安全工学
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特集号: 安全工学
50 巻 , 6 号
安全工学_2011_6
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
会告
巻頭言
東日本大震災特集
  • 古村 孝志
    2011 年 50 巻 6 号 p. 354-359
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    地震計や津波計データから明らかになった,東北地方太平洋沖地震の実体は,これまでの地震学の常識を覆した.これまで,プレートが沈み込む海溝付近では通常大地震を起こすような歪みは溜まらず,まれにプレートがゆっくりとズレ動き津波地震となると考えられていた.ところが,宮城県沖のプレート境界深部から始まった今回の地震のズレ動きは,勢いを増して海溝付近の浅部プレート境界にまで達し,跳ね上がるように50 m 以上も大きく動いた結果,巨大津波を発生させた.こうした,通常の海溝型地震と津波地震の大連動は,南海トラフなど他の地震発生帯でも起きうると考えると,想定の大幅な見直しが必要である.今回の地震では,地震の規模に比べて,強震動や長周期地震動が1/2 ~1/3 程度と弱かった.こうした地震被害の特徴は,次の大地震には当てはまらないことに注意が必要である.

  • 藤原 広行
    2011 年 50 巻 6 号 p. 360-366
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    東北地方太平洋沖地震は,M9.0 という日本周辺で発生した地震としては有史以来最大規模のものであった.この地震は,地震調査研究推進本部により行われてきた「全国地震動予測地図」においても考慮することができていなかった.このため,福島県から茨城県北部地域では,予測されていた地震動レベルは,過小評価であった.この原因は,一義的には,地震活動モデル作成の根拠となっている長期評価において,M9.0 の巨大地震の発生が評価されていなかったことによるが,一方で,不確定性を定量的に評価するために準備されている確率論的地震ハザード評価手法の枠組みを十分に機能させることができなかったことも一因であると考えられる.「全国地震動予測地図」の作成に携わってきた経験を踏まえ,確率論的地震ハザード評価に関して,その問題点と解決すべき課題について考察する.

  • 澤田 隆
    2011 年 50 巻 6 号 p. 367-373
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    2011年3月11日に起こった巨大地震と大津波により東京電力(株)福島第一原子力発電所が被災し, 1 号機から4 号機が原子力災害を引き起こすにいたった.この事故を分析して反省と教訓を引き出し,わが国だけでなく世界の原子力施設の安全性向上に資する必要がある.ここでは,東京電力(株)福島第一原子力発電所における事故初期の状況に関し,原子力安全・保安院や東京電力(株)の資料などを用いて要点をまとめた.また,日本原子力学会の「事故から得られる教訓と提言」および「事故の遠因」の要点についても述べる.

  • 佐々木 康人
    2011 年 50 巻 6 号 p. 374-380
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    1895年X 線の発見によって電離放射線を認知した人類は以降放射線と放射性同位元素を医療を始め様々な社会生活の向上に活用してきた.一方,放射線の人体障害作用も早くから知られていた.1928 年国際放射線医学会の委員会として活動を開始した国際放射線防護委員会は放射線防護の原理と原則を勧告してきた.科学的知見の進歩,防護技術の発展,社会の動向を反映して,放射線防護規準も変遷した.最新のICRP2007 年勧告に基づく放射線健康影響の考え方と最新の防護体系を解説する.平常時(計画被ばく状況),非常時(緊急時被ばく状況),非常時からの復興期(現存被ばく状況)に分けて勧告されている防護体系は福島原発事故への対応に活用されている.今日では,国連科学委員会の報告を科学的根拠としてICRP が防護勧告を,国際原子力機関がより具体的な防護規準を作成する国際的枠組が確立している.

