応用老年学
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14 巻, 1 号
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巻頭言
原著論文
  • 安 順姫, 芳賀 博, 佐藤 美由紀
    2020 年 14 巻 1 号 p. 4-12
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,ポジティブ心理学的介入に基づくうつ予防教室(通称,ハッピー教室)終了者のうち希望者が主体となって自主的に活動を継続しているグループに着目して,自主グループ活動を継続的に実施できている要因を明らかにすることを目的とした.東京都A市と神奈川県B市で開催した「ハッピー教室」終了後に,継続して活動を行っている自主グループの中から,活動年数が異なる3つのグループの併せて20人を対象に,フォーカス・グループ・インタビューを実施した.その結果,自主グループ活動を継続的に実施できる要因として,【心安らぐ間柄】【信頼できるリーダー】【無理なく通える場所】【民主的なグループ運営】【関係機関のサポート】【地域への広がり】が抽出された.以上のことから,ハッピー教室終了後の自主グループへの行政や関係機関のかかわり方としては,自主グループ活動に参加するメンバーの心安らぐ関係性の構築という視点を大切にしながら,グループの主体性を見守る姿勢が重要であると考えられる.また,自主グループ活動が長く継続するためには,地域への広がりを意図した活動の展開が大事であることが示唆された.

  • 張 鵬, 杉原 陽子
    2020 年 14 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    医療や介護サービスの利用に関する高齢者,特に独居高齢者の不安感の関連要因を解明し,不安感の低減につながる対応を検討することを目的とした.東京都内A市の65歳以上住民から無作為抽出した3,956人を対象に郵送調査を行った(回収率68.2%).高齢者の約3割が医療や介護サービスの利用に不安を感じており,女性,年齢が若い,独居,低年収,家族からの手段的サポートがない,居住地域の社会的凝集性が低い,健康度自己評価が低い,抑うつ傾向が強い高齢者で,不安感が高かった.不安感の関連要因は,同居者の有無に関わらず,概ね共通していた.共分散構造分析の結果,独居高齢者では,家族からのサポートが少ないとともに社会的凝集性の認知も低く,それによって抑うつ傾向や不安感が高まる可能性が示された.独居高齢者が疎外されず,必要なサポートを受領できるネットワーキングについて,さらなる検討が必要である.

  • 石橋 智昭, 土屋 瑠見子, 二宮 彩子
    2020 年 14 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,東京近郊のA市で2012年から2014年に要支援1・2に新規認定された2,791人を対象に予防給付サービスの効果を要介護度の悪化と死亡の発生の2つの指標を用いて検証した.その結果,認定初期の予防サービス利用は要介護度の悪化リスクを高めるが(HR 1.30, 95%信頼区間:1.17-1.45),[死亡]の発生は抑制する(HR 0.65, 95%信頼区間:0.52-0.80)傾向が認められた.また,サービス利用者の要介護度の悪化は発生時期が早く,その要介護度も大部分が要介護度2以下であった.以上から,認定初期の予防給付サービスの利用は,軽微な状態変化を把握し易くなる特性から要介護度の悪化がより早期に出現するが,そこには死亡を含む重大なイベントの発生を抑制する効果が含まれる可能性が示された.要介護度の悪化をアウトカム指標として用いる際には,その解釈を慎重に行う必要性がある.

  • 森下 久美, 渡辺 修一郎, 長田 久雄
    2020 年 14 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,シルバー人材センターに所属する高齢就業者の運動機能および認知機能と,就業時の主観的疲労感の関連性を検討した.対象は,東京都A市シルバー人材センターに所属し,屋外作業(除草,公園清掃)を担当する会員157名(平均74.2±5.3歳,男性:133名,女性:24名)であった.分析は,一般化線形モデルを用い,作業前後の主観的疲労感の変化量を従属変数,運動機能および認知機能を独立変数,年齢,睡眠時間,平均気温,中高強度の活動量,自己裁量性,作業前の主観的疲労感を共変量とした.

    結果,主観的疲労感の変化量に対して,運動機能および認知機能は単独では有意な関連を示さなかったが,両者の交互作用項が有意に関連することが認められた(β=-0.07,p=0.004).すなわち,運動機能と認知機能の交互作用により主観的疲労感が変化することが示唆された.今後,高齢就業者の機能状態に合わせた疲労管理方法の検討が求められる.

  • 大西 丈二
    2020 年 14 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】介護サービスが将来,インフォーマルケア等に代替されうる推計を行う.【方法】介護支援専門員を対象に,デルファイ法に準じ,無記名で質問紙調査を行った.調査項目には勤務先,背景資格,現在の公的介護保険サービスのうち代替可能と期待される率を含めた.【結果】90名の協力参加が得られた(回収率75.6%).代替可能と期待される率は,訪問介護が26.4%と最も高く,ディスカッションの後では特に通所介護と夜間対応型訪問介護の率が上昇した.施設介護は19.4–20.7%で代替される可能性が見込まれた.ITやロボットに期待が寄せられたのは,安否確認,レクリエーション・運動などであった.代替可能と期待される率は年齢,性別,勤務先,背景資格による有意な差は認められなかった.【結論】訪問介護,通所介護でインフォーマルケア等による代替可能性が大きく感じられていた.

  • 鹿内 誠也, 柴 喜崇, 植田 拓也
    2020 年 14 巻 1 号 p. 47-57
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    目的:運動習慣のある地域在住高齢者における社会的孤立の実態とその変化に関連する要因について検討する.

    方法:対象はラジオ体操会に参加している118名とし,社会的孤立状態はLubben Social Network Scale短縮版を用いた.孤立状態に変化があった者7名に,ストレスフル・ライフイベントアンケート,半構造化インタビューを用い,変化の要因を調査した.

    結果:社会的孤立者は14名(11.9%)存在した.変化の要因として,ストレスフル・ライフイベントが調査時期近くに発生していた.孤立に至る要因は《他者と親密になることへの敬遠》,《加齢に伴う他者との関係の減少》,脱出する要因は《自主グループ活動への参加》,《環境の変化への適応》のカテゴリーが抽出された.

    考察:ストレスフル・ライフイベント発生による心理的要因が他者との関係を一時的に減少させ,孤立に至らせる可能性があるが,時間経過と自主グループ活動の参加が孤立からの脱出につながる可能性が推察された.

  • 渡邊 裕也, 山縣 恵美, 木村 みさか
    2020 年 14 巻 1 号 p. 58-68
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    骨格筋超音波画像から得られる筋輝度が骨格筋の質を反映すると考えられる.本研究は自立高齢者と要支援・要介護認定高齢者における下肢骨格筋の量,質,運動機能の比較を目的とした.

    対象者は高齢者98名で,40名が自立群,58名が認定群であった.右側大腿前部の筋組織厚,皮下脂肪厚,筋輝度を超音波法で評価した.膝伸展筋力を含む6項目の運動機能を測定し,得られた値からFitness age score(FAS)を算出した.

    男女とも自立群では認定群に比べ筋組織厚が有意に高値を,筋輝度が有意に低値を示した.すべての運動機能は自立群で有意に高値であった.性別,群,年齢,BMI(body mass index),皮下脂肪厚を調整した重回帰分析の結果,筋組織厚および筋輝度は膝伸展筋力と有意に関連することが示された.一方,FASにおいては筋輝度の有意性が認められなかった.本研究により得られた結果は,下肢骨格筋の量が質に比べ高齢者の運動機能により強く関連することを示唆している.

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