近年,自然災害によって引き起こされる産業事故がNatech と称され注目されている.Natech リスクには爆発・火災を始めとした一般的なリスクに比べて特徴が複数あり,それぞれがNatech リスクへの対応を困難にしている. 激甚化する風水害や大規模地震の懸念があるわが国では,自然災害のみならず,Natech に対する備えが求められている.本稿では近年のNatech リスクの研究動向について概観するとともに,自然災害が事業所に及ぼす被害モードについて説明する.
リスクアセスメントは職場の危険状態を見いだし,事前に対策をとることで労働災害を防ぐのに有効であると考えられる.一方,中小規模事業所においては労働安全の担当者や専門家がいないので,リスクアセスメントの実施が困難といわれる.そこで,オペレータやライン管理者が行え,重大な危険を見落とさない手法が求められている.本報では,簡易にできるリスクアセスメント法として,労働災害事例から主要な危険状態を図示したアセスメントシートと作業を写真で見直すアセスメントシートを試作した.その結果,これらのシートを用いることで多くの危険を把握できることがわかったので,報告する.
最近,大企業の不適切行為が連続して発覚し,顧客・ユーザーや社会に大きな損失と不信感を与えている.不適切行為の再発防止のためには,起こった事例を分析し,背後要因を追究することが重要である.そこで至近に発生した神戸製鋼所の不適切行為の事例を題材にして,不適切行為の背後要因について検討した.検討にあたっては,Chernov らの情報隠蔽の背後要因,安全に係る組織風土調査,ルールの形骸化の不適切行為を扱った関連研究成果他の視点で行い,再発防止の留意事項をまとめた.
前報でも述べたが,文化というものを“これ”と説明するのはなかなか難しい.現場に育まれてきた習慣であれ価値観であれ,それらを文書にした瞬間に,それらはその現場の決まりになってしまい,文化からは遠い存在になってしまう.結局文化とは,その現場に関わる人々が平均的に,共有している価値観,考え方,行動様式なのではないかとの思いから,この連載をお引き受けし,悩みながら拙い文書を綴らせて頂いている.今回は気づきを主題とし,安全の基本とも言うべき“ルールを守る”という原則の中にも,気づかなければならない事象があり得ること,事故・トラブルの端緒ともなる無意識を意識に変えるために必要な気づき,その気づき力を高めるための科学的原理原則や過去事例に関する知見の重要性,そして気づいた事象の展開について整理してみた.
倫理は古来,人間が大切にしてきた.科学技術が人間生活に及ぼす影響の重大性から,科学技術の場合を,国民一般にわかるようにしたい.エンジニアの科学技術のものの見方は,そのまま法にも,倫理にも通用する.まず,「倫理」と「モラル」の2 語を選んで定義し,これで倫理について対話が可能になる.伝統的な黄金律,十戒,五倫の共通モラルと,現代のエンジニアの倫理規程とを分析し,科学技術のモラル10 原則を導く.アリストテレスほか,社会の指導層のエリートが説いた徳は,人格の完全性の指向だった.現代,科学技術に携わる者に求められるのは,科学技術,法,倫理の三元的統合の完全性の指向であり,実際に普通の技術者たちが,最善を尽くすなどの努力をして,高い品質や信頼性を実現している.科学技術という危険なものを安全に利用するには,それが必要なのだ.