応用老年学
Online ISSN : 2759-4556
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12 巻, 1 号
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巻頭言
巻頭論文
原著論文
  • ─投票に行く理由の世代差から探る─
    小田 利勝
    2018 年12 巻1 号 p. 10-20
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    高齢世代の投票参加率が他の世代に比べて高い理由に関しては様々な観点から議論されてきたが,本稿では,無作為抽出された成人男女4,000人を対象とする郵送調査から得られた1,474人の調査データを用いて,民主政治体制の下における普通選挙制度の理念と意義に対する有権者の認識に直接かかわる「選挙に行く理由」に着目して,投票参加率の世代差を説明することを試みた.「選挙に行く理由」を大きく「理念的理由」と「目標志向的理由」,「他人志向的理由」の3類型に分類して世代ごとに分析した結果,投票意志は,性や社会経済的地位,政治意識とではなく,「理念的理由」や「目標志向的理由」という普通選挙制度の意義と目的に沿った「選挙に行く理由」と関連しており,世代が上であるほど強く関連していること,そして,そのことが高齢世代の高い投票参加率に反映されていることが示唆された.

  • 小野 真由子, 長田 久雄
    2018 年12 巻1 号 p. 21-31
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究は,高齢者の自尊感情がソーシャルサポートと死に対する態度を媒介しているかについて明らかにすることを目的とした.死に対する態度の測定に使用した尺度は,丹下らが開発した死に対する態度尺度(ATDS-A)であった.この尺度は5つの因子から構成されている.調査対象者は有料老人ホームに入居している65歳以上の高齢者である.265名に質問表を配布し,回答の得られた54名を分析対象者とした.分析法は媒介分析を用いた.その結果,自尊感情はソーシャルサポートおよび,死に対する態度尺度の一つである「人生に対して死が持つ意味」両者に関連していたが,その媒介は成立しなかった.ソーシャルサポートは死の肯定的な側面を促進するが,そこに自尊感情の働きはなかった.

    有料老人ホーム入居者の特性の影響および他の媒介要因の可能性,さらにソーシャルサポートの方向性という視点も考慮する必要があることが示唆された.

  • ~生活意欲にVitality indexを用いて~
    井口 大平, 柴 喜崇, 大沼 剛
    2018 年12 巻1 号 p. 32-42
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    目的:要支援・要介護者の生活意欲ならびに介護状況が主介護者の介護負担感に与える影響を明らかにすることとした.

    方法:対象は神奈川県内と東京都内の2つの事業所から,訪問リハビリテーションを利用している要支援・要介護者54名とその主介護者54名とした.質問紙による面接調査と各事業所のカルテから対象者の情報を得た.主介護者の介護負担感を従属変数,主介護者の年齢,性別,生活の質,抑うつ度を調整変数,要支援・要介護者の服薬種類数,生活意欲,主介護者の介護期間,1日の平均介護時間を独立変数として重回帰分析を行った.

    結果:介護負担感に影響していたのは,主介護者の年齢(β=0.212),生活の質(β=-0.412),介護期間(β=0.272),要支援・要介護者の生活意欲(β=-0.410)で,決定係数は0.591だった.

    結論:要支援・要介護者の生活意欲の低さが主介護者の介護負担感に影響していることが示唆された.

資料論文
  • 本川 晃市
    2018 年12 巻1 号 p. 43-48
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー
  • ―Functional Independence and Difficulty Scaleの紹介―
    齋藤 崇志, 井澤 和大, 渡辺 修一郎
    2018 年12 巻1 号 p. 49-58
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー
  • 菊池 美智子, 柴田 愛
    2018 年12 巻1 号 p. 59-69
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究は,過疎化の進行する農村地域在住の二次予防事業対象高齢者に対して,事業への参加を阻害する要因を包括的に抽出することを目的とし半構造化インタビューを実施,質的検討を行った.25名(男性4名,平均年齢83.9±4.8歳)の対象者に対して,「介護予防事業に参加しない理由は何だと思うか」という質問によりインタビューを実施した.参加阻害要因の包括的な抽出が可能となるよう,エコロジカル・モデルの枠組みを参照した.エコロジカル・モデルは人の行動に影響を及ぼす要因を人の内的および外的要因の多様なレベルに着目した枠組みであり,エコロジカル・モデルで示されている5つの要因「身体的・社会人口学的要因」「心理的要因」「行動的要因」「社会的環境要因」「物理的・施策的環境要因」を参考にインタビューガイドを作成した.本研究では逐語録をコード化し,初めにKJ法のスキームに従ってカテゴリー化した.その結果15のカテゴリー,32のサブカテゴリーが抽出され,それらはエコロジカル・モデルの5つの分類に構成された.また,疼痛や活動制限,低い内発的動機づけや低い社会的サポートなど,先行研究を支持する要因が抽出され,さらに農村地域に特異的な関連要因として,「ゆさんこう」や「老人会」などの地域の伝統的な既存の自助組織の存在およびそれらに起因すると考えられる要因や地域特有の集団規範が抽出された.本研究結果から,高齢化および過疎化が深刻化することが予測される農村地域では,地域における既存組織やつながり,考え方を考慮した介入方法および広報活動の再構築が必要であると考える.

  • 中村 桃美, 石橋 智昭
    2018 年12 巻1 号 p. 70-79
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,大阪府4ヶ所のシルバー人材センター(以下,センター)を対象に会員調査を行い,センターに対する領域別の満足度を明らかにするとともに,その関連要因を検討した.分析対象者は男性782名,女性444名の計1,226名である.分析には満足度(①健康維持,②生きがい獲得,③家計補助,④友人交流,⑤地域貢献)の回答結果を2群化(満足群,不満足群)したものを目的変数,年齢,在籍年数,経済的動機の有無,主観的健康感,センター以外での活動の有無,月あたりの平均配分金額を独立変数とする単変量解析およびロジスティック回帰分析をおこなった.その結果,満足群の割合は①②が極めて高く,その他の項目では50%~70%程度であった.会員の満足度は決して低くはなく,センターに対して総合的に満足しているという結果であった.また,会員の満足度は領域によって関連する要因が異なるとともに,その関連性は性別によって異なる傾向を持つことが明らかとなった.

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