安全工学
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59 巻, 6 号
安全工学_2020_6
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
会告
巻頭言
ICT と安全をつなぐ架け橋 特集
  • 北村 章
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 6 号 p. 353-361
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    IoT を活用した新産業モデル創出基盤整備事業 研究開発項目〔2〕IoT 技術を活用した新たな産業保安システムの開発 において,確率推論によって,プロセス異常検知情報とヒヤリハット(HH),およびその理論的背景となる理論オントロジーを用いて,時々刻々,比較的高い頻度で発生するインシデントや事故を想像するための事故予知システムを開発した.操業現場において,異常発報情報に基づくリアルタイム確率推論を行い,全HH 内で最も関連性の高い不具合や対策を「気づき」として提示した.熟練技術者によって「気付き」から想像される事故に関わるシナリオが作成された.熟練者の経験知に照らして,事故やインシデントを予測するための有効な手段であることを検証した.また,事故予知システムを継続的に用いることで,リアルタイムリスクアセスメントの可能性を見出した.

  • 若松 直哉
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 6 号 p. 362-367
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    近年,プロセス産業ではプラントの高経年化・増改造によるシステムの複雑化・熟練者の退職など,安全・安定操業の課題が共通の問題となっている.一方,マシンリソースやAI 技術の飛躍的な向上により,IoT・BigData・AI の活用がプラントの安全・安定操業の現実的な1 つの課題解決策として出てきている.今回はプラント操業分野におけるNEC のAI 技術概要を設備の持つ各センサ間が作る関係性に着目した「プラント故障予兆監視」を例に紹介する.また本技術を用い石油精製の実プラントでの約91 時間前の異常検知の例も紹介する. NEC は,今までプラントで充分に利用出来ていなかったデータに対してAI を活用することによって,高度保安(事故防止・稼働率向上・保全コストの低減・技術継承)の実現に貢献していく. 本紹介により,これまで安全・安定操業を支えてきた「熟練者による対応(現場力) 」 と「制御システムでの監視」に加え,「AI の導入・利活用」をご検討いただきたい.

  • 倉橋 節也
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 6 号 p. 368-372
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    本論では,統計処理では見出しにくい,発生頻度の低い事故予兆に関わる知識を獲得するための手法と実験例を紹介する.本手法は,プロセスデータから時系列解析手法を用いて作成したプロセスシミュレーションモデルおよびゲーミング&シミュレーション手法を用いて設計した.そして,実際に発生した事故を運転員が仮想体験することで,運転員自身がシミュレータを用いて操作したログや,ゲーミングを通して危機への対応策を議論した記録を分析する.実験の結果,シミュレータの操作から5 件の事故予兆となる新たなヒヤリハットを発見することができた.

  • 中田 亨
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 6 号 p. 373-378
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    事故の詳しい情報や教訓は報告書に自然言語の形で記録され,膨大な量が社会に蓄積されている.これらを活用できれば安全向上に大いに効果があるだろう.だが大量の自然言語データは統計処理が難しく,活用が進んでいなかった.本論文では,事故予防に役立つ知識を導き出す自然言語処理の技法を提案する.事故予防には,事故のパターンを把握することが必要となる.そこでは,事故の過程におけるシーンを計算機が自動的に抽出し,事故の進展過程でシーンがどのように遷移するかを把握する.また,被害無しで済んだヒヤリハットについて,それに最も類似する歴史的重大事故を検索し,あり得たかもしれない被害を知るという活用法もある.複数の報告を組み合わせることで未発生だが起こりそうな事故のリスクも指摘できる.本論文では,航空や石油精製での報告書データ集を題材にした実施例を紹介する.

  • 中原 正大
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 6 号 p. 379-384
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    高経年化した化学プラントに共通性が高く,かつ保安上重要な損傷現象である保温材下腐食(以下CUI と略す)について,実機の検査データとその関連情報を複数の化学会社より多量に収集し,機械学習を用いて解析して,CUI による破損発生可能性予測モデルを開発した.合わせて,実機での測定データを基に,保温材を剥離しない状態でのサーモカメラ撮影や中性子水分計での計測が,CUI のスクリーニング試験方法として適用可能であることを明らかにした.CUI 予測モデル等をWeb 上でデータを提供いただいた化学会社に公開し,その活用,普及を図った.これらの技術によりCUI 検査や管理にリスク評価を精度良く適用することが可能となり,設備管理の合理化やプラントの信頼性向上に寄与することが期待される.

