安全工学
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54 巻, 5 号
安全工学_2015_5
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
会告
安全への提言
総説 自然災害に対する防災・減災 小特集
  • 桑原 保人
    2015 年 54 巻 5 号 p. 325-330
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    日本の地震リスクと,それに対する防災・減災施策をレビューした.日本の地震リスクは世界で最も高いグループに入り,また先進国の中では一番に高い.1995 年阪神淡路大震災を契機として,日本全国の詳細な地震リスクを一様に評価するためのプロジェクトが始まった.2011 年東日本大震災では,数百年に一度程度の低頻度で大規模な地震と津波災害に対する事前の検討が欠けていたことが教訓となり,国の防災施策についても大きな改訂がなされた.地震被害軽減のための基本的方策としては,被害の定量的な予測を行い,それに基づいて防災減災のための計画を立て実行していくこととされている.今後は,サプライチェーンなども含めた産業被害も定量的に予測し,産業界も含めて防災減災に取り組むことが,より確実に日本の地震リスクを軽減していく方策の一つとして考えられる.
  • 宍倉 正展
    2015 年 54 巻 5 号 p. 331-339
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    2011 年東北地方太平洋沖地震では津波が沿岸各地を襲い,甚大な被害をもたらした.その巨大な規模から想定外が叫ばれたが,実は古文書や地形・地質の痕跡から,過去にも同様の津波が襲っていたことがわかっていた.このことから東日本大震災後,過去の地震や津波を探る研究(古地震・古津波研究)が注目を浴び,日本列島各地で行われるようになった.一方,行政は想定外をなくすために,過去の事実に関係なく,予め最大クラスの想定を行うようになった.あまりに巨大な想定は,かえって地元住民を困惑させることになってしまいかねない.そこで古地震・古津波の研究者は,新たなアプローチで過去の巨大津波の実態を解明しようと試みている.
  • 恒見 清孝, 吉田 喜久雄, 玄地 裕, 田原 聖隆, 梶原 秀夫, 牧野 良次, 桑原 保人
    2015 年 54 巻 5 号 p. 340-345
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    東日本大震災以降,自然災害のような突発的でかつ大きな被害をもたらす事象に適用できるリスク評価・管理手法が求められている.産業技術総合研究所安全科学研究部門と活断層・火山研究部門は,将来起こり得る大規模な地震や津波などの直接的な一次災害,およびそれに付随するプラント事故や生産・物流への壊滅的ダメージなどの間接的な二次被害の未然防止および最小化を目的として地震災害総合リスク評価ツールを構築してきた.本総説では左記評価ツールを構成する一次災害サブシステム,二次被害サブシステム(化学物質漏洩,サプライチェーンの寸断,民生建物・人口被害),リスク評価の各サブシステムの具体的機能を説明し,期待されるツールの活用方法等について述べる.
  • 伊藤 順一
    2015 年 54 巻 5 号 p. 346-353
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    日本列島においてこれまでに発生した噴火災害の詳細データ(本稿では被害の大きさが明瞭な人的被害に着目)に基づき,その災害要因を分析した.また,災害要因毎の特徴を過去の災害事例をもとに整理した.御嶽山2014 年噴火の事例解析においても,火山噴火においては同時に複数の現象が重層的に発生している事,また火山噴火の場合には活動経過が数年に及ぶこともあり,その間に噴火様式や発生しうる要因が変化する事に留意する必要があることを記した.最後に,我が国の火山防災体制や観測研究体制を示し,活動火山対策特別措置法(いわゆる「活火山法」)の本年7 月の改正項目についても紹介した.
  • 首藤 由紀, 田中 達也, 田中 諒介, 吉田 佳絵, 村上 遼
    2015 年 54 巻 5 号 p. 354-361
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    東日本大震災の教訓を踏まえ,法改正をはじめとした各種防災・減災対策が進められている.一方で,その後も噴火災害などが相次ぎ,将来的にも大規模な被害をもたらす可能性のある災害の発生が予測されている.本稿では,近年の我が国における防災・減災対策のうち,ソフト面の対策である①火山災害の避難対策,②原子力災害の避難対策,③行政における災害対策本部訓練,④災害時の要配慮者対策,⑤自然災害の事故検証,をトピックとして取り上げ,その現状と課題等を概説する.
