安全工学
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特集号: 安全工学
52 巻, 6 号
安全工学_2013_6
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
会告
巻頭言
大気中物質の広域拡散とその影響特集
  • 菅田 誠治
    2013 年 52 巻 6 号 p. 359-363
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    地上付近で発生した物質は,大気境界層の中にあり,昼夜の境界層の盛衰や他の気象の影響を受けつつ,主に地表面付近を風の流れにより運ばれる.一部の物質は自由大気に出て,より長距離の輸送を受ける.越境輸送の影響が及ぶかどうかは風向を見れば容易に推測できるが,その際の物質濃度を定量的に予測することは,輸送途中での境界層の状態,自由大気との出入り,気象条件次第の輸送形態とそれに伴う水平方向の気塊の拡がり,降水による除去等の様々な要因が複雑に絡んで非常に難しい.

  • 山澤 弘実
    2013 年 52 巻 6 号 p. 364-370
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    東京電力福島第一原子力発電所事故で放出された放射性物質の環境影響は甚大であり,その影響の多くは大気拡散と沈着に起因する.本稿では,大気中の天然および人工の放射性核種の起源および影響の主要部分を踏まえ,評価方法と我々の理解度を省みた. 今回の事故では放射性物質の概略の放出量は評価されているが,不確かさは大きい.放射性物質による影響は,大気中での長距離輸送と降水に伴う沈着により遠隔地でも発現し,大きな社会影響を及ぼすことが事故の経験から指摘でき,湿性沈着過程の理解とモデルの精度の向上が必要である.SPEEDI の予測結果は現実に比較的近いものであり,事故初期から関係機関に提供されていた.しかし,予測結果は一部の限定的な目的に使用されただけで,本来の住民の放射線防護目的では使用されず,課題を残した.

  • ―温室効果ガスとエアロゾルの変化の影響
    塩竈 秀夫
    2013 年 52 巻 6 号 p. 371-375
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    産業革命以降,人間活動によって排出されてきた二酸化炭素を含む温室効果ガスや,硫酸性エアロゾル,炭素性エアロゾルなどの大気汚染物質は,大気・海洋・陸面などの気候システムに大きな影響を与えてきた.ここでは,過去の全世界規模の気候変動に,温室効果ガスや人為起源エアロゾルがどのように寄与してきたかを解説する.また将来の気候変動予測についても,説明する.

  • 内山 巌雄
    2013 年 52 巻 6 号 p. 376-382
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    1993 年に米国6 都市調査で,微小粒子状物質(PM2.5)が,呼吸器疾患のみでなく,心肺疾患死亡に影響があることが公表されて以来,世界各国で同様の報告がなされた.これを受けてわが国でも研究班が組織され,2009 年9 月に微小粒子状物質の環境基準(年平均値15 µg/m3 以下,日平均値35 µg/m3 以下)が制定された.その後もいくつかの報告がなされているが,カナダの全国規模の調査では,従来の報告よりさらに低いPM2.5 濃度で循環器疾患の死亡率でハザード比が有意に高くなることが示されている. 現在の,わが国のPM2.5 の濃度はゆっくり下降しているが,環境基準の達成率は約30 %前後で,低い状態が続いている.そのような状況下で,本年1 月より越境汚染による大気汚染の悪化が心配され,環境省は急きょ健康影響が出現する可能性が高くなると予測される濃度水準を注意喚起のための暫定指針(70 µg/m3)として示した.注意喚起発令のための判断方法については,改善の余地があり,運用当初から各自治体により運用方法も統一されていないが,3 月~5 月の運用実績をみても,注意喚起が発令された13 事例のうち,実際に日平均値が70 µg/m3 を超えたのは5 事例にとどまっており,逆に見逃しの例も存在していることから,環境省は11 月にも判断基準の改善策を示すべく,検討を行っている.

  • 速水 洋
    2013 年 52 巻 6 号 p. 383-387
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    洋水 環境基準達成率の低いPM2.5 の対策検討において,大気質モデルは有用なツールとなる.大気質モデルのPM2.5 予測性能を向上のため,改善策を検討した. まず,大気質モデルで通年計算を実施し,粒子状硝酸塩濃度を過大に,有機粒子濃度を過小に予測し,それらが相殺されてPM2.5 濃度の再現性が見かけ上,良好になることを確認した. 次に,粒子状硝酸塩濃度について検討し,施肥の時期を考慮したアンモニア排出量の採用やガス成分の乾性沈着速度の抑制で再現性が高まることを示した.また,これまで未把握の半揮発性有機化合物と凝縮性ダストの排出量を考慮することで,有機粒子濃度の再現性が大幅に改善されることを示した. 以上の事項に重点的に取り組むことで,大気質モデルのPM2.5 予測性能が改善されることが期待された.

