安全工学
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61 巻, 1 号
安全工学_2022_1
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
会告
安全への提言
皮膚傷害耐性の標準化 小特集
  • 山田 陽滋, 秋山 靖博, 藤川 達夫, Nader Rajaei
    原稿種別: 総説
    2022 年61 巻1 号 p. 2-6
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    現在,機械安全の枠組みで,人間と機械の可動部が直接接触する際の安全データとして,人間の痛覚水準および軽度傷害水準の耐性値を規定し技術報告ISO/ TR 21260 にまとめつつある.これを背景として,今度はその試験方法を国際標準とすべく,「皮膚傷害耐性の計測方法に関する国際標準化」の事業を展開してきた.本稿では,まず皮膚傷害耐性の標準化の必要性および,本事業に参画する研究開発機関それぞれの役割および相互の関係について述べる.つぎに,本事業で開発する試験方法のターゲットである皮膚傷害耐性水準の安全データおよびそれらの単位について紹介する.さらに,これらの傷害耐性に基づく安全検証実験の方法について説明を行い,実験結果および考察を示した.そして最後に,皮膚傷害耐性の計測方法として提案すべき試験方法の規定を行い,戦略的な標準化の道筋に言及する.

  • 宮崎 浩一, 山田 陽滋
    原稿種別: 総説
    2022 年61 巻1 号 p. 7-8
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    2018 年から2020 までの3 か年で実施した皮膚傷害耐性の計測方法に関する戦略的国際標準化事業の背景・目的及びその狙い,また研究開発成果をもとにした標準化活動等について紹介する.

  • 杉浦 隆次, 西本 哲也
    原稿種別: 総説
    2022 年61 巻1 号 p. 9-14
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    ヒトと機械の共存社会では,機械との物理的接触によってヒトに傷害が発生することが予想される.また,この傷害発生リスクを低減させるための最も有効な手段は,機械側の出力エネルギーを制限することであり,これには人体における発生傷害の特定とその耐性評価が重要となる.本研究では,倫理委員会の許可を得たうえで,代替動物を用いたin vivo 衝撃実験を行い,皮内出血の耐性評価を実施した.その結果,内部ひずみエネルギーを耐性評価指標とすると,脚部の皮膚および皮下組織の内出血が観察された最小値は9.9 kJ/m2 となり,腹部の皮膚および皮下組織の内出血が観察された最小値46.8 kJ/m2 に比べ低く,脚部は腹部に比べて出血しやすいことがわかった.また,この脚部の皮内出血に関する内部ひずみエネルギー9.9 kJ/m2 は,ISO 21260 のヒトと機械の動的接触における安全基準値に採用されている.

  • 樋口 友樹, 山本 義洋, 浅野 陽一, 佐藤 房子
    原稿種別: 総説
    2022 年61 巻1 号 p. 15-19
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    ヒトと同一空間で作業を行うロボットの安全性を確保するため,ロボットの接触による人身被害を低減させる対策を予め講じる必要がある.ロボットの安全対策において,その要求事項は傷害耐性に基づき検討されるべきであるとし,これまでに軽度傷害の耐性として皮下出血耐性が実験的に検討されてきた.本稿では,皮下出血耐性を皮膚や脂肪といった軟組織に発生するひずみや応力で評価すべく,生体ブタを供試体とする準静的・動的圧縮実験に基づき開発したブタ大腿部の有限要素モデルについて報告する.

  • 島岡 優策, 岡本 球夫, 渡邊 竜司, 山田 陽滋
    原稿種別: 総説
    2022 年61 巻1 号 p. 20-24
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    人と,ロボットなどの機械とが直接接触した際における重篤度の比較的低い痛みや内出血といった軽度な皮膚傷害の耐性値に着目した計測方法の国際標準化に向けて取り組んでいる.筆者らはこれまで,痛みまでを評価できる人体の構造を模したダミーを開発し,準静的速度での接触時における人体に近い生体再現性を有することを示してきた.さらに,痛みだけでなく,軽度な傷害が発生するレベルの機械的な刺激に対する安全評価を目指している.近年,軽度な皮膚傷害耐性を評価するダミーとして,より重要となる動的速度での接触時においても生体再現性を有することを示すことができた.現在,本ダミー技術の普及に向け,高い生体再現性を有したまま簡易化した評価器の構成についても提案しており,これらの活動内容について紹介する.

総説
  • 柴田 高広, 高橋 久実子, 冨士岡 加純, 田中 良明, 加藤 新一
    原稿種別: 総説
    2022 年61 巻1 号 p. 25-28
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    現代社会では,AI,ビッグデータ,ロボット等の技術発展・活用拡大により,多くのシステムの価値創出機能がハードウェア中心からソフトウェア中心へ移行すると共に,異なる機能を持つシステム同士が「繋がる」ことで高付加価値化を目指している.一方,システム同士が「繋がる」ことにより,システム全体は複雑化し,新技術の社会実装におけるリスクが格段に増大する.そこで,本稿では社会全体での安全確保の在り方を「安全ガバナンス」と称し,現代のいくつかのトレンドを概観し,新技術の導入において課題となるリスクへの対応の在り方を考察する.

