安全工学
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58 巻, 3 号
安全工学_2019_3
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
会告
安全への提言
総説
  • 須川 修身
    原稿種別: 総説
    2019 年58 巻3 号 p. 149-153
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル フリー

    火災現場で突然発生したバックドラフトによって,消防の救助隊員2 人が,重い熱傷と殉職する不幸な事故が生じた.バックドラフトを生じさせた原因は,電気ストーブを熱源とした燻焼火災であるが,天井下あるいは天井裏に可燃性の熱分解ガスが滞留し,消火・排煙のために外気が入り,爆発的に燃焼したと推認される.火炎の噴き出しがあった屋内の廊下高さと隊員の退避行動から火炎流の噴出速度の推定を行ってRe 数の見積もりと火炎温度を600 ~800℃としてNu 数の推定を行い,これに基づいて対流熱伝達係数を推定した.また同様な火炎温度からの放射熱伝達係数を推定し,これら2 つの熱伝達の和として火炎に暴露された隊員へは70 ~80 kW/m2 の熱流束が負荷されたものと推認された.この値はISO 13506 やASTM F1930-13 に示されている84 kW/m2 に近い値であり,30 ~60 秒程度で身体は限界に陥ると推定される.

  • 牧野 良次, 中島 農夫男, 和田 有司
    原稿種別: 総説
    2019 年58 巻3 号 p. 154-161
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル フリー

    産業技術総合研究所が経済産業省委託事業として実施した化学プラントの過去事故分析によるチェックポイント集の開発について述べる.生産現場レベルでは過去の事故事例が必ずしも十分活用されていないという懸念を背景として,本事業では現場で役立つ保安情報のエッセンスを使いやすい形で抽出することを目標とした.30 件の事故調査報告書にもとづいて事故の前兆から収束までを時系列表記する事故進展フロー図を作成し,事象が進展する原因を3M 分析によって人,設備/ 機器,管理の観点からより詳細な要因に分解した.3M 分析の結果から関連する気付き・気配り情報,注意喚起事項,確認事項としておよそ3300 件の現場保安チェックポイントを作成した.さらに現場での検索の利便性向上のため各チェックポイントにはキーワードを付与し,専用の検索システムを開発した.

  • 福島 祐子
    2019 年58 巻3 号 p. 162-167
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル フリー

    複雑化したシステムの安全分析のための事故モデルSTAMP は,システムを構成するコンポーネントに不具合が無いとしても,それらの相互作用により起きる事故をも分析の対象とする.そして,そのような事故の主な原因は,不正確な“プロセスモデル(システムが認識するシステムの状態)”にあるとしている.そのため,事故の原因を特定するには,このプロセスモデルをいかに導出するかが鍵となる.しかし,その導出の考え方が十分に示されていないという課題があった. これに対して,2018 年に「STPA HANDBOOK」が公開され,その考え方が示された. 筆者は,STAMP を理解する上で,プロセスモデルは重要なポイントであると考えている.そこで,本稿ではプロセスモデルに焦点を当て,STAMP による事故発生の捉え方とプロセスモデル導出の考え方について解説する.

  • 小松原 明哲
    2019 年58 巻3 号 p. 168-178
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル フリー

    品質・安全上の問題は隠されてしまうと何も対策が取られず,顧客を危険な状態にさらすことにもなる.これは,決して容認されることではない.しかし問題を現場が隠してしまい,後刻それが発覚して企業不祥事として糾弾される例が後を絶たない.本稿では,隠しごとは「結果的隠し」「未必の隠し」「意図的隠し」の3 形態があることを指摘し,その各形態において,「“隠す”行動の形成要素モデル」を用いて,ペナルティ,密室性,安全や品質に関する経営方針などの諸要因と隠しごととの関係について考察した.それらに基づき,隠しごとを避けるための監査の視点をまとめとして検討,整理した.

技術ノート
  • 村沢 直治, 澤井 光, Ismail Md. Mofizur Rahman, 八田 珠郎
    2019 年58 巻3 号 p. 179-188
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル フリー

    福島第一原子力発電所の事故により,福島県内にある一部の一般廃棄物焼却施設から生じる焼却灰等からは,放射性Cs が検出されている.特に,飛灰中の放射性Cs は,水分との接触により溶出しやすいことが示唆されており,一時保管中や埋立後に放射性Cs が溶出してくることが懸念されている.そのため,各処理過程での安全性を確保し,適正処理を進めていくには,焼却灰等からの放射性Cs 溶出特性の把握や,その抑制方法の検討が重要な課題となっている.そこで,県内にある一般廃棄物焼却施設から夏季と冬季にそれぞれ試料採取を行い,それらに関する試験を実施した.その結果,飛灰には放射性Cs の溶出に影響を及ぼす塩化物が多く存在しており,焼却灰等からの放射性Cs 溶出抑制方法として,重量比5%から20%の粘土鉱物の添加・混練が有効な安全対策の1 つとなることを明らかとした.

資料
  • 荒井 保和
    2019 年58 巻3 号 p. 190-196
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル フリー

    プロセス,設備,材料といった製造を支える技術の進化により,また安全を維持管理するための安全マネジメントシステムの発達により,製造現場の安全レベルは確かに向上してきている.しかし,事故は撲滅できていない.いくつかの大きなプラント事故を契機に提言された,より高い安全レベルを目指すための安全文化醸成の必要性は,今日製造業全般に亘り関係者の共通認識になってきている.本稿では意識,情緒,概念といった,我々がこれまで使い慣れてきた規範や文書という形式にはなり難い面を持つ安全文化の概形をイメージしつつ,それが浸透してきた組織は何ができているのか,どうすればそうなるのか,さらに深めるためには何をすべきかといった論点について,6 回の連載で諸氏とともに考えて行きたい.

  • 福田 隆文
    2019 年58 巻3 号 p. 197-200
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル フリー

    技術者倫理は安全と密接な関係にあることに異論はないのだろうが,具体的なこととなるとよくわかっていないのが多くの技術者であろう.そこで,技術者倫理について考える材料を提供すべく,5 回の予定で「科学技術と倫理の今日的課題」と題して総説を連載する.初回にあたって,全体像を提示する.

  • 杉本 泰治, 福田 隆文, 佐藤 国仁, 森山 哲
    2019 年58 巻3 号 p. 201-210
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル フリー

    技術者倫理,生命倫理およびAI 倫理は,互いに別個のように扱われてきたが,科学技術にかかわる倫理として知見を共通するようになるとよい.倫理問題の構成について,社会は三つの領域からなるとのダニエル・ベルの見方を応用して,3 領域と4 統合・学際域からなる三元的モデルを創作し,事象・事故の分析と統合に用いる.失敗学「まんだら」は,「科学技術・経済」領域の一元観である.応用例として,「倫理と法の二元的学際域」は,生命倫理における法と倫理の関係に照明を当て,なぜ,倫理は法の代わりになるかを考えさせる.次いで,「未知」と「既知」の区分によって,先端領域と既成領域の関係が明らかになり,さらに,行為規範と評価規範の区分によって,研究者のコミュニティの自律による研究者倫理が,生命倫理を支える健全な基礎になることが見えてくる.

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