応用老年学
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11 巻, 1 号
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巻頭言
巻頭論文
原著論文
  • ─世代間比較からの考察─
    小田 利勝
    2017 年 11 巻 1 号 p. 11-26
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    無作為抽出された成人男女4,000人を対象とする調査から得られた有効票1,474人のデータを用いて、超高齢社会における老年観と老年規範意識を世代間の比較を通して分析した。総じて言えば、青年世代には、壮年世代や高齢世代よりも老年や高齢者の肯定的な面に同意する割合が高いが、若者の関心や行動を高齢者は理解していないということと高齢者は頑固であるという否定的な老年観の程度は高齢世代で低く、青壮年世代で高かった。高齢世代に比べて青壮年世代とくに青年世代には活躍規範意識を持つ人の割合が圧倒的に小さかった。老年観や老年規範意識を左右する要因では社会・人口学的要因のほかに、「生きがいや人生の目標を持ち続ける自信」や「寝たきりになる不安」の程度も影響を与えていた。高齢世代の社会的役割への期待が大きくなっている中で、世代間のパートナーシップ形成にとって老年観や老年規範意識の世代間の違いがどのように作用するか注目されるところである。

  • ―首都圏高齢者の地域包括的孤立予防研究(CAPITAL study)より―
    橋本 由美子, 渡辺 修一郎, 野中 久美子, 小池 高史, 長谷部 雅美, 村山 陽, 鈴木 宏幸, 深谷 太郎, 小林 江里香, 藤原 ...
    2017 年 11 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,独居高齢者を配偶者関係から類型化し,高次生活機能および精神的健康状態との関連を明らかにすることである.2013年に東京都A区の65歳以上の住民8332名から要介護度4・5の者および施設入所者を除いた7707名に実施された郵送調査に回答した5052名のうち,独居の757名を分析対象とした.独居高齢者を,配偶者との関係から,別居・離別・死別・未婚に分類した.高次生活機能の指標は老研式活動能力指標,精神的健康の指標はWHO-5-J得点を用いた.独居の類型、別居子の有無,世帯年収を固定因子,性別,年齢を共変量とした一般線形モデルにて老研式活動能力指標およびWHO-5-J得点と独居の類型との関連を検討した.独居類型と老研式活動能力指標との関連は有意でなかった.一方,WHO-5-J得点については,独居類型と別居子の有無との交互作用が有意に関連しており,別居による独居群において別居子がいる場合にとくに低かった.

  • ─高齢者を対象とした構成概念構築のための日本の論文のシステマティックレビュー─
    小林 由美子, 杉澤 秀博, 刈谷 亮太, 長田 久雄, 殿原 慶三
    2017 年 11 巻 1 号 p. 36-48
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,高齢者が健康関連のストレッサー/逆境に直面した際のレジリエンスの構成概念について,日本で発行された論文を対象として検討することが目的だった.そのためにレジリエンス尺度が開発された論文において,システマティックレビューを行い,44の論文を得た.最初に,日本のレジリエンス尺度開発の特徴を把握した.次に高齢者と健康の低下に関する21の論文に絞り込み,121の下位概念を,次の5つの構成概念に類型化した.すなわち,(1)活発化(活力,持続力,新奇性への興味,コントロール,有能感);(2)自然体(自然な行動,楽観性);(3)関係志向(他者との関係の基盤,他者との関係,物理的環境との関係);(4)マネジメントスキル(一般的対応,具体的対応);(5)人生の目的(受容・理解,再構築,将来展望)だった.分析結果から,人生の目的はレジリエンスの鍵概念であることが示唆された.

  • 佐藤 美由紀, 齊藤 恭平, 芳賀 博
    2017 年 11 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、アクションリサーチにより創出され、10年間継続されている交流事業の効果と問題点を明らかにすることである。データ収集は、質問紙調査とフォーカス・グループ・インタビューにより行った。質問紙調査は対象地区の65歳以上全員を対象に行い、反復測定分散分析を行った。参加群では地域活動が増加し、ボランティア活動と社会的役割の低下が抑制されていた。フォーカス・グループ・インタビューは、運営に携わっている住民を対象にした。効果として≪はりあい≫≪日常での見守り≫、問題点として≪交流事業以外での状況把握≫≪自主運営の限界≫などが抽出された。小地域における住民主体の交流事業は、心身の健康の維持に効果があることが明らかになった。また、地域の互助を醸成することが示唆された。しかし、高齢化の進行により住民だけによる運営に限界が近づいていた。住民主体を支えるしくみを早急につくる必要性が明らかになった。

  • ─よこはまシニアボランティアポイント制度登録者における検討─
    澤岡 詩野, 渡邉 大輔, 中島 民恵子, 大上 真一
    2017 年 11 巻 1 号 p. 61-70
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

     都市部のボランティアに熱心であると考えられる高齢者の活動に焦点を当て,活動継続への意向の違いに関連する要因を検討した.神奈川県横浜市の介護予防施策「よこはまシニアボランティアポイント制度」の登録者を対象に郵送法による自記式のアンケート調査を行った.このうち,分析に用いる変数に欠損がなく,実際に活動を行っている1,242人を対象に分析を行った結果,①9割以上が継続への意向を示していること,②能動的継続の意向「体力の続く限り続けたい」を持つ人は,男女ともに活動頻度が高く,元気がもらえることを活動の魅力と考えていること,③これに加え女性では,能動的継続の意向を持つのは,人から感謝されることを魅力として考え,年齢が高く,主観的健康感の高く,高校卒以下であることが示された.プロダクティブ・エイジングの実現を考える上で,ボランティア活動継続への意向の違いに目を向け,活動を続けていく為の支援を考えていくことが求められる.

資料論文
  • 中村 桃美, 石橋 智昭
    2017 年 11 巻 1 号 p. 71-79
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    高齢期就業には、前期高齢者を中心とする企業等での雇用労働だけでなく、後期高齢者まで含む地域密着の生きがい就業があるが、その実態を捉えた研究は限られている。本研究では、幅広い年代が働くシルバー人材センターの就業データを用いて、年齢階層別の就業実態を明らかにすることを目的とした。対象は、埼玉県下の7つのシルバー人材センターに在籍する会員3,532人であり(無就業者を除く)、1年間の仕事の内容・配分金額を調査した。分析は、配分金額を従属変数、性別・年齢階層を独立変数とする分散分析・多重比較検定を行った。その結果、男女ともに配分金額は70-74歳と80歳以上の階層間にのみに有意差が認められた。また、従事した仕事の内容は80歳以上を含め年齢階層間に差異は認められなかった。ゆえに、生きがい就業の場においては、75-79歳の高齢者は前期高齢者と同等に就業しており、軽易な仕事を担う支え手として期待できる存在であることが示された。

事例報告
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