  • 野口 邦和
    2011 年 50 巻 6 号 p. 381-388
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    福島原発事故時に原子炉内に存在していた放射性核分裂生成物の量を推定した.原子力安全・保安院等の評価をもとに,同事故により大気中および海洋に放出された主な放射性核種の放射能量を概括した.原子力安全委員会の『原子力施設等の防災対策について』が如何に机上の対策であったかを指摘した.避難住民など周辺住民の汚染状況等について紹介した.放射性ヨウ素をめぐる問題では,甲状腺被ばく線量について依然として不透明な部分が多いことを指摘した.緊急作業者の被ばくについては,緊急作業時の被ばく線量上限値が250 mSv に引き上げられた問題を指摘するとともに,東京電力の労働者被ばく管理の実態を紹介した.食品の放射能監視の基準値となっている原子力安全委員会の「飲食物摂取制限に関する指標」の意味付けを紹介した.また,今後の大地放射線量の推移について予測した.低線量被ばくの発がん問題について考察した.

  • 杉山 直紀
    2011 年 50 巻 6 号 p. 389-395
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    福島第一原子力発電所事故からの教訓の中で,原子力安全確保の方法論として確率論的安全評価(PSA)への期待が高まってきている.その一方で,今回の事故では,PSA の持つ技術的な課題も顕在化した. そこで,まず,今回の事故の進展を振り返り,現在のPSA のリスク評価手法としての有効性を確認した.その後,IAEA の原子力安全の目的と深層防護の考え方の観点から,現在のPSA の課題を整理した. 最後に,PSA 技術全体の底上げを図るために,原子力安全と深層防護,評価範囲の網羅性と最新技術へのキャッチアップ,標準整備戦略の必要性,人材育成,リスクコミュニケーションの観点から6 つの提言を行った.

  • 大部 悦二, 浜田  潤・深野 琢也
    2011 年 50 巻 6 号 p. 396-401
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    平成23 年3 月11 日に発生した東日本大震災後の福島第一原子力発電所の事故は,発生後半年以上が経過し,原子炉や使用済み燃料プールの安定的冷却が可能となるなど,事故の収束に向け着実に作業が進められている.この事故は,発電所周辺の方々をはじめ広く一般社会に大きな不安を与え,今なお大勢の方々に避難生活を強いることになり,さらに農業,水産業など広く社会活動に重大な影響を及ぼしている. このような事故を防げなかったことにより原子力発電に対する社会の信頼は失墜し,原子力発電の在り方について問い直されていることを,原子力事業に関わる者として極めて深刻に受け止めなければならない. 本事故の直接的な原因および事態の経過については,既にIAEA 閣僚級会合に提出された政府の原子力災害対策本部の報告書や,東京電力(株)が公表した資料等に記載されている.また,国の第三者機関である「事故調査・検証委員会」により本事故の原因について調査が進められている. 一般社団法人日本原子力技術協会(以下「原技協」という.)は,原子力産業界の安全文化醸成活動に携わっている.今回の事故を「安全文化」の観点から評価し,事故の未然防止や事故発生後の緩和措置の改善につなげる考察を行うには,事故発生以前および事故後において事故当事者および関係する組織がどのように情報を収集・分析・評価し,判断を下したかについて検討が必要となる. 本稿では,これまでに得られている情報をもとに,原技協のこれまでの活動で得られた知見を加えて安全文化の側面から考察を行った.さらに,原技協で原子力技術の特殊性を考慮した「安全文化の原則」についての見直し等を進めている状況についても紹介する. なお,国の第三者機関である「事故調査・検証委員会」は年内に中間報告書を取りまとめることになっているが,今後,原技協は本報告書等の内容を受けて検討を行い,改めて考察を加える必要があると考えている.

  • 山田 常圭
    2011 年 50 巻 6 号 p. 402-409
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震とその後の津波や余震によって,青森県から静岡県の1都11県にわたり287 件の火災が発生した.この中では,岩手県山田町や大槌町,宮城県気仙沼市,石巻市のように,津波後に大規模な市街地火災が発生したのが大きな特徴としてあげられる. 東日本大地震における広域かつ多様な火災による影響が大規模であった事態を深刻に受け止め,日本火災学会では,発生した事実をまずは正確に記録し,広く世の中に公表する事,またそれを踏まえて,今後,これらの事態に対処すべき方向性を示すことが求められていると考えている.機動的に調査研究を推進するために,組織横断的な時限委員会として「東日本大震災調査委員会」を設置し,当面の作業として現時点までの火災調査状況を速報版として編集発刊を目指した作業をしている.本稿では,この速報版の中から,今までに明らかになってきた火災の全体概要と主要な火災リストをとりまとめて紹介している.また日本火災学会での調査研究活動のための専門委員会を核としたワーキンググループの組織づくりと,その活動状況についても併せて触れている.

