安全工学
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48 巻, 3 号
安全工学_2009_3
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
会告
安全への提言
総説
  • ─労働安全と機械安全・電気安全・制御安全・機能安全
    加部 隆史
    2009 年 48 巻 3 号 p. 140-147
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    生産現場での人への危害は機械の危険源と人が同居し発生する.従来の労働安全は人に依存し,作業者の安全を確保するために,主として作業者への教育を重視し,事故が起きると作業者の不注意とされることが多かった.機械の確定的危険源にアプローチし,危険源を除去あるいはリスク低減することで安全を達成しようとするのが,機械安全の基本であり,この場合,事故が起きても人を責めないことが原則である.この機械安全におけるリスクベースド・アプローチの方法論も近年拡大・進歩しているために,グローバルな観点からこれらの概念ならびにそれに関連する安全要素技術の現状を整理し,時代の要求に則した対応が,各ステークホルダに求められてくる.隔離の原則・停止の原則に加え,これから人と機械の協働を実現するためには,新たに共存の原則というものが必要とされてきているが,基本は予防概念としての安全設計を適切に低減されたリスクまで事前に行い,機械設計者がやるべきことを成した後の残留リスクによる事故は社会が許容し,被災者は保険により救済・補償されるということである.科学技術の進歩に応じた社会制度の整備も必要とされる.

論文
  • 主原  愛・大島 義人
    2009 年 48 巻 3 号 p. 148-154
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    大学実験室に配置される設備や物品について,作業者の視覚的情報と,危険箇所としての認識との関連性を調べるべく,アイカメラによる視線解析手法を用いて作業者の危険認識に関する潜在意識の可視化を試みた.11 名の被験者が実験室内を歩行する際に0.2 秒以上注視した全52 箇所について,危険認識に関するヒヤリング結果とあわせて解析したところ,多くの人が危険と認識してもその注視時間には長短があること,危険認識と関係なく,設置場所によって注視されやすい箇所があり,その周辺のモノへの注視時間の減少傾向があることなどが明らかになった.また,ヒヤリングで危険箇所に関して意識付けされた後に,総注視箇所数や注視時間が増加した.これらの知見は,実験室内のハザードマップ作成や装置配置などの実験室計画への活用が期待できる.

技術ノート
  • ─暗騒音との差の影響の定量的評価
    高津 熟, 福田 隆文
    2009 年 48 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    騒音に対する評価は暗騒音レベルにより異なることが経験的に知られているが,定量的な検討が少なく,現在の航空機騒音の評価でも考慮されていない.そこで,本報では,暗騒音と航空機騒音のレベルの差の違いによる航空機騒音の感覚の違いについて検討し,修正式を提案する.成田空港北部での騒音測定データを用いて航空機および暗騒音の実態を示し,同地区で行ったアンケート調査と合わせ,静寂地では航空機騒音が大きく感じられる傾向を確認した.ついで航空機の録音データを用いた実験を行い,騒音は暗騒音との差10 dB につき約1.5 dB 大きく感じられることがわかった.この関係を用いてWECPNL を再計算すると静寂な地点では3 大きくなった.

資料
  • 西  晴樹・山田  實・座間 信作・廣川 幹浩
    2009 年 48 巻 3 号 p. 161-168
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    過去の大地震,例えば2003 年十勝沖地震などにおいて,長周期地震動によるスロッシングにより大量の油が石油タンクから溢れた.この場合,火災の危険性はきわめて大きくなるが,石油タンクからの溢流量を正確に推定する方法はまだない.そこで,筆者らは模型タンクを用いた振動台実験で,溢流量推定の可能性を探った. 速度応答スペクトル法に基づき,筆者らはタンク側板上の溢流体積と液面減少高さで表される溢流量との関係を得た.この関係は浮き屋根の有無に影響されるが,ともに溢流体積の1 次式で表されることがわかった. 当該関係式を過去の地震における実際の溢流事例に適用したところ,2003 年十勝沖地震の事例に対してはかなり正確な推定を与えることが確認できた.さらに,簡易的に溢流量を推定する地震時の石油タンク溢流量推定システムを開発した.

  • 清水 芳忠・内田 剛史, 大下 和徹, 三宅 淳巳, 若倉 正英, 武田 信生
    2009 年 48 巻 3 号 p. 169-176
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    廃棄物処理業は,一般産業と比較して労働災害事故の発生率が高く,廃棄物処理工程全体を通じての安全化が強く望まれており,危険性の的確な把握が重要な課題である.事故を低減するためには,事故の原因究明や,事故対策による安全化とともに,事故から学んだ知見や教訓を類似事故の防止に役立てることが重要となる.そこで本調査では,廃棄物処理施設の事故調査結果から,物質と装置の両面から事例解析を行い,事故要因や起因事象などを明らかにした.火災事故のおもな事故原因は,貯留設備内での引火性物質混入や,ごみ保管中の蓄熱発火,および可燃性ガス発生であった.爆発事故のほとんどが,破砕機で発生しており,ガスボンベの混入がおもな事故原因であった.中毒事故は,持ち込まれた有害物によるものだけでなく,化学薬剤処理中の事故も多く発生していたことがわかった.

投稿原稿
  • 後藤 隆雄, 山口 和宏・中口  譲
    2009 年 48 巻 3 号 p. 177-184
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    樟脳等の高分子化合物の中間製品を合成製造していた化学工場跡地の土壌汚染とその工事によって,揮発性有機化合物(VOC)大気汚染が発生し,阪神大震災被災地神戸での被災者住宅住民に大きな健康影響を与えた.当初,簡易VOC 計が入手できなかったため,新コスモス電機(株)の換気モニター(シックハウスのための)で室外1 時間値を連続測定してもらった.土壌改良工事の後半部分は調査された.この計器は簡易のVOC 計(バイオ社)とベンゼン等の3 VOC で検定を行い,両濃度の直線性は確認し得た.土壌汚染によるVOC 大気汚染を大気圧や降雨との関係で若干の考察を行った.

災害事例分析
  • 松本 洋
    2009 年 48 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    国内では,年平均6 件ほどの粉じん爆発事故が起きていると推定されている.危険物施設でも年間に3 ~4 件の粉じん爆発事故が発生していることから,粉じん爆発のほぼ半数が危険物施設で発生していると考えられる.粉じん爆発では,高温の燃焼生成物が燃えながら飛来することから重度の火傷を負うことが多く,ほとんどの事例で死傷者が発生している.米国でも,多数の死傷者を伴う大規模な粉じん爆発事故が絶えない.粉じん爆発は,可燃性の粉体を取り扱うすべての場所で発生する可能性があるが,身近な潜在リスクとして認識されることが少ない.そこで,国内の危険物施設における粉じん爆発事例と米国の大規模粉じん爆発事例を紹介するとともに,その危険性と防止対策について述べた.

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