「長期使用製品安全点検・表示制度」が平成21 年(2009 年)4 月1 日に施行された.製品事故の要因のひとつに寿命管理の問題がある.故障するまで使用することを目標とする消費型寿命管理を循環型の寿命管理に変換することで事故を減少させるとともに資源の有効活用を推進することが重要である.予防保全を考慮した寿命についての考え方(消耗品と耐久品)を整理し,寿命管理を時間と機能のふたつの側面から実施することを提唱する.循環型寿命管理への変換のための課題として,循環型ビジネスの推進,寿命管理手法の開発,機能のモジュール化とモジュール単位の管理について考察する.
慶應義塾大学大学院理工学研究科およびシステムデザイン・マネジメント研究科では,文部科学省グローバルCOE プログラム「環境共生・安全システムデザインの先導拠点」の教育・研究活動を行っている.本稿では安全工学にもかかわる本活動の概要を紹介する.まず,「対象とするシステムの如何にかかわらず安全・安心,環境共生などの基本的な社会的価値を考慮してシステムデザインを行う」ことを中心とする拠点のコンセプトを述べる.次に,いくつかの研究事例を紹介する.
2008 年5 月28 日( 水)午後3 時頃,島根県松江市内にあるビジネスホテルにおいて悪臭苦情があり, 消防署が出動したところ高濃度の硫化水素ガスが検出され,結果,周辺事業者の従業者など8 名が医療機関を受診するという大きな事件が発生した.硫化水素ガス発生の原因は,ホテル建設当時に地下配管ピッ トに不法投棄された石膏ボードが水分を含み,嫌気性化と硫酸塩還元菌の活性化により発生したと推定さ れた.本稿ではその経緯と原状回復に向けた指導状況について述べた.