理学療法さが
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3 巻, 1 号
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原著
  • 宮原 洋八
    2017 年 3 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    [目的]地域高齢の初期調査時の筋力と 6 年後の要介護度との関連を検討することを目的とした。[方法]2006年 A 市保健センターにおいて健康診断を受けた60歳以上の住民211名の内,要支援・要介護者を除いた165名である(71.5±28.5歳,男性47名,女性118名)。[結果]追跡時の各転帰における握力の比較では要介護1・2 群,要介護3・4・5 群が自立群よりそれぞれ有意に減少した。膝伸展力の比較では要介護3・4・5 群が自立群より有意に減少した。[結論]先行研究の値を考慮すると,握力が20 kg,膝伸展力が12 kg を下回ると要介護になることが推察された。筋力は要介護度について評価が可能であることが示唆された。

  • ―理学療法士と理学療法学科学生との比較検証―
    光武 翼, 植田 耕造, 吉塚 久記, 江越 正次朗, 大古場 良太, 堀川 悦夫
    2017 年 3 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    [目的]本研究の目的は重度脳卒中片麻痺患者を対象に,理学療法士(PT)と理学療法学科学生(PTS)が介助した時の患者と介助者の身体動揺を比較することとした。[方法]脳卒中片麻痺患者 8 名に対し,PT もしくは PTS が後方から歩行を介助した。加速度センサを患者と介助者の両方に設置し,root meansquare(RMS)によって歩行介助時の身体動揺を測定した。PT と PTS との介助者の違いと垂直,側方,前後方向の身体動揺について二元配置分散分析を用いて比較した。[結果]PTS の歩行介助では PT より患者,介助者ともに RMS が高値を示し,側方成分 RMS が垂直,前後成分 RMS より有意に高かった(p<0.001)。[結論]PTS の歩行介助では PT より身体動揺が大きく,特に側方への動揺が大きくなることが考えられる。

  • 稲富 渉, 八谷 瑞紀, 大田尾 浩
    2017 年 3 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    要旨:本研究の目的は,測定の環境が異なる Timed Up & Go Test(TUG)を実施し,信頼性および誤差を明らかにすることを目的とした。対象は地域在住高齢者120人とした。TUG はセンサーマットを用いて所要時間を測定し,床面はフロア条件(TUG-フロア)・畳条件(TUG畳)に分けて実施した。相対信頼性の検討には級内相関係数(ICC),絶対信頼性の検討にはBland-Altman分析を用いた。系統誤差の確認後に測定の標準誤差(SEM),最小可検変化量(MDC)を求め測定誤差を検討した。測定値の誤差が臨床応用上,問題となるかを検討するため許容範囲を算出し推定した。分析の結果,TUG-フロアの ICC(1,1)は0.97であった。TUG-フロアでは系統誤差は認められなかった。また,SEM,MDC を算出した結果,TUGフロアの SEM は0.4秒,MDC は1.1秒であった。一方,TUG-畳での TUG の ICC(1,1)は0.95であった。固定誤差,比例誤差を認め系統誤差を確認した。今回の結果より,畳条件よりフロア条件で測定を行うほうが被検者の能力を正確に把握できることが示唆された。

  • 古賀 菜津季, 大田尾 浩, 上城 憲司
    2017 年 3 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    要旨:[目的]1 分間語想起スクリーニングテストによる認知機能低下を判別するカットオフ値を検討した。併せて語想起された産生語の傾向について調査した。[対象]地域在住の女性高齢者51名(平均年齢:76.7±8.1歳)とした。[方法]測定項目は,1 分間語想起スクリーニングテスト,挙げられた産生語,Mini-mental state examination(MMSE)とした。1 分間の語想起テストは1 分間にできるだけ多く動物名を挙げるように指示した。各測定項目の関連を相関係数にて検討した。また,MMSE から認知機能低下の有無を群分けし,1 分間語想起スクリーニングテストの ROC 曲線を描出しカットオフ値を検討した。[結果]1 分間語想起スクリーニングテストと MMSE とのあいだに(r=0.49,p<0.01)有意な相関が認められた。ROC 曲線のAUC は0.74〜0.99であり,認知機能低下を判別する 1 分間語想起スクリーニングテストのカットオフ値は12/11個(感度100.0%,特異度53.3%,正診率58.8%)が適切であると判断された。産生語は回答率が高い順に,イヌ,ネコ,サル,キリン,トラ,ウシであった。[結論]1 分間語想起スクリーニングテストは認知機能低下の発見に有用であることが示された。また,語想起された産生語はペットや干支の動物名を挙げることが多いことが明らかとなった。

