安全工学
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61 巻, 6 号
安全工学_2022_6
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会告
巻頭言
水素利用技術の社会実装と安全 特集
  • 社会インフラシステムとしての水素システム
    野口 和彦
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 378-383
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    社会の重要インフラシステムは,そのシステムの有効性・必要性があるという視点だけでは,社会実装がなされるわけではなく,その推進を確かなものにするためには,自分のシステムの持つ様々なリスクや課題について体系的に整理を行ない,その対応を社会実装に先立って考えておく必要がある. 本論は,水素システムの社会実装のための検討事項を,社会インフラシステムとしてのエネルギーシステムの社会実装を行なう際の検討フレームとして整理し提案するものである. 検討フレームは,エネルギーシステムの1.安定供給の視点,2.地球温暖化対応の視点,3.産業としての視点,4.地域・社会制度の視点,5.その他の5つの視点で整理している.

  • 風間 とも子
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 384-389
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    アンモニアは,燃焼してもCO2 を排出しないゼロエミッション燃料であるのに加え,高効率水素キャリアとしての活用検討も進んでおり,エネルギーの脱炭素化と安定供給を両立できる物質として大きな役割が期待されている.本稿では,アンモニア製造設備の安全上のリスクを解説し,効果的なリスク低減策及び管理手法を体系的に整理する.

  • 相馬 一夫, 玉村 琢之, 中島 康雅, 水向 健太郎, 平井 宏宜, 中島 康広, 新井 祐介, 横山 清英, ワイルド ソニア
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 390-395
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    2030 年以降の目論見である商用水素サプライチェーンの実現に向け2016 年に岩谷産業(株),川崎重工業(株),シェルジャパン(株),電源開発(株)の4 社にて技術研究組合CO2 フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)を設立し,NEDO の課題設定型産業技術開発費助成事業「未利用褐炭由来水素大規模海上輸送サプライチェーン事業」の採択を経て現在実証試験を推進中である.本稿ではHySTRA の活動の概要並びに安全に関する取り組みを紹介する.

  • 岡田 佳巳, 佐久間 敦宏, 仁平 雅之, 河合 裕教, 三栗谷 智之, 鍛冶 尚弘, 兵藤 伸二
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 396-401
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    当社では,2002 年に水素キャリアの検討を行って最も安全で安価なシステムになり得る方法としてメチルシクロヘキサン(MCH)を液体有機化合物キャリア(LOHC,Liquid Organic Hydrogen Carrier)に用いる有機ケミカルハイドライド法を選定して開発を開始した.2014 年にプロセスの技術確立実証を完了してSPERA 水素TM システムと命名している.その後,2020 年にNEDO プロジェクトとして世界に先駆けた国際間の大規模水素貯蔵輸送実証を成功裡に完了して商業化段階に移行している.本稿では有機ケミカルハイドライド法の概要と特長,およびSPERA 水素TM システムの安全性について紹介する.

  • 岡田 佳巳, 伊藤 正, 河合 裕教, 三栗谷 智之, 長井 雅史
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 402-407
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    当社では2002 年より開発を開始した大規模水素貯蔵輸送技術をSPERA 水素TMシステムと命名した. 2020 年にNEDO による国際間の大規模水素貯蔵輸送実証を成功裡に完了して商業化段階に移行している. 一方,2015 年よりこのシステムを適用した水素ステーションの開発を実施している.本稿では, 有機ケミカルハイドライド法の概要と特長, 本法を適用した水素ステーションの概要, 規制に関する現状,及び当社が開発しているSPERA 水素TM型ステーションの安全性について紹介する.

  • 二宮 貴之
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 408-414
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    2050 年のカーボンニュートラルに向けた水素社会の実現に不可欠な水素インフラの一つである水素ステーションについては,現在,商用ステーションが約160 箇所運営されている.また,第6 次エネルギー基本計画では,2030 年に1,000 箇所の目標が掲げられている.82 MPa という超高圧の水素を取り扱う水素ステーションの設備の特徴や水素の特性を示した上で,水素ステーションを市街地に設置することを可能とした高圧ガス保安法や一般高圧ガス保安規則等の規制の体系とその中で求められる安全対策などに関する技術基準について説明する.その上で,事業者の建設費や運営費の軽減に直結する規制の見直しに関して,NEDO 事業で取り組んでいる各種技術検討の内容とその成果を活かした規制見直しの実例などを紹介する.

