安全工学
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54 巻, 4 号
安全工学_2015_4
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会告
安全への提言
総説 社会と取り組む子どもの傷害予防 小特集
  • -安全知識循環型社会の構築に向けて-
    山中 龍宏
    2015 年 54 巻 4 号 p. 228-235
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    事故による子どもの傷害は多発しており,重要な健康問題となっている.子どもが事故に遭遇しやすい理由は「発達」するからである.昨日まで寝返りできなかった子どもが,今日,寝返りをしてベッドから落ちてしまう.子どもの事故は,何歳になったら,どんな事故が起こるかはわかっており,多くの場合,どうしたら予防できるかもわかっている.傷害予防に取り組む場合は,重症度や発生頻度が高く,増加している事故について優先的に取り組む必要がある.予防するためには,傷害が発生した状況や製品・環境の詳しい情報が不可欠であり,また,いろいろな職種の専門家が連携する必要がある.傷害が起こった時の情報を,「変えたいもの」「変えられないもの」「変えられるもの」の3 つに分け,「変えられるものを見つけ,変えられるものを変える」ことが予防なのである.
  • 北村 光司, 西田 佳史, 大野 美喜子, 山中 龍宏
    2015 年 54 巻 4 号 p. 236-244
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    子どもの傷害予防を目的とした安全知識循環型の社会を実現するためには,様々なデータが必要である.例えば,問題を発見するための事故・傷害のデータ,事故に関わる子どもの体のサイズデータ,製品とのインタラクションに関係する身体能力データ,事故予防や傷害を予防するのに必要な製品の形状や材質の評価技術や評価データなどである.これらのデータの全てを,特定の機関や企業などが整備することは難しい.そのため,子どもの安全に関わるデータを広く活用可能な形にして公開していくことが重要である.本稿では,安全知識循環型の社会を実現する上で重要なオープンデータの構築とその活用について紹介する.
  • 宮崎 祐介
    2015 年 54 巻 4 号 p. 245-252
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    傷害サーベイランスで収集される傷害データには傷害発生プロセスが欠損することが多い.この傷害発生プロセスの情報を多組織協働により共有し,蓄積することが,原因究明と予防策の提案において,必須である.シミュレーション技術を活用することにより,この傷害発生プロセスの情報を補間することが可能であるが,その精度向上を図る上でさらに質の高い実際の傷害データが必要となる.本稿では,子どもの傷害予防に対する取り組みとして,具体的な傷害発生プロセス推定事例としての,遊具転落事故および家庭内事故と虐待における頭部外傷に関する事例を紹介する.
  • 西田 佳史, 北村 光司, 大野 美喜子, 山中 龍宏
    2015 年 54 巻 4 号 p. 253-261
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    社会問題とは,隠れていてよく見えない社会構造のせいで,至るところでシステマティックに問題が起こっているように見える現象のことである.肥満・糖尿病などの生活習慣病,生活不活発による廃用症候群,事故による死亡や障害などの問題は至るところで見られる社会現象となっている.この種の社会課題の解決には,社会構造そのものを設計・介入の対象にする,すなわち,社会構造を「変えられる化」する必要がある.本稿では,子どもの傷害予防の問題を取り上げ,これまで筆者らが実践者として進めてきた様々な組織の社会機能を引き出して,それを活用することで子どもの傷害を予防することができる社会的仕組み「安全知識循環エコシステム」を構築する活動を題材として,社会問題解決の新たなアプローチを議論する.
  • 高橋 義則
    2015 年 54 巻 4 号 p. 262-267
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    キッズデザインは,「子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン」「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン」「子どもたちを産み育てやすいデザイン」の3 つのミッションのもと,多様な企業・団体が集い合う活動の総称である.母体は特定非営利活動法人(NPO)キッズデザイン協議会が担う.中核的な活動が顕彰制度である「キッズデザイン賞」で,これまで8 回の実施で受賞点数は1500 点を超えた.子どもの安全については一般的なユーザーを想定した住宅,設備,家電,日用品であっても子ども視点を持つ製品等も対象にしている.受賞作品を俯瞰すると,業種・分野ごとに様々な安全設計の工夫があることがわかる.子どもの事故予防に取り組む先進事例の紹介を通じて,子どもが健やかに育つ社会,産み育てやすい社会づくりの構築を提案する.
  • 持丸 正明
    2015 年 54 巻 4 号 p. 268-273
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    子どもを重篤な事故・傷害から救うために考えられた製品・サービスが,消費者に受け入れられ,市場を形成するためには,(1 )危険の認知(ニーズ喚起),(2 )危険に対する科学的対策(論理的理解),(3 )その効果の認証とアイコン(情動的同意)の3 つのアクションが必要になる.これらを,産業界,研究者,NPO とで協力して進めている.その手段のひとつとして標準化を活用し,JIS などの標準による危険の認知と科学的対策,さらに,キッズデザイン協議会のフォーラム標準によるキッズデザイン・ガイドラインとそれに基づく認証を実施している.本稿では,これらの標準活動と,子どもの安全に科学的に対処する製品・サービスの市場を国際展開するために,国際標準化にどのように取り組むかの戦略について述べる.
総説
  • 平川 幸子・土屋 正春・中島 拓也・首藤 俊夫, 水流 聡子
    2015 年 54 巻 4 号 p. 274-280
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    製品事故においては消費者の誤使用,不注意による事故や,リコール製品を使用し続けることによる重大製品事故が多発している.誤使用・リコール製品等による事故を未然に防止するためには,製品を正しく使用するための注意喚起の徹底や,消費者の製品安全意識の向上を図る取組を強化する必要がある. このため,経済産業省において平成26 年度商取引適正化・製品安全に係る事業(製品安全に係る消費者教育推進事業)として小学校高学年向けのワークブックの作成及びモデル授業を実践した.その結果について,その成果の一部を紹介する.
  • 田中 富成
    2015 年 54 巻 4 号 p. 281-290
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    東京消防庁管内*1 における平成25 年中の救急出場件数は749 032 件,不救護や搬送辞退等を除いた搬送人員は655 925 人であり,平成26 年中は救急出場件数757 554 件,搬送人員664 629 人と過去最高を更新した.平成25 年中は,日常生活事故による搬送人員が初めて12 万人を超えた.本稿では,平成25 年中の救急搬送データから見る日常生活事故について,事故種別,年齢区分,熱中症,ガスによる事故,それぞれの傾向と事故事例及び事故防止のポイントを示す.
論文
  • 犬塚 史章・吉留 和宏
    2015 年 54 巻 4 号 p. 291-298
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー
    鉄道に関する安全上の意思決定において,発生確率と被害規模の組み合わせでリスクを見積もっても,優先順序の判断が難しい場合がある.これは,鉄道会社の社会的責任の大きさに違いがあるためと考えられる.近年,日本の鉄道事故の9 割以上は,鉄道会社以外に起因して発生している.これらのリスクを鉄道会社が着実かつ効果的に低減するためには,リスクに対する鉄道会社の社会的責任の大きさを把握することが重要である.本研究では,リスクに対する鉄道会社の社会的責任の大きさを,インターネット調査のデータに基づき,重回帰分析により推定した.結果は統計的に妥当性が示された.リスクと共に社会的責任を用いることにより,鉄道における意思決定が容易になると考えられる.
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