応用老年学
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16 巻, 1 号
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巻頭言
巻頭論文
原著論文
  • 孫 潔, 杉澤 秀博
    2022 年 16 巻 1 号 p. 10-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,健康行動変容理論に基づき,高齢者における主観的な学習ニーズの出現及びその実践への移行に関連する要因の異同を明らかにすることである.分析の結果,主観的な学習ニーズがない状態からニーズの出現のステージ変容には,学習効果への認知が関連していること,ニーズの出現から実践への変容については,学習効果への認知が高いこと,家族・友人が高齢者の学習に対して,好意的・支援的であることが関連していることが明らかにされた.主観的な学習ニーズがない状態からニーズの出現,ニーズの出現から実践という2つのステージの区分ではあるが,それぞれの段階への変容については,介入方法を異にすることが必要であることが示唆された.

  • 新田 真悟, 村山 洋史, 菅原 育子
    2022 年 16 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    2021年に施行された改正高年齢者雇用安定法に伴い,定年退職前に勤めていた企業での継続雇用にとどまらない選択肢が提供された.本稿では引退前に勤めていた企業のネットワークや斡旋に依拠せずに働き口を見つけた「自己開拓」層に着目し,その社会経済的特徴と就業理由を継続雇用層との比較から明らかにした.

    分析の結果,自己開拓層は継続雇用層と比較して教育年数が長く,さらに年齢も高い傾向にあることが明らかになった.就業理由は自己開拓層で「時間的余裕」を選択しやすい傾向が確認された.以上の結果から,企業規模・職業だけでなく,高年齢者の社会経済的属性や就業理由によっても移動経路に系統的な差異が生じていることが明らかになった.

  • 野藤 悠, 清野 諭, 天野 秀紀, 横山 友里, 西 真理子, 阿部 巧, 山下 真里, 成田 美紀, 村山 洋史, 北村 明彦, 新開 ...
    2022 年 16 巻 1 号 p. 30-39
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    目的:介護予防チェックリスト(KYCL)の欠損値の処理方法を検討すること.

    方法:自立高齢者6187名のデータを使用し,KYCLの回答状況(例:はい/いいえ/無回答)を説明変数,要支援・要介護認定(以降,認定)発生を目的変数としたCox比例ハザード分析の結果から,リスクありと判定される回答に相応する無回答の得点を算出した.さらに,それらの平均値および中央値から欠損に代入する得点の候補を絞り込み,多重代入法との比較から一つに決定した.

    結果:無回答の得点の平均値は0.86点,中央値は0.63点であった.3通りの補完方法(①0.5点を代入し合計点を切り捨て,②0.5点を代入し合計点を切り上げ,③1点を代入)と多重代入法とで得点分布および認定発生のハザード比を比較した結果,①が最も多重代入法を用いた場合に近い結果となった.

    結論:KYCLの欠損には0.5点を与え合計点を切り捨てる方法が適切である.

  • 泉谷 佑美, 三浦 亜純, 村山 一朗, 佐藤 章礼, 山内 匡也, 池村 健, 荒尾 徳三, 武久 敬洋, 武久 洋三
    2022 年 16 巻 1 号 p. 40-48
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    目的:療養病棟入院症例のピークフロー(peak expiratory flow,PEF)と臨床的評価項目との関連を明らかにすること.

    方法:14病院の療養病棟に新規入院した156症例を対象とした.評価項目は年齢,性別,基礎疾患,入院時のMini-Mental State Examination(MMSE),PEF,自立度,Functional Independence Measure(FIM)とした.

    結果:男性,自立度ランクB,高FIMの群でPEFは有意に高い結果となった.PEFはMMSEとFIMのそれぞれに有意な相関を認めた.また,多変量解析においてPEFに対する性別およびFIMの影響は有意であった.

    結論:PEFは,FIMと相関し,身体機能を評価するために簡便に実施できる定量的な指標として有用な可能性が示唆された.