  • 内田 充, 岡本 法円, 秋本 淳
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 6 号 p. 385-390
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    設備老朽化と熟練作業者の退職が進む製油所プラントにおいて,保安レベルの低下が懸念される.これに対し,急速に発展するデジタル技術の活用に向けて個社単位の取り組みが進められているが,業界の共通課題に対して個社が同じような取り組みを実施しており,業界全体からみて効率的な投資がなされていないこと,個社ではデータが不足している場合も多く,実用化可能な精度をもつ解析モデル構築に至っていないこと,などから十分な速度で普及していない.そこで,石油業界全体の保安レベルおよび設備稼働信頼性の向上を目的として,保安高度化システムおよび製油所データを業界全体で共有・活用する「製油所向けプラットフォーム(以下,PF と略する)」を開発した.また,PF の早期社会実装化を目指し,機能を絞り込んだPF 構築について検討中である.

  • 久郷 信俊
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 6 号 p. 391-399
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    近年,日本のプラント産業の共通の課題として漏洩による火災・爆発等の重大事故の増加がある.この課題解決のため,現行の設備管理のあり方を見直し,技術進展が目覚しいIoT・AI デジタル技術を活用した保安高度化が求められている.デジタル技術を合理的に活用するためには,リスクアセスメントより得られた重点管理項目を基に,適切なデジタル技術を計画・適用し,業務プロセスの中で運用することが重要である.また,特に老朽化配管は腐食漏洩管理が困難な設備であるが,腐食シミュレーション,オンライン配管肉厚監視センサーを活用し, 3D プラントモデル産業保安高度化プラットフォームで腐食状況を可視化・分析することにより,配管の網羅的腐食漏洩管理,検査点の最適化,状態監視保全を実現でき,将来的にはAI 分析により腐食予測・予知保全が可能なことを説明した.

  • 佐々木 秀智
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 6 号 p. 400-407
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    石油精製・石油化学プラントにおける設備の高経年化や人手不足,感染症リスクといった課題に対し,IoT/AI, ビッグデータ等を活用した,スマート保安による解決が期待されており,官民一体での取組みが進められている.これらのプラントでは,建設以来蓄積されている膨大な設備保全データがあり,データの利活用が進められている.本稿では,スマート保安に関する経済産業省の補助金事業「IoT を活用した新産業モデル創出基盤整備事業」において開発した配管内面腐食のAI 予測モデルの紹介を中心として,新たな課題として浮上した現場導入の問題点や,今後の取組みなどについて紹介する.

  • 増田 佳正
    原稿種別: 総説
    2020 年 59 巻 6 号 p. 408-415
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    デジタルIT 時代に特に日本で注目されるロボットについて,医療ロボットの分野でInternet of Things と連動したデジタルプラットフォームを実現するIoMRT(Internet of Medical Robotics Things)アーキテクチャーの仕組みを説明し,セキュリティ面と有効性も含め,世界での当分野の動向とアーキテクチャーの方向性をもとに,考察する.

論文
  • 相原 涼馬, ファマキンワ アヨ, 澁谷 忠弘
    2020 年 59 巻 6 号 p. 416-423
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,船舶用ディーゼルエンジンを対象として,潤滑油分析と機械学習アルゴリズムに基づく状態監視保全手法について検討した.実際に定常運航する大型船舶から潤滑油を採取,分析することにより摩耗に関連する元素濃度のデータを取得した.そのデータに対し,機械学習の一種であるガウシアングラフィカルモデルを適用することにより,先行研究同様に油内のFe 濃度に着目することに加え,油内のその他の元素との関係性に着目することによりこれまでの手法では検知できなかった摩耗状態の推定を行った.また,グラフの差を定量化した異常スコアの提案を行い,正常運転状態での航路の影響や摩耗モードの推定が可能であることを確認した.これらの結果より,既存の状態監視手法に比べ,一般性のある閾値設定の可能性や,既存手法では難しかった段階的な状態推定が期待できる.

技術ノート
  • 八島 正明
    2020 年 59 巻 6 号 p. 424-432
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    近年のガス切断等に関する労働災害の頻発を受け,労働安全衛生総合研究所では災害情報の収集とともに,現場のガス切断器具等の実態調査と回収調査を行った.本研究では,(一社)日本溶接協会の協力のもとで行った産業現場からのガス溶断器具の回収調査と測定について,乾式安全器の劣化・不具合についてまとめたものである.乾式安全器は50 事業所から燃料用79 個,酸素用31 個を回収した.使用年数は 3 ~21 年である.回収調査票を分析し,乾式安全器の性能測定を行った.性能測定では,外観検査,気密試験,逆流試験,遮断試験を行った.さらに性能測定で不具合があったものについては分解して内部を調べた.測定の結果,不具合が見られたのは3 ~4 年目からであった.不具合の件数として多いのは燃料用,酸素用とも逆流であった.

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