安全工学
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53 巻, 3 号
安全工学_2014_3
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
会告
安全への提言
総説
  • ―防災から危機管理への展開
    白木 渡
    2014 年 53 巻 3 号 p. 145-150
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    東日本大震災の教訓を踏まえ,大規模広域な地震災害に対応するためには,従来の「地域防災計画」の見直しが必要である.また,行政機能が麻痺するという想定外の事態を想定して,行政機能の早期復旧を目指した戦略的対策を事前に検討しておくことが重要である.そのためには複数の市町村と連携した「地域継続計画(DCP: District Continuity Plan)」を策定しておく必要がある.ただし,DCP 策定の前提として広域連携による地域継続の視点を入れて,各市町村における地域組織(行政機関や企業等)の事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定が不可欠である. 本稿では,四国に大きな被害をもたらす南海トラフ巨大地震に対して,事前対策を主とした防災の考え方から想定外の事態に至った場合の事中・事後対策を主とした危機管理の考え方への展開について考える.

  • 奥本 賢
    2014 年 53 巻 3 号 p. 151-159
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    (株)原子力安全システム研究所原子力情報研究プロジェクトは,研究所設立以来20 年以上にわたって,海外の規制当局等が発信する年間数千件にのぼる原子力発電所のトラブル情報を入手し,詳細に個別分析している.分析を通じて抽出した教訓事項を,「他山の石」として国内の加圧水型軽水炉(PWR)を所有する電力会社へ提言している. この活動が原子力安全を維持・向上させるうえで有益であることについては異論のないところであろうが,一方で我々原子力関係者が福島第一原子力発電所の事故(以降,福島第一事故と記載)を防ぐことができなかったのも事実である.弊プロジェクトでは改めて過去の活動が真に有益であったかを振り返り,社外の意見にも真摯に耳を傾けながら改善・充実させているので,その活動の全貌を紹介する.

  • 牧野 良次
    2014 年 53 巻 3 号 p. 160-166
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    最近数年以内に公表された学術論文を対象として労働災害および産業事故防止のための安全対策に関する費用便益分析を扱った文献をレビューし,研究の現状と今後の課題を抽出した.安全対策にかかる費用の計測はそれほど困難ではなくほとんど問題になっていない.安全対策の便益は「回避された事故費用」により評価されるのが一般的である.物損などの直接損害よりも,事故による生産ロスなどの間接損害の評価方法について研究が進行中であるというのが現状である.残されている問題点としては(1 )事故発生確率の扱い,(2 )費用/ 便益の比がどの程度大きければ費用が大きすぎると見なすべきか,(3 )費用便益分析を実施するツールの作成があげられる.

  • 平川 幸子, 村上 佳菜, 義澤 宣明, 滝澤 真理, 河合 理城, 佐藤 理, 高木 俊治, 中村 尚司
    2014 年 53 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    2011 年3 月11 日に発生した東日本大震災に伴う原子力発電所事故直後から環境中及び露地野菜,原乳,水道水等から,ヨウ素131 が検出された.本稿では,主にヨウ素131 による内部被ばく線量の再評価の参考となる,事故直後の福島県住民の避難状況及び避難者の避難中の食生活及び流通実態について調査し,課題を整理した. 調査結果からは,事故直後に避難者が摂取した食品等の多くは事故前からの備蓄品又は被災地外からの支援物資であったことが確認された.さらに,対象野菜の出荷制限,水道水の摂取制限の他,流通施設の被災,小売店舗の閉鎖,等の状況からヨウ素131 で汚染された食品等が大量に消費される状況ではなく,一般に広く流通した可能性は低いことが示唆された.

  • 南川 忠男
    2014 年 53 巻 3 号 p. 173-180
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    運転員の行動特性や組織内のコミュニケーション不全がプロセス事故の一原因にもなっており,演習を取り入れた保安防災集合教育を開始した理由は災害のなぜなぜ分析で3,4 番目に挙げられる原因に「ひとこと言っておけばよかった」「やる前に相談すればよかった」などが挙げられており,声かけの大切さ,適正な権威勾配,言い出す勇気など人的要因の中でもノンテクニカルスキルの重要性を深く気付く教育の実施が求められていたためである. 同じような組織事故も繰り返し発生しており,従来型の技能や知識教育ではコミュニケーションを含めたノンテクニカルスキル(NOTS)のトラブルを改善することをカバーしておらず,これを克服するためNOTS の重要性と運転員自身の行動特性を深く気づいてもらう教育を新しい教育プログラムを開発して開始した.又,運転員自身の行動特性を自ら気付かせるため行動特性評価を実施している.プログラムはそれぞれの個別職場の問題を上位概念化した全部署共通で使用できる仮想状態でのコミュニケーション体験演習を中心に構成している. 9 年間の教育で他の活動とも相まって,事故の件数が減ってきており,特に行動特性起因の労災は減少 した.これはノンテクニカルスキルの向上が労災及びプロセス事故を抑制するのを可能にさせる意味を持つ.運転員自身の気付きを維持することが今後更なる事故防止に貢献するであろう.

論文
  • 栗原さゆり・斎藤 寛泰, 水谷 高彰
    2014 年 53 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 2014/06/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    相似形容器を用いた定容爆燃実験で着火位置を偏心させて行い,可燃性ガスの爆燃特性値に及ぼす着火位置の影響を調べた.上下壁面でイオンプローブによって火炎到達を検知することにより火炎球が受ける浮力の影響を把握することを試みた.その結果,燃焼速度が小さい可燃性ガス条件では,浮力の影響が顕在化し,爆発指数(KG 値)が着火位置によって変化した.最大のKG 値となる最適着火位置は,着火位置に対してKG 値が極大値をとる場合,火炎が同時に上下壁面に到達する着火位置と概ね一致した.一方,着火位置が下方であるほどKG 値が増加する場合,最適着火位置は下端となった.したがって,浮力の影響により発生する非等方的な燃え拡がりが顕著になる条件では,上下壁面への火炎到達状況を把握し,適切な着火位置でKG 値の評価を行う必要があることが明らかになった.

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