安全工学
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特集号: 安全工学
27 巻, 6 号
安全工学_1988_6
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
環境問題特集
  • 長谷川 慧重
    原稿種別: 総説
    1988 年 27 巻 6 号 p. 316-320
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

    戦後の高度経済成長に伴い,環境汚染が進み水俣病,ぜん息などの疾病も発生した.この背景には高密度経済社会,重化学工業化などわが国特有の事情があった.

    これらの公害に対して,工場排水,ばい煙など個々の規制法が制定され,社会資本の筆備が計画的に進められた.また,公害対策基本法が制定され,発生源規制に限らない総合的対策が図られ,さらに,法体系の抜本的整備,環境庁の設立など環境行政はしだいに進展した.

    近年,オゾン層保護対策など環境問題は多様化し,新たな視点に立った環境行政が求められている.

  • 及川 紀久雄
    原稿種別: 総説
    1988 年 27 巻 6 号 p. 321-327
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

    半導体工業や新素材関連工業などの先端技術産業は高度情報化が進むなかでめざましい発展をみせている.

     しかし,それらの生産のために有害性や危険性の高い多種の化学物質が,種々の利用形態で用いられているため,その安全管理への関心が急速に高まっている.

     実際のトリクロロエチレンなどによる地下水汚染やシランなどによる災害事故の実例にふれながら,汚染防止や安全のための対応について考える.

  • 大喜多 敏一
    原稿種別: 総説
    1988 年 27 巻 6 号 p. 328-335
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

     地球規模環境問題の視点,フロンガス問題の経緯,成層圏オゾン層内の反応とオゾンの減少,フロン濃度の変化の現状,成層圏オゾン層の変化のモデル予測,オゾン層の観測,微量ガス濃度の増加による地球の温暖化,紫外線の人の健康・生態系などへの影響,オゾン層保護条約とわが国の対応,フロンの大気放出抑制対策につき総説した.

  • 花井 義道
    原稿種別: 総説
    1988 年 27 巻 6 号 p. 336-343
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

     都市ごみ焼却施設で発生するダイオキシンなどの塩素化合物の生成過程について調べた結果,これらは炉ではなく主として電気集じん機で生成されること,塩素化は灰中で末燃の有機物と吸収された塩素が反応して進行することがわかった.塩素化反応は,炉の排ガスを急冷し低温(150°C)で集じんすることによって大幅に抑制することができた.また,灰に残存する塩素化合物は密閉容器内で500°C以上に加熱すれば,ほぽ完全に脱塩素化されることがわかった.

  • 金沢 純
    原稿種別: 総説
    1988 年 27 巻 6 号 p. 344-353
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

     農薬の農耕地より水系への流出率はその溶解度と相関がある.水田,河川,湖沼水の農薬による汚染実態を紹介した.汚染は使用時期をピークとする一過性で通年にわたるものは少ない.農薬の魚介類に対する毒性を概説した.殺虫剤は一般に昆虫と閉じ節足動物である甲殻類に特に毒性が高く,海水生物の中に淡水生物に比べて農薬に感受性が高いものがある.わが国における農薬による水産被害を紹介し,その防止対策を述べた.農薬の魚介類に対する毒性評緬には試験生物の種類を増やす必要がある.

  • 平野 浩二
    原稿種別: 総説
    1988 年 27 巻 6 号 p. 354-359
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

     水質汚濁防止法施行以来, 15年間に工場などの排水は,処理施設の整備とその維持管理技術の向上により改善されてきた.しかし,この数年,処理施設の老朽化などにより,悪化の傾向が認められる.一方,生活排水による公共用水域の汚濁が進む中,本県においては,相模湖および相模湾における富栄養化の進行が問題となり,それらに流入する生活排水の処理方法,特に窒索・リンの除去法について研究を進めている。また,近年,有機塩素化合物による水域環境汚染が社会的な問題となるに伴い,その実態調査を行っている。

  • 村田 徳治
    原稿種別: 総説
    1988 年 27 巻 6 号 p. 360-366
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

     産業廃棄物が抱える諸問題を法律面と技術面の両面から検討した.法律面では産業廃棄物と一般廃棄物との分類.19項目に分類された産業廃棄物の問題点,有害廃棄物の判定基準に対する溶出試験の問題点,廃棄物埋立地と跡地利用の問題点などがあり,技術面では有害廃棄物の処理技術として最も普及しているセメント固化法の安全性に関する問題点についてふれた.また,増加傾向にある未規制有害物質問題と実態不明の海洋投棄について若干の問題点指摘を行った.