  • 中村 昌允
    2011 年 50 巻 6 号 p. 410-416
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    東日本大震災によってコンビナートは大きな被害を被った.福島第一原発事故を含めて,このコンビナートでの震災経験から学ぶリスクマネジメントの課題をまとめた. 課題は,①想定外リスクにどう備えるか②リスクマトリックスの見直し③リスクアセスメントの重要性 ④電源確保⑤防災訓練⑥緊急時における現場の権限と責任になる. 全てのリスクに対応することはできない.「受け入れられないリスク」とは何かについて,関係者間で合意を形成し,たとえ発生確率が小さくとも対策を実施するようにリスクマトリックスの見直しと電源喪失に備えたリスクアセスメントが必要である.緊急事態において状況を的確に判断できるのは現場である.緊急時に現場にどこまでの判断を委譲するかのルール化が求められる.火災事故については,法令遵守が安全確保の最低線であることを認識した.

  • 西 晴樹
    2011 年 50 巻 6 号 p. 417-426
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    2011年東北地方太平洋沖地震では,非常に広い範囲にわたって強い揺れによる被害,さらに東北地方太平洋沿岸部を中心に広い範囲での津波の被害を受けている.石油タンクなどの危険物施設は消防法令の技術基準に従って地震に耐える構造にしなければならない.しかしながら,危険物施設や石油コンビナート施設においても今回の地震動や津波による被害が発生しており,一部の危険物施設等では火災も発生している.今回の地震で被害を受けた危険物施設は3 324施設であり,このうち地震によるものが1 404施設,津波によるものが1 807施設である.また,火災は42 件,危険物の漏洩事故は122件発生している.

  • 吉田 久雄・大藤 友詳・古井 傳一
    2011 年 50 巻 6 号 p. 427-432
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    平成23年(2011年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波により,久慈基地の地上設備は壊滅的な被害を蒙った.津波被災後に被災を免れた地下岩盤タンクの維持,安定化の為に緊急の措置を実施した.本稿では津波襲来時の初動対応と被災状況を述べる.また,被災後の緊急の措置として実施した,湧水汲み上げ用仮設電源の確保,人工水封水の確保等についての状況及び災害対策本部としての防災活動状況についても述べる.加えて,今後も津波被害は有り得ることを想定し,被災時でも岩盤タンクを安定して運転出来るような設備配置の検討を提言した.

  • 中島 洋
    2011 年 50 巻 6 号 p. 433-439
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    大震災,巨大津波の影響は情報通信インフラ,情報通信システムに対して事前の想定を上回るダメージを与えた.とりわけ激甚被災地域の行政機関では情報システムが壊滅して,長期間にあたって被災者の避難,救援,その後の避難所生活や疎開などの活動に際して十分な手当てが行えなかった.有線ケーブルの切断,無線基地の被災,停電,災害時の通話制限などで,固定電話や携帯電話も十分には機能しなかった.ただ,インターネットを利用するTwitter やFaceBook などの新しい情報共有手段は現地からの情報を世界に発信していち早く被災地の状況を具体的に報告,救援活動に大きく貢献した.今後は広域の無線インフラの構築,インターネットを活用した新しい情報共有の仕組み,さらに遠隔地で情報を共用できるクラウドの構築など,災害時に対応する体制の確立が急務である.

  • 飯田 光明
    2011 年 50 巻 6 号 p. 440-445
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    2011 年3 月11 日の東北地方太平洋沖地震により(独)産業技術総合研究所の東北及びつくばセンターが被った研究施設の被害状況と復旧活動について紹介する.負傷者は非常に少なかったものの,居住不可となる建物が1 棟発生,室内も高層階ほど一応の耐震固定を施した機器,什器類まで転倒した.研究機器も被害が大きく,地上階に設置していた大型機器も背の高い機器は多くが損傷した.研究インフラで被害が大きかったのは,屋上の排ガス処理装置と,地中埋設の研究排水管であった.防災マニュアル整備,避難訓練,緊急地震速報の導入,什器類特に薬品庫やボンベの耐震固定の徹底,備蓄品の整備等は非常に有効だったが,高層階ほど強固な耐震固定,観音開き収納庫対策,適切な行動マニュアルとチェックリストの整備等が新たに得た教訓であった.

