安全工学会では「企業に役立つ情報」の提供を強化したいと考えて居り,その一環として『安全におけるトップマネジメントの役割』について検討を行っている.第一弾の『社長の役割』については2009 年より検討を開始し,成果を安全工学誌(Vol.50,No.3〔2011〕)に「提言」として発表した.第二弾として『安全統括者の役割』を各企業より安全担当役員経験者の参加を得て,2010 年より検討をして来たので,その状況を報告する.(参加者は文末に記載)
我が国の機械産業界は,機能と品質の高さ,及び優れた生産能力で世界のトップレベルを維持してきた.しかし,近年,アジア各国の生産技術水準が向上したことや,市場において安全性に対する要求や意識が変化しつつあることを受け,今まで以上に厳しい国際競争の場に直面している. 市場として重視されている中国は,政府の機械安全に対する推進体制の変化と共に,変わりつつある.中国からは,機械安全に関する国際標準開発も提案されており,国際標準化を国際市場に進出する戦略として利用しようという姿勢もうかがえる.そのような中国に対して,我が国の機械産業が的確に対応していくためには,まずは,中国市場での規制等の現状を,把握することが必要とされる. そこで,本稿では,中国における機械設備に関する安全性向上の活動の体制や活動などの状況について調査を行い,中国における機械安全推進の考察を通じて,我が国における機械安全の推進方策に関する提言を行う.
近年,情報処理システムの大規模化・複雑化が進み,これに伴いシステム間のインタフェース部分の不具合が原因の重大障害が多発してきている.しかし,情報処理システム全体の可用性・安定性を観点に据えたリスク分析手法がなかった.そこで,先行研究においては,工学分野でよく利用され,系統的摘出能力があるHAZOP を,実在する小規模な情報処理システムに適用し,その有効性を実証した. 本論文では,さらに大規模な情報処理システムにHAZOP の適用を試みた.具体的には,金融機関における業務継続計画の策定作業のなかで実施されるビジネスインパクト分析に,HAZOP 手法を取り入れることで,システムの可用性が高められるリスク分析手順を作れた.多数の業務アプリケーションで構成され,様々な業務フローが複雑に重なり絡み合う大規模金融情報システムにおいて,分析対象を影響度の大きい優先業務フローに絞り込み,さらに検討項目と判定基準を定式化することで,HAZOP を効果的に適用できた.
鋳造用の発熱保温剤製造工場において,原料のアルミニウム粉を紙袋で混合機投入中に粉じん爆発が発生した.その着火源について,種々の実験を行い検討したところ,紙袋に使用されていたポリエチレン内袋がアルミニウム粉との摩擦によって静電気帯電し,さらに紙袋内部の粉体が静電誘導を受けて高電位となり,火花放電を生じた可能性が高いことが推定された.実験の結果,紙袋からの投入時の発生電荷は,紙袋に前もって加えられていた荷重と正の相関があること,また,投入中に空間に分散・滞留する粉じんの粒径(中央値)は10 µm 程度であり,これは,もともとの粒径(約60 µm)よりもかなり小さく,これによって最小着火エネルギーが約1/30 となること等が明らかとなった.これらは,同種作業において活用できるものである.
東京理科大学総合研究機構火災科学研究グループでは,「建築物の先導的火災安全工学研究拠点」(2003 ~2007 年)に続いて2008 年から,文部科学省グローバルCOE プログラム「先導的火災安全工学の東アジア教育研究拠点」に採択され,火災科学を対象とする唯一のCOE として,大学院国際火災科学研究科の設置を軸に,多彩な教育・研究に取り組んでいる.本稿ではグローバルCOE の経緯,現状,問題点と将来の展開について解説する.なお,原稿の一部には「特集:東アジアの火災事情」(火災,2011 年4 月号)1)を利用した.
その3では当時のサイロへのRDF の受け入れ状況とサイロ内の温度,CO 濃度の変化を検討し,災害原因を推定した.本調査の結果,三重県内で製造されたRDF には発熱性があることが判明した.鈴鹿倉庫に4 ヶ月間保管されていた古いRDF が発火に直接関与したかどうかは不明であるが,サイロに貯蔵されていたRDF は7 月18 日あるいはそれより前に発火した.サイロ内でくすぶり続け,不完全燃焼に伴うCO と熱分解による可燃性ガスが発生していた.サイロ内には可燃性(爆発性)の混合気が滞留していた. 14 日については,かき出し作業で堆積層が崩れ,新鮮な空気が層内に流入することで火炎が大きくなったり再燃したりし,燃えているRDF が着火源となって爆発が発生した.19 日については,ガス溶断作業の炎あるいは火花が着火源となって爆発した.
YKK AP では,専用の検証施設で実際に製品を使う幅広い生活者の誤操作・誤使用を検証し,誤操作や誤使用時の安全性を含め,ユーザーの生活行動を踏まえた製品開発を進めています.また,公的な性能基準が定められていない項目等について,専用の検証装置で様々な実環境を再現して,製品の耐久性や破壊モードでのリスク検証を開発段階に取り込んでいます.更に,組立,施工等に関する研修を実際の建築現場を想定した研修施設で行い,施工業者の意識啓発と技術向上による事故防止を図っています. これらの活動が評価され,YKK AP は2010 年度製品安全対策優良企業表彰「経済産業大臣賞」を受賞しました.私たちはこの受賞を製品安全への取り組みの本当の意味での始まりと考え,更なる向上をめざして製品安全活動に取り組んでまいります.