安全工学
Online ISSN : 2424-0656
Print ISSN : 0570-4480
ISSN-L : 0570-4480
特集号: 安全工学
63 巻, 6 号
安全工学_2024_6
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
会告
巻頭言
NATECH 特集
  • 石丸 裕
    2024 年 63 巻 6 号 p. 360-366
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル 認証あり HTML

    気温上昇や集中豪雨の増加などの気象変動は我々の実感としても認識出来る . これに伴い農水産業への 影響や洪水などの激甚災害が世界各地で顕在化している . 日本では南海トラフによる地震発生の確率が高 いとして国をあげて備えの実施が叫ばれており , 国民の関心も高い .NATECH( 自然ハザードによる危 険物質の放出を伴う技術的災害 ) は , このような自然ハザードに影響される産業にとって緊急に対処が必 要な重大なリスクの一つである . この NATECH の事例 , リスクの顕在化プロセス , 自然災害への対応上 必要な国内外の法規制 , リスク管理要素の枠組み , リスクアセスメントと制御の方法 , 周辺住民との関係 構築など産業が配慮すべき事項について概説をした .

  • 大野 卓志, 木全 宏之
    2024 年 63 巻 6 号 p. 376-381
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル 認証あり HTML

    高圧ガス分野においては ,2011 年の東日本大震災において地震により球形貯槽が倒壊し火災爆発事故 が発生したことや , 近年の南海トラフ巨大地震 , 首都直下地震等の発生が危惧されていることを受け , 2018 年に耐震基準が大きく見直された . 本稿では , まず , 高圧ガス分野における耐震基準の変遷を示し , 次に , 近年の規制動向としてサイトスペシフィック地震動を用いた最新の耐震設計の概要を紹介した . ま た , 最後に , コンビナート施設の大規模地震対策の在り方について述べた .

  • 小川 大輔
    2024 年 63 巻 6 号 p. 382-386
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル 認証あり HTML

    これまで , 過去の大規模地震において , ガソリンスタンドや危険物の貯蔵所などの危険物施設は , 地震 による振動や津波による浸水などの影響により多くの被害を受けている . 危険物施設の一つである屋外タンク貯蔵所は , 大量の危険物を貯蔵する施設であり , 地震による被害が 発生した場合には社会的影響が非常に大きくなるため , これまでに耐震化を図ってきた . 本稿では , 屋外タンク貯蔵所の保安体制の強化に関する規制の事例を紹介する .

  • 田邊 雅幸
    2024 年 63 巻 6 号 p. 387-390
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル 認証あり HTML

    最近の自然災害の激甚化トレンドは , もはや疑いようのないものとなっている . 自然災害に起因する産 業事故 (NATECH) のリスクを把握することは , 安全分野において重要なテーマとなっている . 一方で , 石油化学や石油精製に代表されるプロセスプラントでは , 設備設計の基礎データとして一定の自然災害を すでに考慮している . この自然災害に対するプラント設備の基本的な特性を把握しなければ , 自然災害に 起因するプロセス災害が具体的にどのようなものになるかを理解することは難しい . 本稿では , プラント 設備の基本データの考え方とそれに対するリスクアセスメント手法を紹介し , そこから見えてくる自然災 害の激甚化が意味すること , さらには今後 NATECH への備えとして考慮すべき点について考察する .

  • 大地震への備え
    安喜 稔
    2024 年 63 巻 6 号 p. 391-396
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル 認証あり HTML

    日本国内いつどこで発生するか分からない地震に対して危険・有害性の有る化学物質を取り扱い製造し ている化学プラントの耐震設計は , 防災・減災に極めて重要なポイントになる . 本稿では , 中小規模の化 学プラントの比較的小規模な屋内設備 (6 m 未満 ) と屋外タンク ( 特定タンク 1 000 kL 未満のその他タン ク ) の耐震設計 ( 特に設計水平震度 ) について法規制を比較するとともに地震動特性を概観し , 課題につ いて述べる .