  • 手塚 眞
    原稿種別: 総説
    1988 年 27 巻 6 号 p. 367-372
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

     排煙中に含まれる窒素酸化物(NOx)を除去する脱硝方法は,乾式法と湿式法に大別され,原理的には種々の方法が考えられている.ここでは,発電用ポイラの排煙脱硝装置として実績の多いアンモニア選択接触還元法を中心に,脱硝反応の原理,装置の構成,触媒と脱硝性能,性能の維持および性能管理としてとられている方法などについて述べた.

  • 加地 浩成
    原稿種別: 総説
    1988 年 27 巻 6 号 p. 373-379
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

     ディーゼル機関の排出ガス中にはガソリン機関と比べて多くの粒子状物質が含まれている.その中には燃焼過程で生じる多種類の多環芳香族炭化水素あるいはニトロアレーンが含有されていることが知られ,その健康影響が懸念されていることもあり,多くの研究によりその存在状犯が明らかにされつつある.

     ディーぜル機関の排気浄化対策としては燃料面,エンジン技術,後処理など各方面からさまざまな試みが行われている.

  • 荒井 真一
    原稿種別: 総説
    1988 年 27 巻 6 号 p. 380-386
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

     有機金属化合物の一種である有機スズ化合物は,塩化ピニJレ樹脂の安定化剤などとして広く利用されているが,なかでもトリプチルスズ化合物は生物に対する活性があるため,船底用の防汚塗料や,漁網防汚剤として使用されている.近年, トリプチノレスズ化合物による環境汚染が国際的に注目され,環境庁では魚介類などの調査を行っている.その結果,現在の汚染レベルがただちに危険な状態にあるとは考えられないが,今後とも環境汚染の状況を監視していくことが必要であると評価されている.環境汚染対策として,法律的な規制の一部導入や養殖用の漁網防汚剤の自主的な使用禁止が行われている.さらに,現在,毒性や汚染実態などの調査が実施されており,今後,その結果により必要な対策がなされることとなっている.

  • 槌田 博, 加藤 龍夫
    1988 年 27 巻 6 号 p. 387-393
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

     水田,森林,畑地にお防る大気濃度の測定を数多く実施し,そのデータを基にして農薬の大気汚染を明らかにし,濃度水準を求める方法を試みた.殺虫剤MEP,BPMC,殺菌剤PCNBについて散布後数日ないし1年にわたり,数kmから十数kmの範囲で実験した結果,濃度の確率度数分布を得ることができ, 1μg/m3の汚染が普通的である事実を示した.また,農薬の大気汚染はいったん地表に付着した農薬が揮発する己とによって発生し,温度,風,地形などの条件に従って長期間,広範囲に大気汚染を形成する性質を確認した.

  • 中川 良三
    1988 年 27 巻 6 号 p. 394-400
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

     1979年9月から1988年7月の9年間にわたり,千葉市において雨水を採取した.降雨回数352回で総降水量8562mm であった.雨水のpH は3.5~7.5(全平均値5.1) であった. pH 5.6以下の雨水を酸性雨と規定するならば.352試料のうち260試料,総降水量の83%が酸性雨であった.酸性雨は春季降雨回数の69%,降水量の76%,夏季降雨回数の76%,降水量の81%.秋季降雨回数の82%,降水量の93 %.冬季降雨回数の65%,降水量の76%であった.酸性雨のうち90試料,総降水量の22%が魚の生殖を停止するといわれている限界pH値4.6以下であった.特に,低pH雨水は,夏季に集中しており, 夏季降雨回数の41%.夏季降水量の29%がpH4.6以下であった.酸性雨の成因といわれる雨水中の硫黄と窒素酸化物の当量組成比は99%以上がSO42->NO3-であったが,比較的低pHの雨水の酸性化はNO3- に依存すると推定された.

  • 関本 善則, 大塚 尚寛
    1988 年 27 巻 6 号 p. 401-407
    発行日: 1988/12/15
    公開日: 2020/03/28
    ジャーナル フリー

     スパイクタイヤ粉じんの発生の実態、を把握する目的で,盛岡市を調査対象として,道路粉じんの採取分析を行った.その結果,冬期に発生増加する道路粉じんは,粒径の大きなものが多しこれらの粒径範囲の粉じんには,道路舗装材中の骨材や路面標識の白線に由来するFeやCaが多く含まれているが,健康影響が最も懸念された発がん物質ベンゾ(a)ピレンはほとんど含まれていないことがわかった.また,発生源の寄与率を算出した結果,冬期における道路粉じんの発生増加は,スパイクタイヤによるアスフアノレト舗装材の摩耗ばかりでなく,道路端堆積物の再飛散に由来するものもかなりの部分を占めることが明らかとなった.

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