  • 三牧 由奈, 大田尾 浩, 八谷 瑞紀, 陣内 健太, 井原 雄彦
    2017 年 3 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    要旨:[目的]高齢者が虚弱に陥る際に,まず生活機能の低下からはじまる。そこで要介護高齢者の生活機能に影響を及ぼす身体機能を検討した。[対象]通所リハビリテーションを利用する102名(平均年齢81± 8 歳)とした。[方法]測定項目は,要介護度,握力,大腿四頭筋筋力,Functional reach test,Functional reach test with eye close,30-secchairstand test,片足立ち時間,Timed up and go test(TUG),5 m歩行時間,生活機能の指標として老研式活動能力指標を評価した。老研式活動能力指標に影響を及ぼす因子の抽出にはステップワイズ法による重回帰分析を用いた。[結果]重回帰分析の結果,老研式活動能力指標に影響を及ぼす要因に選択されたのは TUG(p<0.01)のみであった。[結語]要介護高齢者の歩行能力や動的バランス能力を向上させることで生活機能を改善できる可能性が示された。

  • 小山 沙也夏, 大田尾 浩, 宮原 洋八, 田中 真一, 岸川 由紀, 大川 裕行
    2017 年 3 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    要旨:[目的]地域在住高齢者の反応時間を測定し,その反応時間と転倒との関係を調査した。[対象]女性高齢者25名(平均年齢71.4±5.2歳)とした。[方法]測定項目は,反応時間および年齢,過去一年間の転倒歴,外出頻度,握力,上体起こし,大腿四頭筋筋力,長座体前屈,片足立ち,5 m歩行時間,Timed up and go test,30秒間椅子立ち上がりテストとした。各測定値を転倒の有無別に Mann-Whitney 検定にて比較した。また,反応時間と各測定値との関連を Pearson の相関係数で検討した。[結果]転倒あり群の反応時間(1022.40±17.11 msec)は転倒なし群の反応時間(772.67±161.51 msec)よりも有意に遅延していた。また反応時間は,年齢(r=0.520),握力(r=-0.541),5 m歩行時間(r=0.501)と有意な相関が認められた。[結語]地域在住高齢者においても転倒経験がある者は反応時間が遅延していた。転倒予防は,筋力やバランス能力のみならず反応時間も考慮する必要がある。

  • 真島 翔平, 大田尾 浩, 久保 温子, 古後 晴基, 満丸 望, 溝田 勝彦
    2017 年 3 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    要旨:[目的]高齢者の足指機能が過去一年間の転倒経験と関係するかを調査した。[対象]対象は地域在住の女性高齢者25名(平均年齢71± 5 歳)とした。[方法]足指機能は,足指押力,足指押力が最大値に到達するまでの所要時間(最大値到達時間),筋力発揮時の継時的波形を測定した。また,過去一年のあいだに経験した転倒経験ならびに転倒しそうになったニアミス経験について調査した。[結果]転倒・ニアミスあり群の足指押力は,なし群よりも有意に低かった。また,転倒・ニアミスあり群の最大値到達時間は,なし群よりも有意に遅延していた。さらに,転倒・ニアミスあり群の波形は,筋力発揮時や脱力時にも上下に乱れて安定しなかったのに対し,なし群の波形は滑らかに筋力を発揮し,また脱力できていた。[結語]足指機能は,地域在住の女性高齢者の転倒と関わりがある可能性が示された。

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