総説
  • 七田 佳代子
    2015 年 54 巻 5 号 p. 362-368
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    日本では,家庭で使用されて使い残された農薬や塗料・溶剤などの化学製品が廃棄物になったものについて,市区町村による適正処理についての対応は十分でなく,市民の多くがどう排出すべきか困って退蔵,場合により不適正排出や不法投棄を起こしやすい状況にある.他方,米国や欧州の国々では,化学物質による地下水汚染等,住民の健康に対する危険有害性に配慮し,これら廃棄物を埋め立てから除外し,家庭系有害廃棄物Household Hazardous Waste, HHW として区分し,その管理政策を形成するに至っている.日本の廃棄物処理法に基づく廃棄物の区分,自治体の処理計画のあり方が,廃棄物の安全かつ適正な処理を阻害する,どのような問題状況を引き起こしているかを解き明かし,改善に向けた若干の提案を行う.
技術ノート
  • 河野 剛, 森 繁樹, 太田 潔
    2015 年 54 巻 5 号 p. 369-373
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    任意酸素濃度における粉じん爆発の最小着火エネルギーを評価する装置を開発した.数種類の粉体について,本装置で評価したところ酸素濃度の低下に伴う顕著な着火感度の低下が確認された.加えて,最小着火エネルギーの酸素濃度依存性に関する既報の実験式と実測値との比較を行った. また本評価手法の安全対策への適用例として,空気輸送設備を例に挙げ,対象となる設備内で生じ得る放電エネルギーの最大値と設備内の支燃性ガス濃度雰囲気における最小着火エネルギーとを比較することによって,限界酸素濃度未満まで酸素濃度を下げずに,リスクを管理する考え方について紹介する.
資料
  • 佐々木 邦昭
    2015 年 54 巻 5 号 p. 374-377
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    2013 年から北米内陸部で新たな油濁事故が頻発している.原油輸送パイプラインの破裂,原油輸送貨車の脱線,爆発である. これらの事故は近年,海岸近くで生産される在来型原油の枯渇,世界的な原油需要の増加,そして掘削技術の進歩により,従来軽視されていた内陸部に埋蔵される非在来型原油の生産が急増した反面,海岸部まで長距離を送油するパイプラインが飽和状態になり,鉄道輸送の安全確立が未整備の中で起きている現象でもある. これら原油の鉄道輸送は2008 年(9 500 輌)から急激に増加し,2014 年は50 万輌で850 万バレル/日が輸送されている. このため,北米では2014 年から,急遽安全な陸上輸送の基準見直しを始めていたが,事故が続き,抜本的な安全基準への模索は当分続きそうである.
災害事例分析
  • ―発酵によって引き起こされる自然発火の危険性
    村沢 直治・古積  博・坂本 尚史, 岩田 雄策, 佐伯 孝夫
    2015 年 54 巻 5 号 p. 378-386
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    東日本大震災により大量の災害廃棄物が生じた.このため,一時的に災害廃棄物を堆積し,分別後に処理するための仮置き場が数多く設置された.しかし,この設置された災害廃棄物の仮置き場で40 件以上の火災が相次いで発生し,特に,2011 年の初夏から晩夏にかけての出火件数が多く,微生物発酵等を起因とした自然発火であることが,推定された.そこで,災害廃棄物に起因する火災が発生した東北地方の様々な仮置き場で現地調査を行い,発酵する可能性のある災害廃棄物の採取を行った後,様々な熱分析装置やガス分析装置を組み合わせて実証実験を行い,発酵発熱によって引き起こされる自然発火についての検討を行った.結果,腐食が進行した畳や木材チップ等が自然発火の引き金となりやすいことを明らかとしたことを報告する.
学術活動報告
  • ―平成26 年度経済産業省委託事業による調査・分析活動の内容
    岩田 稔
    2015 年 54 巻 5 号 p. 387-396
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    石油コンビナートにおける最近の事故発生は現場保安力低下によるものであり,この要因を改善・強化することで,安全で安定した事業所の操業を実現することが,石油精製・石油化学等事業者にとっての重要な課題となっている. そこで安全工学会では経済産業省より平成26 年度現場保安力維持向上基盤強化事業を受託し,現場保安力の概念の整理,評価要素の整理と重み付けを行い,現場保安力マトリクスに基づく定量的な評価手法を提案した.あわせて,各事業所ヒアリングを行い良好事例として強化要素を体系的にまとめた.さらに,現場保安力に関する海外調査,経済的影響評価などを行った.ここでは,紙面の制約もあり評価手法中心に活動内容を紹介する.
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