ,どこで起こるかわからないのが災害です.いざという時,あわてないように,しっかりと防火防災についての知識と技術を身につけておくことが必要です.また,災害に強い街づくりのためには,住民一人ひとりの防火防災意識の高揚と防災行動力の向上が不可欠です. 防災館は,災害時における行動を楽しみながら,効果的に学んでいただくことを目的に設置された防災体験学習施設です.

  • ─あんぜんミュージアムのご紹介
    田川 順一
    2008 年 47 巻 6 号 p. 445-447
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    あんぜんミュージアムは,産業安全に関するわが国唯一の展示・教育施設で,各種安全対策機器,保護具などが展示されており,各コーナーでは実物や模型を使って安全衛生について学習することができます.また,シアターでは,数多くの安全衛生ビデオを視聴することができます.

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