  • 藤本 康弘
    2011 年 50 巻 6 号 p. 446-449
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    化学品を使っている現場にとっては,化学品の漏洩等による爆発火災や中毒等の発生防止とともに,大切なことは被害の拡大防止である.何が起こりうるのかを事前に見極め,発生してしまった場合にどのように対処するかを考えておくことで,万一の時の被害を少しでも減らすことが可能になる.ここでは,特に化学産業に限らず中小企業一般の役に立つように,化学品の地震対策の概要をまとめた.

  • 伊藤 和也・豊澤 康男・高梨 成次
    2011 年 50 巻 6 号 p. 450-457
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    本報では,東日本大震災における災害復旧・復興工事中の労働災害の現状を概観した後,内陸型活断層地震である,新潟県中越地震,新潟県中越沖地震における災害復旧工事中の労働災害の調査・分析結果を示し,さらにその結果をもとに事業継続計画にて利用される復旧曲線の考え方を援用して,地震被害の状況に応じた災害復旧工事における労働災害発生の可能性について検討を行った結果を示す.そして,これらの分析を踏まえて東日本大震災の現在までの状況と今後の動向について示した.

  • 澤田 晋一
    2011 年 50 巻 6 号 p. 458-467
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    東日本大震災後の復旧・復興作業を遂行する上で,夏の暑さと冬の寒さは不可避である.その上,がれきの撤去作業や除染作業では,粉じんや電離放射線からの防護と安全対策のために,マスク,ヘルメット,防護服,安全手袋,安全靴などの労働衛生保護具を着用しなければならない.これらの作業条件は夏季には作業者への暑熱ストレスを過酷なものにする.冬季の復旧・復興作業は特に被災地の大半が東北地方の太平洋沿岸の寒冷地域であることから,しばしば風雪や冷たい降雨に曝されて厳しい寒冷作業になる.本稿では,このような復旧・復興作業を遂行する上で懸念される暑熱,寒冷負担と健康障害の病因,病態,兆候について,温熱生理学的観点から概説した.またこれらの健康リスクを予防するための方策について,暑熱,寒冷ストレスの測定・評価法とそれにもとづく労働衛生管理対策のありかたに焦点をあてて論じた.

  • 倉林 るみい
    2011 年 50 巻 6 号 p. 468-473
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    災害に向けた企業のリスクマネジメントとして,平素からのマニュアルの準備が望まれる.本稿では,職場の災害マニュアル作成に参考となる事項について,従業員の心のケア,メンタルヘルス対策の観点から概説した.災害時の企業のメンタルヘルス対策については,心の相談窓口の設置などが思い浮かぶが,まずは従業員の身の安全の確保,被災従業員への食糧や居場所の提供,さらには必要な情報の収集と開示などを適切に行い,従業員に安全と安心を提供することが,何よりの心のケアとなる.そうした土台の上に,既存の健康管理体制を活用しながら,メンタルヘルス対策を打ち出していくことが望ましい.参考として,災害時に現れる心の反応や心理状態の時間的推移についても解説し,併せて被災地以外の職場で管理監督者が配慮すべき心のケアについても言及した.

  • 濱田 正則
    2011 年 50 巻 6 号 p. 474-478
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    東日本大震災の根源は地震と津波予知の大失敗にある.中央防災会議および地震調査推進本部の予測とは32 ~180 倍エネルギーの大きい地震が発生し,地震が引き起した大津波が大災害を発生させた.わが国の地震予知の体制・組織および調査研究のあり方を根本的に見直さなければならない. 一方,東京湾の臨海埋立地では広範囲な地域に液状化が発生し,住宅・建物・ライフライン施設等が甚大な被害を受けた.このことは,将来の東京湾北部の地震などに対する臨海部,特にコンビナート地域の安全性に重大な課題を提起することになった.東京湾の臨海部には液状化対策が施工されていない埋立地盤や護岸が多数存在し,その埋立地盤上には重工業や化学工業のコンビナートが建設されている.これら臨海部コンビナート地区の耐震対策に国・自治体・事業者および近隣住民が協力して取り組む枠組み作りを急がなければならない.

