平成23 年3 月11 日に発生した東日本大震災後の福島第一原子力発電所の事故は,発生後半年以上が経過し,原子炉や使用済み燃料プールの安定的冷却が可能となるなど,事故の収束に向け着実に作業が進められている.この事故は,発電所周辺の方々をはじめ広く一般社会に大きな不安を与え,今なお大勢の方々に避難生活を強いることになり,さらに農業,水産業など広く社会活動に重大な影響を及ぼしている. このような事故を防げなかったことにより原子力発電に対する社会の信頼は失墜し,原子力発電の在り方について問い直されていることを,原子力事業に関わる者として極めて深刻に受け止めなければならない. 本事故の直接的な原因および事態の経過については,既にIAEA 閣僚級会合に提出された政府の原子力災害対策本部の報告書や,東京電力(株)が公表した資料等に記載されている.また,国の第三者機関である「事故調査・検証委員会」により本事故の原因について調査が進められている. 一般社団法人日本原子力技術協会(以下「原技協」という.)は,原子力産業界の安全文化醸成活動に携わっている.今回の事故を「安全文化」の観点から評価し,事故の未然防止や事故発生後の緩和措置の改善につなげる考察を行うには,事故発生以前および事故後において事故当事者および関係する組織がどのように情報を収集・分析・評価し,判断を下したかについて検討が必要となる. 本稿では,これまでに得られている情報をもとに,原技協のこれまでの活動で得られた知見を加えて安全文化の側面から考察を行った.さらに,原技協で原子力技術の特殊性を考慮した「安全文化の原則」についての見直し等を進めている状況についても紹介する. なお,国の第三者機関である「事故調査・検証委員会」は年内に中間報告書を取りまとめることになっているが,今後,原技協は本報告書等の内容を受けて検討を行い,改めて考察を加える必要があると考えている.
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