  • 貴志 孝洋
    原稿種別: 総説
    2022 年61 巻1 号 p. 29-34
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    平成28 年6 月から,労働安全衛生法に基づき,一定の危険有害性を有する化学物質(令和3 年6 月現在674 物質)を製造あるいは取扱う「すべての」事業者は,化学物質のリスクアセスメントを実施することが義務化されているところ,危険性のリスクアセスメントは一定の専門知識を要することから,特に第三次産業を中心に適切なリスクアセスメントの実施が難しい状況にある.ここでは,危険性を対象とした適切なリスクアセスメント実施の一助となるよう,厚生労働省が開発・公開しているリスクアセスメントを支援するツールを中心に詳細を紹介する.

論文
  • 玉手 聡
    2022 年61 巻1 号 p. 35-44
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では建設業における労働災害について発生数の推移とその状況分析からさらなる災害防止に必要な課題を考察する.建設業における労働災害は1961 年から2020 年までの59 年間に死亡災害は1/10 に減少した.この値は全産業の1/8 よりも減少率は高いものの就業者数に対する建設業の死傷危険度は全産業よりも1.6 倍高く,死亡危険度に至っては4.5 倍高い.また,法違反の状況を見ると建設業では安全基準に関する違反が全体の43%を占めその値は製造業よりも3.5 倍多い.したがって,建設業では全産業よりも災害は減少しているものの重篤度の高い事故が依然多い特徴がありその値には法違反に占める安全基準の割合との類似が見られた.さらに,災害事例を分析すると建設業では「墜落,転落」「激突され」「崩壊,倒壊」「飛来,落下」といった事故が多い.その事故は工事現場で発生しており労働環境には「工事用仮設」という共通点が見られた.他の産業が常設の屋内設備の中で仕事をするのに対して建設業では仮設の屋外設備で仕事をする.本論文では国から公表されている資料の分析に基づいて建設業におけるさらなる災害防止のための課題を整理する.

  • 遠藤 雄大
    2022 年61 巻1 号 p. 45-52
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    液体取り扱い時の静電気帯電は危険物施設の火災原因にもなり得るが,IEC TS 60079-32-1:2013 では酢酸エチル及び酢酸イソプロピルが強く帯電することが指摘されている.これらと構造が類似した他の酢酸エステルも同様に強く帯電する可能性がある.そこで本研究では,4 種類の酢酸エステル(酢酸メチル,酢酸イソプロピル,酢酸エチル,酢酸ブチル)について,噴霧帯電量を測定しこれらの危険性を評価した.その結果,4 種類の酢酸エチルの比電荷は5 μC/kg 以上であり,先行研究で確認されている各種液体の比電荷と比較しても大きく,接地等の災害防止対策が徹底されていない状況であれば少量の噴霧でも着火事故を起こし得ることを確認した.また,噴霧ノズルに電極を装着しこれに電圧を印加する方法により,導電率10-6 S/m 以上の高導電性液体では顕著な噴霧帯電量低減効果が得られることを確認した.

資料
  • 事業エリアが広域にわたる鉄道事業者に適したリスク評価手法の開発
    吉留 和宏, 齊藤 綾, 榎原 俊太, 寺田 和嗣
    2022 年61 巻1 号 p. 53-57
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    当社の事業エリアは,関東・甲信越・東北地方の広域にわたり,鉄道を中心とした事業を地域特性ごとや技術分野ごとに分けて管理している.このように事業エリアが広域にわたる鉄道事業者において,リスクアセスメントを実務的に実施しようとすると,さまざまな課題を克服しなければならない.著者らはこれらの課題を克服しながら,リスク基準に関わらず,リスク値をリスクの大きさに応じて段階的なレベルに効率的に区分し,可視化することができるリスク評価手法を開発した.また,リスク特定手法とリスク分析手法に関する著者らの先行研究における研究成果に基づいて算出された,延べ約9 000 のリスクシナリオのリスク値に対して,本リスク評価手法を適用した.これにより,本リスク評価手法が実務的に活用できることを確認した.

図書紹介
我が社の環境安全活動
研究活動紹介
  • 西岡 朝明, 橋本 義平
    2022 年61 巻1 号 p. 70-73
    発行日: 2022/02/15
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    (公社)日本技術士会の会員(技術士,技術士補)を主たる構成員として長年活動を続けている(公社)日本技術士会登録技術者倫理研究会(通称:技術者倫理研究会,https://engineeringethics-studygroup. jimdofree.com)というグループがある.技術者倫理の啓蒙の時期は過ぎ,今ではそれを如何に実践するかが技術者に求められており,その実践には自分が専門とする技術的能力に加えて,さらに豊富な学際的な能力による裏付けを必要とされる.技術者倫理研究会では技術者の倫理実践の体験や知恵をシェアする多様な機会を提供することで,技術者が実践への意気込みを持ち,さらには身近の同僚や次の世代にもそれを伝えることを支援している.本記事ではその活動について紹介する.

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