  • 上野 広行
    2013 年 52 巻 6 号 p. 388-393
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    東京都における2001 年度から2012 年度までのPM2.5 の質量濃度モニタリング結果を整理するとともに, 2008 年度に行われたPM2.5 調査結果の概要をまとめた. 都内のPM2.5 濃度は広域的な濃度変動に支配されているが,地域的な汚染が上乗せされている状況であった.PM2.5 の主要な成分はEC,OC,硝酸塩,硫酸塩であり季節により組成が異なっていた.過去の調査と比較すると,自排局での低減が大きく,自動車排出ガス対策の効果が大きかった.CMB 法やシミュレーションモデルにより推定した発生源寄与からは,自動車の寄与は10%程度であり,様々な発生源に対するきめ細かい対策が必要と考えられた.また,二次生成粒子に関する調査研究の充実,関東地方レベルでの広域連携が今後の課題と考えられた.

  • 長谷川就一, 米持 真一
    2013 年 52 巻 6 号 p. 394-400
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    埼玉県におけるPM2.5 の常時監視測定結果による年平均値および日平均値の年間98 %値は,2011 年度に比べて2012 年度は低下し,環境基準達成率も2011 年度は0 %であったが,2012 年度は一般環境大気測定局では75 %に向上した.県北東部の加須市における長期的な測定に基づくPM2.5 の経年変化は低下傾向であり,廃棄物焼却や自動車による一次粒子の削減が寄与していたと考えられたが,二次生成粒子の低下は緩やかであった.また,冬季のSO42- について2011 ~2013 年を比較すると,特に2013 年に高くはなっていないことから,この時期に問題となった越境汚染の影響は,埼玉県では小さいと考えられた. 2011 年度秋季はPM2.5 が平均的に高かったが,これは気象条件とバイオマス燃焼の影響が大きかったと推測された.

  • 熊谷 貴美代
    2013 年 52 巻 6 号 p. 401-407
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    群馬県においてこれまでに実施したPM2.5 観測結果から化学組成および地域特性について考察した. PM2.5 濃度は近年減少が見られたが,依然として環境基準を達成できていない状況である.PM2.5 の成分としては硫酸塩,硝酸塩,有機成分が大部分を占めており,春では硝酸アンモニウム,夏季では硫酸アンモニウムおよび有機粒子の増加が特徴的であった.有機粒子については,夏季において光化学反応による 二次生成が支配的となっていた.群馬県におけるPM2.5 は二次生成無機・有機粒子の割合が高いため,これらに対する低減対策が重要と考えられた.冬季ではバイオマス燃焼の寄与が大きくなることから,地域特有の発生源としてバイオマス燃焼も考慮していく必要がある.

  • 大気環境を念頭において―
    牧野 良次
    2013 年 52 巻 6 号 p. 408-415
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    大気環境を念頭におきながら,化学物質のヒト健康リスク評価方法を(1 )排出量推定,(2 )環境中濃度推定,(3 )有害性評価,(4 )リスク推定・判定というステップに分けて説明した.またリスク管理の具体的事例として,産業構造審議会化学・バイオ部会リスク管理小委員会有害大気汚染物質ワーキンググループにおける「有害大気汚染物質自主管理計画のフォローアップ」の審議および取りまとめ結果について紹介した.

技術ノート
  • 八島 正明
    2013 年 52 巻 6 号 p. 416-423
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2016/07/30
    ジャーナル フリー

    Ca 添加の市販の難燃性Mg 合金について,研磨粉の爆発・火災危険性を実験的に調べた.粉じん爆発に関係する75 µm より小さい粉については,次の結果が得られた.a)爆発下限濃度は55 ~70 g/m3, b)Godbert-Greenwald 型加熱炉による浮遊粉じんの発火温度は510 ~580℃,c)最小着火エネルギーについてはすべて30 mJ よりも小さく,中には3 ~10 mJ の範囲にあることがわかった.本実験によると,用いた研磨粉は,Ca を添加しないMg 合金と同じように爆発・火災危険性を有することがわかった.Ca を添加することによって,粉の表面には酸化物層(CaO,MgO)を形成し,保護膜となる.Ca はMg 同様に活性であり,可燃性であるが,何らかの原因でこの酸化物層が破壊すると,むしろ燃焼しやすくなる.難燃性の評価試験として用いられることがある高温管状炉における発火温度測定について,検証実験を行った.

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