本稿では,セキュリティを語る上で基盤となる「インターネット」の歴史に触れ,脅威の根源となっている「マルウェアの変遷」について説明する.さらに,現在,複雑化する通信/ システムインフラやアプリケーションにより構成されるサイバー空間における脅威を概観する.最後に,概観した脅威に対抗するためのセキュリティ技術の全体像を概観し,将来に向けたセキュリティ技術のあり方,その方向性についても言及する.
心理的安全性とは,「関連のある考えや感情について人々が気兼ねなく発言できる雰囲気」のことで,人が適切にチームワークを発揮することに影響を及ぼしている.心理的安全性の欠如は事故の発生要因の一つにもなりうる.チームの中でメンバーは対人リスクを感じがちだが,心理的安全性はそれを緩和し,コミュニケーションなどのノンテクニカルスキルを促進する.また,心理的安全性によって,エラーの指摘行動やTwo-Challenge Rule の実践が促される.リーダーにはチームの心理的安全性を高める具体的な行動が期待される.
災害・事故等による化学物質の非定常排出に伴う一般環境への影響を推定する際,現実の事故の性質や規模を想定してシミュレーションを行うことが必要である.本研究では,その際の現実的なシナリオの構築を目的として,「毒物又は劇物の流出・漏洩事故情報」への届出データ(1999-2018 年)を用いて,毒劇物の事故時の環境影響と漏洩・流出量を整理した.大気への影響がある物質では塩化水素,アンモニア,塩素が,水域では水酸化ナトリウム,硫酸,塩化水素が多かった.漏洩・流出量の累積度数分布は対数正規分布に近かった.主要な物質について漏洩・流出量の平均的な値(50 パーセンタイル),ワーストケースと考えられる値(95 パーセンタイル)を算出し,例えば大気への塩化水素の場合,それぞれ240,11 000 kg と求めることができた.
ものづくり安全に関する調査研究対象として選択した熊本大学パルスパワー科学研究所の爆発衝撃実験施設は,危険度の高い爆薬を活用した衝撃成形実験等における事故防止を図る安全対策が講じられている.今日まで事故・災害の発生はない状況が続いているものの,リスク低減対策を講じてもなお残るヒューマンエラーが要因となる残留リスクが存在することも確認されている.更なる無事故の継続を目指し,現状の安全管理の取り組みと残留リスクを再調査し,新たに重点的・多面的なヒューマンエラーを考察したリスクアセスメントによる調査分析を行い,見える化等の有効的・実践的な対策検討手法など残留リスクの最小化を図る調査研究を行った結果を報告する.
使い捨て手袋は,実験室レベルの有機溶媒作業において保護具として頻繁に使用されている.しかし,用いられる素材の多くは親油性であり,有機溶媒を吸着・透過する.本研究では使い捨て手袋(ラテックス,ニトリル,ウレタン,サニメント(ポリエチレン))の有機溶媒(ヘキサン,トルエン,塩化メチレン,2- プロパノール)及びその蒸気の吸着・透過を検討した. その結果,ゴム手袋は有機溶媒の液体だけではなく,溶媒蒸気を吸着・透過した.特に塩素系有機溶媒は,良く吸着・透過した.
近年,地震,降雨,降雪,台風などの強風や洪水などの自然災害に起因して様々な被害が発生している.石油タンクなどの危険物施設についても例外では無く,これらの自然災害で少なからず影響を受け,場合によっては火災や危険物の漏洩などの甚大な被害が発生することがある. 危険物施設は消防法令の技術基準に従って設置されるため,自然災害に対しても一定程度の耐力はあるものと考えられる.しかしながら,過去の地震や台風などでも被害が発生している.本稿では,自然災害に起因する危険物施設の事故事例について紹介するとともに,事故対策についても述べる.
東京都の2020 年夏のCOVID-19 の感染拡大・収束傾向と日照時間および日平均湿度との相関を調べた.東京都の発表した新たな感染者の14 日間の移動平均(An:n は日数)を基に,感染拡大・収束傾向の指標(Bn)をBn =(An-2 -An)/ An と定義した.この指標Bn は,日照時間の14 日間の移動平均(Cn)および1 日の平均湿度の14 日間の移動平均(Dn)とよく相関していた.相関係数はそれぞれ-0.74 と 0.75 であった.この結果は,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の最外殻エンベロープの化学構造やその感染メカニズムと矛盾しない.新型コロナウイルスを含む飛沫あるいは付着飛沫を乾燥させることによりウイルスの感染能力を消滅させ,飛沫感染や接触感染を防ぐためには,公共性の高い屋内あるいは人の多い屋内空間においては,加湿よりも換気を行ない,空間を乾燥した状態に保つべきである.
福島原発事故発生時に,吉田昌郎所長を初めとする技術者達は極限状態における生死を賭けた判断と行動をした. 一つ目の事例として,ベント開放のために電源喪失時に真っ暗闇の建屋の中に突入した行動,二つ目の事例として,1,3,4 号機が爆発し2 号機も爆発寸前の状態ある危機的状態において現場に踏み止まった行動を取り上げ,事故報告書と吉田調書を基に,緊急事態発生時の技術者の判断と行動を検証する. 技術者達は自らの危険を感じながらも,技術・技能を有するが故に,「自分が対応しなければ,もっと悲惨な状況になる」という認識のもとに決死の行動を取った.それは技術者の「性(さが)」ともいえる.根底には,技術者としての誠実な行動とお互いの信頼があった. 問われていることは,「一人の技術者として,自分はどう判断行動するか」,「指導者として部下に指示を出せるか」である.