クライシス・コミュニケーションとは,危機的事態覚知後にダメージを最小化するために行う言語・非言語を用いるレスポンスのことであり,リスク・コミュニケーション活動の一つに位置付けられる.クライシス・コミュニケーション戦略の一般的理論はすでに存在するものの,国民文化の相違によって,受け手となるステークホルダーによる評価は一様ではない.本稿は,日本,米国,中国について,各国の国民文化,社会システムの特徴および危機事例を挙げ,受け手の評価を概括し,各国に適切なクライシス・コミュニケーション戦略を論ずることを目的とする.その結果,トップによる謝罪,実直であることが評価される傾向の日本,対立を恐れずに明瞭な主張が評価される傾向の米国,調和を図ることが評価される傾向の中国といった,異文化的価値観を理解した上でのコミュニケーションが欠かせないことが検討できた.
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