  • 壹岐 修治, 岡野 雄生
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 415-421
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    日本政府はカーボンニュートラルの実現に向け,燃料電池自動車(FCV)に水素を供給する水素ステーション(ST)を2030 年までに国内に1 000 カ所程度整備する目標を設定している.現在は全国で161 カ所の水素ST が運営され,ENEOS はその内の47 カ所を営業している他,2022 年度内に新たに3 カ所の開所を予定している. 水素ST に適用される保安法令には高圧ガス保安法があり,これを遵守する他,ENEOS では自主保安としてリスク評価に基づく設計,建設および保全活動を行い,安全性を確保している. 水素ST では超高圧・極低温の水素を取り扱っており,建設費・運営費とも高額になる.また,FCV が十分に普及していないことから,補助金等がなければ事業性を確保できない状況にある.政府目標を達成するためには商用車向けの水素ST の整備や,法規制の合理化と合わせた建設費・運営費の削減が必要である.

  • 田村 陽介
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 422-426
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    燃料電池自動車をはじめとする水素モビリティに関わる新技術の発展と社会実装に向けて,社会的受容性の醸成に向けた安全情報の発信が必要である.本稿では,水素モビリティを安全に利用するための取り組みの一貫として,交通事故や火災におけるファーストおよびセカンドレスポンダーの安全な事故後処理対応について,実際の事故処理の事例を加え,(一財)日本自動車研究所が実施したこれらの課題に関連する以下の研究結果を概説する. ①水素漏洩車両に対する安全な手段 ②事故後容器の脱ガスの対応 ③火災後の複合容器の残存強度

  • 中山 穣, 久野 博史, 清水 泰博, 三宅 淳巳
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 427-433
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    福島県浪江町は東日本大震災により甚大な被害を受け,街の復興に向けて水素を街中のエネルギー源として積極的に活用することを計画している.水素利用の方法の1 つとして,著者らは令和2 年度より水素柱上パイプラインの実証試験を継続し,水素柱上パイプラインを活用した燃料電池装置への水素供給試験,概念設計段階におけるリスク分析,パイプラインのメンテナンス手法を検討してきた.本稿は,それらの結果を概説した.

  • 遠藤 智友樹
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 434-440
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    近年,新たな移動体としてドローンが注目を集めている.一方,エネルギー分野ではカーボンニュートラル達成の切り札として水素への期待が大きく,使用例としては燃料電池が挙げられる.この燃料電池をドローンに搭載することで,水素を動力源とする水素燃料電池ドローンの飛行が可能となる.水素燃料電池ドローンはリチウムイオン電池を主な動力源とする従来型のドローンと比較すると,飛行特性が飛躍的に向上する.しかし,従来のドローンは主に航空法の規制を受けていたが,高圧水素を充塡した容器を機体に搭載する水素燃料電池ドローンは,新たに高圧ガス保安法の規制対象にもなる.本稿では令和元年度に実施された委託事業と,その事業成果を反映したガイドラインに沿って,水素燃料電池ドローンの容器に要求される内容について,高圧ガス保安法の観点から解説を行う.

  • 加野 友紀, 藤井 孝志, 徂徠 正夫
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 441-447
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    CO2 地中貯留は水素利用技術と並んでゼロエミッション戦略において重要な柱となっている.一方で,安全・安心なCO2 地中貯留の実施に向けてはリスクの認識が重要である.このようなリスクとして,CO2 の貯留量を左右する地下の不確実性の問題に加え,地下に圧入したCO2 の漏洩・漏出による健康や地下/海洋環境・資源への影響,温暖化抑制効果の毀損等が挙げられる.このため,サイト選定時のサイト特性評価や圧入停止後の継続したモニタリングの必要性,また長期に渡る地域・国際的事業として法整備の必要性が特筆される.本稿ではCO2 地中貯留に係る各国の法規および国際的枠組に加え,特にその実施に際して不可欠となる岩石力学・水理学的観点からのサイト特性評価および漏洩・漏出に係る長期モニタリングについて現況を紹介する.

  • 立川 徹, 南條 敦
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 6 号 p. 448-454
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル 認証あり

    ・ エネルギー政策の要諦である,安全性を大前提としエネルギー安全保障,経済効率性,環境適合性を目指す「S +3E」のもと,カーボンニュートラル社会を実現するためには,脱炭素燃料である水素をエ ネルギーとして大量活用することが必須. ・ 水素は,電化で対応できない熱利用の分野や再エネ電源主力化で拡大するエネルギー需給ギャップの調整さらには貯蔵によるエネルギー安全保障にも有効. ・ 水素利用を2030 年300 万t/ 年,2050 年2 000 万t/ 年に拡大するには,安価な海外の再エネ電源由来の水素の輸入は有力なオプションの一つ. ・ 水素の貯蔵,輸送には水素キャリアが必要.既存のインフラを活用できるMCH,インフラコストが課題の液化水素,有毒性が最大の課題のアンモニアが候補. ・ 水素のエネルギー利用に向け,水素の特性を踏まえたリスクベースの分かりやすいワンストップの保安体系が必要であり,水素の利用促進と保安について規定した水素事業法の制定を提言する.

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