  • 堤 一憲
    2011 年 50 巻 6 号 p. 479-487
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    東北地方太平洋沖地震では,首都圏の交通機関が一斉に停止したことで多くの帰宅困難者が発生し,駅ターミナルでの混乱や路上の混雑などの状況が発生した.首都圏での帰宅困難者の状況は,当日帰宅を断念した人が約260 万人,遠距離を徒歩で帰宅した人が約600 万人と推定され,大きな混乱はなかったものの,路上では混雑度の高い区間も一部では見られた.今回の地震では首都圏中心部では被害は少なかったが,首都直下地震などが発生した場合には混乱をきたす可能性が極めて高いと考えられる. 震度6 強以上程度の揺れを伴うような首都直下地震が発生し,公共交通機関の運行が一斉に停止した場合には「翌日帰宅」を基本として実施し,今回の東北地方太平洋沖地震のような震度5 強程度の地震の場合には「時差帰宅」を実施することが混乱防止に有効である.

  • 鷹野 澄
    2011 年 50 巻 6 号 p. 488-494
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    緊急地震速報は気象庁が観測点で地震を検知したら,その震源と規模を推定し,各地の震度を推定して提供される防災情報である.この情報は一つの地震で何度も出され,最初の情報は,地震検知から3 ~5 秒後に出されている.推定震度が5 弱以上の場合を警報と定義し一般向けに提供される.この緊急地震速報を減災に活用するには,事前の訓練と周辺の安全エリアの確保が重要である.東日本大震災では警報発表時には,地震の規模と震度がともに過小評価され,後続の情報で規模や震度がいつまでも大きく成長した.これは巨大地震の時の緊急地震速報の姿そのものであったが,後続の情報は活かされず課題を残した.現在日本列島の地震活動が活発化し,内陸直下型地震への注意も必要であるが,緊急地震速報のみでは直下型地震には対応できず,直下型地震対応の情報システムの実現が急務となっている.

  • 関谷 直也, 廣井 悠
    2011 年 50 巻 6 号 p. 495-500
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震の後,調査からの推定上,首都圏で約420 万人,東京で約352 万人が帰宅できなかった. 帰宅困難の問題は「帰宅に困ること」それ自体が問題なのではなく,「災害時における集合的移動行動」による混乱としての「渋滞」および「火災」「群集なだれ」の発生である.危惧すべきは,多くの人が3 月11 日の経験を踏まえ,多くの人が自宅に帰ろうとし,首都直下地震において大規模な混乱が発生することである. 帰宅困難者発生後の問題は,滞留後の滞留者対策,帰宅可能箇所などの情報伝達,その後発生する食料不足,モノ不足の対策である. 災害被害が大きくない場合の帰宅困難者問題に関しては公共交通機関の情報の提供が重要である.今後携帯電話以外のデジタルサイネージなどを用いた情報提供なども視野に含めていくべきであろう.

  • 野口 和彦
    2011 年 50 巻 6 号 p. 501-507
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー

    東日本大震災は,亡くなられた方と行方不明の方をあわせると2 万人を超え,避難者も一時期40 万人を越える大きな災害となった.さらには,震災の影響は,日本にとどまらず,原子力発電所事故により世界のエネルギー戦略にまで大きな影響を与えた. このような東日本大震災を「津波への対応が不十分」,「原子力の安全対策が問題」など,直接経験した事象に対する断片的な反省に終始すると,次は,別のタイプの災害事象での大きな被害を受けることになる.本稿は,東日本大震災をリスクマネジメントの視点で総括し,今後の防災活動改善のために重要と考える課題を整理したものである.

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