安全工学
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61 巻, 2 号
安全工学_2022_2
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
会告
安全への提言
総説
  • 杉本 泰治, 森山 哲, 福田 隆文
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル 認証あり

    政府による規制(規制行政)は,科学技術の安全確保の成否のカギをにぎるが,エンジニアにはわかりにくい.事故の法には,事故が起きないようにする規制の法と,事故が起きてからの損害賠償の法とがある.損害賠償の法は早くから発展したが,規制法は後れた.規制法は制定されるが,それを解釈し実施に移すところの法学が,空白だった.空白が続いた原因は,法学が専門別に分化していること,法学が研究資源の多くを裁判の判例に依存すること,などがある.近年ようやく,判例に代わり,社会観察にもとづく研究によって,根本的な解明が進んでいる.本稿は,その延長上で,安全確保の規制行政の枠組みを明らかにする.合理的な規制行政の観点から取り組むべき課題は,多様であり,無限といってよいほどの広がりがあり,その一つに,法教育のあり方がある.

  • 伏脇 裕一
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル 認証あり

    近年,欧米諸国を中心に世界的に除草剤として大量使用されているグリホサートについて,その性状,環境汚染および食品汚染例とヒトへの健康影響などの毒性について考察した.外国産の農産物を使用した食品のグリホサート汚染が顕著に見られた.また,グリホサートの毒性には発がん性や発達期の脳への影響が指摘されている.さらに,グリホサートの散布に伴う問題点や課題について言及した.

  • ―豊かな技術社会共創のための方法論―
    瀬谷崎 裕之
    原稿種別: 総説
    2022 年 61 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル 認証あり

    技術は不可能を可能にし,経済を発展させるとともに社会の利便性や経済効率を格段に高めてきた.一方で,技術の負の側面が顕在化しつつあり,米国では技術が経済格差の主要な要因とされ,テクノロジー失業の懸念が高まっている.2020 年の米国大統領選ではSNS が社会の分断を助長し,日本でもインターネット上でのコミュニケーションは誹謗中傷やキャンセルカルチャー,犯罪利用などの社会問題を引き起こしている.生命科学分野では1990 年代から倫理的・法的・社会的課題(ELSI)研究が開始され,近年では,情報技術,人工知能など幅広い新技術分野でその重要性が認識されている.本稿では社会課題を含めて広く課題解決に活用されつつあるU 理論を紹介するとともに,ELSI 分野での利用可能性を検討する.

論文
  • 八島 正明
    2022 年 61 巻 2 号 p. 102-112
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究では3 種類の大きさのMgH2 粉(Dv,50:18,40,72μm)の燃焼性を調べた.実験の結果,爆発下限濃度は25 ~60 g/m3,MIE は2.1 ~24 mJ,堆積状態での発火温度は370 ~390℃であった.浮遊粉じん状態での発火温度は500 ~580℃で,比較のため用いたMg 粉のそれの610℃よりも低かった.熱面での発火では,水素の脱離後にMg 粉が先に発火し,その後,粉体層に滞留していた水素と空気の予混合気に引火する.また,Mg 粉の発火については,脱離する水素により保護的な酸化膜が粉体内側から破壊されることで,新生面で酸素と反応しやすくなり,発火に至ることが考えられた.発熱性に関して,雰囲気温度に対する水分の影響を調べた結果,少なくとも50℃よりも低い温度で保管すべきであることがわかった.

  • 山﨑 修一, 市川 祐嗣, 荻田 将一, 石原 達己
    2022 年 61 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    温室効果ガスへの影響が大きいCO2 排出量の低減に寄与するエネルギーキャリアーとして,水素が注目されている.その効率的な供給形態のひとつとして,パイプラインを用いた水素導管供給システムがある.ただし,当システムの普及を考えると,水素漏出による事故発生のリスクが考えられ,その保安確保が重要な課題である.これまで,実運用を想定した埋設配管からの水素漏出時の地中拡散,および地表へ達した後の大気拡散までを一貫して評価した例は少なく,保安リスクの検討が強く求められている.本研究では,実験を通して埋設配管からの水素漏出時の拡散挙動に関する基礎的な知見の整理を行い,適用可能な解析手法を提示した.本知見は,今後パイプラインによる水素導管供給システムの保安リスク検討時に大いに活用できるものと期待される.

  • ―作業者の経験年数と年齢分布の解析―
    渡辺 純哉
    2022 年 61 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    製造業における機械等による「はさまれ,巻き込まれ」災害件数は最多である1).重篤な後遺症の残る「はさまれ,巻き込まれ」休業災害や死亡災害を減らすためには,重点的かつ優先的な対策が求められる.機械等による労働災害防止に関しては,機械設備の保護方策や作業者のヒューマンファクターに関する研究例が多い.また,厚生労働省報告書2)~5)によると,経験年数の短い作業者の災害件数は多く,その中には,若年齢層だけでなく中高年齢層も含まれている.本稿では,経験年数の短い作業者の「はさまれ,巻き込まれ」災害に着目して,年齢層と労働災害要因について多変量解析を行った.その結果,災害要因は,年齢層によって違いがあることが明らかとなった.労働災害防止対策の一つとして,経験年数の短い作業者の年齢層にも配慮した教育や指導が必要である.

  • 崔 光石, 崔 旻, 長田 裕生, 鈴木 輝夫
    2022 年 61 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,3 種類の放電電荷量測定方式(EN 方式,IEC 方式,JNIOSH 方式)を用いて,その放電電荷量の検出特性について調べた.また,3 種類の内のJNIOSH 方式(市販用電圧プローブと100 Ωの無誘導抵抗の使用)を用いて,双極性除電器からの異常放電における放電電荷量とその着火危険性について調べた.結果より,各方式において測定された電荷量はほとんど同じであり,いずれの方式も異常放電の電荷量測定には適合していることがわかった.ただし,最も電荷量測定値のばらつきが小さいのは,JNIOSH 方式であった.また,JNIOSH 方式のプローブを用いて双極性除電器の異常放電から得られた放電電荷量Qm(絶対値)は,EN 規格の着火リスク管理値の30 nC(絶対値)を超えていない.これらのことから,双極性除電器は,プロパンガスと空気の混合雰囲気が存在する現場でも着火することがない非常に安全なものであることが示唆された. しかし,除電器の放電針からコロナイオンの生成が抑制された場合には,最大値(絶対値)は,-32.38 nC となり,安全なレベルではない。従って,除電器のコロナ放電イオンの生成が阻害されることがないように定期的なメンテナンスなどの管理が必要である.

  • 大塚 輝人, 持田 智, 古谷 隆志
    2022 年 61 巻 2 号 p. 141-148
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    爆発災害を未然に防ぐため,着火源と爆発性雰囲気を隔離する必要がある.空間的な隔離を確立するために,爆発性雰囲気が存在する可能性がある場所を,危険箇所として指定し,そこで使用する機器をリスクアセスメントに応じて防爆機器にすることで電気機械器具が着火源となることを防いでいる.本稿では,危険箇所を判定する際に定性的な表現で示されている換気有効度について,可燃性ガスの放出,希釈,換気に関わる機器の故障率を考慮することで機能安全の考え方を導入し,機器が正しく動作する時間からゾーンを算定する方法を提案した.機器の平均故障率と関係づけることで換気有効度の定量化を可能にした.

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