  • 情報化時代の専門家の役割
    菊地 輝行
    2024 年 63 巻 6 号 p. 397-403
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル 認証あり HTML

    気候変動に伴い増加が予想される自然災害と , それに伴う認知バイアスに左右されやすい地域防災対策 について ,NATECH の視点から解説する . 自然災害 , 特に豪雨や地震は , 長期的に見れば人間の経験を 超える周期で発生し , 迅速かつ適切な防災対応が求められる . 気象庁によると , 気温の上昇とともに , 短 時間雨量の増加が毎年報告され , 異常気象は日本で常態化しつつある . 異常気象は , 豪雨災害の発生頻度 を高める傾向があり , プロセス産業における被害も懸念される . 一方 , 人にとって自然災害は , 忘れたい もの・考えたくないことであり認知バイアスが働いてしまうことも課題となる . 防災におけるデータ活用 には , 信頼性の高い情報とその背景を考慮することが不可欠である . 本論では , 過去の災害教訓を活か し , 地域防災におけるデジタルツインとオープンデータの期待を示しつつ , 自らの経験と共に未来の災害 対策に取り組む重要性を強調する .

  • 福山 浩史
    2024 年 63 巻 6 号 p. 404-407
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル 認証あり HTML

    東京モノレールでは , 様々な自然災害に対しても , 安全な運行が可能なように対応している . 本稿で は , 安全管理の体制や , 具体的な災害 ( 強風 , 地震 , 雪等 ) が発生した場合の対応方法について , とりま とめて報告する .

  • 船舶群の実避難行動解析による潜伏リスクの把握
    牧野 秀成
    2024 年 63 巻 6 号 p. 408-413
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル 認証あり HTML

    本研究は “ 海事分野における Natech( 自然災害に起因する産業災害 ) のリスク低減 ” を目指して , 特 に大規模工業地帯や重要港湾が立地している沿岸地域においてリスクの起源になり得る船舶群の安全かつ 最適な避難誘導手法の構築を目的とする . 本稿では 2022 年 9 月 18 日に日本に上陸した令和 4 年台風第 14 号が関西に接近した際の大阪湾内の船舶群について , 船舶自動識別装置からの送信データに基づき時 系列可視化解析することで船舶避難行動の全容を把握した . また , 避難海域において錨泊船舶が輻輳状態 であったことを確認し , その輻輳度をカーネル密度推定法により算出することで潜伏リスクの一要因を明 らかにした .

  • 竹田 宜人
    2024 年 63 巻 6 号 p. 414-417
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル 認証あり HTML

    本論は , 自然災害を原因として生ずる産業事故 Natech( ナテック :Natural-Hazard triggered Technological Accidents) を対象にし , その対策としてリスクコミュニケーションとの関連を述べたもの である .Natech の原因となる自然災害は地震や津波 , 風水害であるが , 稀な例として産業活動を原因と して激しい自然現象が誘発され災害に至る場合もある . 原因は自然現象でも人為的であっても , 住民の避 難や健康障害への拡大 , 環境汚染等により長期的に周辺環境に影響を及ぼした例もあることは共通してお り , 地域住民にとって大きなリスクの一つであることは間違いない . 本稿では , その事例をいくつか紹介 した後 , 被害軽減のための住民とのリスクコミュニケーションの重要性について論ずる .

  • 青木 伸一
    2024 年 63 巻 6 号 p. 418-423
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル 認証あり HTML

    地震 , 津波 , 台風 , 高潮などの大規模自然災害により臨海部の石油コンビナート等特別防災区域が被災 し (NATECH), その影響が 2 次災害として周辺地域に及ぶような状況を想定し , アンケート調査などに 基づいて , 地域防災の視点から , 防災対策上の問題点や今後の対策の方向性について考察した . ハード防 災力だけでなくソフト防災力を高めるためには , 企業と住民のリスクコミュニケーションを一層進めると ともに , 地域行政が積極的に両者に関わっていくことが重要であることを指摘した .

  • 木根原 良樹
    2024 年 63 巻 6 号 p. 424-427
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル 認証あり HTML

    プロセス産業の多くの事業会社では , プロセス安全管理 (PSM:Process Safety Management) に則り 予防対策及び緊急時対応がなされる . しかしながら ,NATECH( 自然災害起因の産業事故 :natural hazard triggered technological accident) は , 危険物漏洩や火災・爆発等の影響が敷地外に及ぶなど社会 的影響が大きな事態に進展するおそれがある . その事態の重大性に応じて , プロセス安全管理 (PSM) に止まらず , 事業継続管理 (BCM:Business Continuity Management) や危機管理 (Crisis Management) との連携が必要になる . プロセス産業の事業会社において ,NATECH に備えた取組みが望まれる .

会報
feedback
Top