資料論文
  • 野中 久美子, 村山 洋史, 村山 幸子, 高橋 知也, 小林 江里香, 藤原 佳典
    2022 年 16 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    サロンの活動休止に影響する要因を,サロンの特徴,運営上の課題,外部組織から得ている支援の3点から定量的に検証した.ベースライン調査として,東京都板橋区の社会福祉協議会(以降,社協)のサロン事業に2014年5月末時点に登録があった全225ヶ所の運営責任者を対象に自記式質問紙調査を実施し,サロンの特徴(参加者の性別や世代構成等),運営上の課題(参加者や活動場所の確保等に関する課題),地域包括支援センターや町会・自治会など外部組織からの支援(助言や講師派遣等)を得ているかを尋ねた.2019年9月にベースライン調査に回答した207ヶ所のサロンの登録状況を板橋区社協より取得し,主な参加対象を「高齢者」と登録した123ヶ所を最終的な分析対象とした.板橋区社協のサロン事業に2019年5月時点で登録があったサロンを「継続群」,2015年4月~2019年4月の間に登録を抹消したサロンを「休止群」とした.分析は,サロンの休止と継続を従属変数に,単変量解析でP値が0.100以下の変数を独立変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った.2019年4月までに34ヶ所(27.6%)が活動を休止していた.分析の結果,継続的に参加してもらうことが難しいという課題を抱えていること,行政関連組織から参加者募集への協力を得ていないことが休止と関連していた.

  • ―テキストマイニングを用いた論文タイトルの分析―
    山内 真紀子, 平川 美和子
    2022 年 16 巻 1 号 p. 58-69
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,認知症看護に関する国内論文タイトルのKHCoderを用いたテキストマイニングにて研究動向を明らかにし,今後の認知症看護の研究の着手点を探ることである.

    医学中央雑誌刊行会Webで発行年を指定せず,タイトルに認知症,Dementia,痴呆症,痴呆を含む原著論文を検索し,頻出語分析,共起ネットワーク分析をした.

    論文2838件でのうち,総抽出語数44124語(助詞や助動詞を除外した延べ語数21059語),異なり語数3075語(語の種類の数2591語)であった.共起ネットワーク全体像は,【治療場面での理解や対応】【在宅生活継続の要因】【介護者である家族への支援】【音楽療法効果】【日常生活や生活機能】【施設での取り組み】【対応困難な症状や場面】【文献検討】【転倒予防】【現状と課題】【看護学生実習の効果】に分類された.

    研究着手点として,在宅生活継続への支援,病院看護師の視点,認知症高齢者の尊厳,非薬物療法の検証が示唆された.

  • 土屋 瑠見子, 田島 美紀, 服部 真治
    2022 年 16 巻 1 号 p. 70-79
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    「住宅改修が必要な理由書」は,介護保険制度の住宅改修サービス利用時の事前申請で提出する重要な書類である.その様式は,厚生労働省から標準様式が提示されているが,各市区町村が独自に項目を定められる.しかしその実態はわかっていない.本研究では,市区町村が独自に設定した項目を整理し,その内容を考察することによって,今後の理由書の改訂や調査研究で活用するための基礎資料を作成した.2021年2~9月に各市区町村のホームページから理由書の様式を入手し,「A:標準様式」,「B:標準様式を一部改訂」,「C:標準様式を大幅に改訂」に分類し,B, Cと標準様式との相違点について整理を行った.対象市区町村は414か所であり,このうち「A:標準様式」は27%,「B:標準様式を一部改訂」は32%,「C:標準様式を大幅に改訂」は6%であった.各自治体が設定した独自項目を整理した結果,専門職の負担軽減と生活上の困難への対処法を総合的に検討できるような工夫がなされていた.

  • 北島 洋美
    2022 年 16 巻 1 号 p. 80-88
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,介護施設のスタッフの性的マイノリティ入居者に対する意識や課題を見出すことである.分析対象は性的マイノリティ入居者への対応に関する自記式質問紙の自由記述欄の記載(193通)である.調査は東京都23区内の26の特別養護老人ホームのスタッフを対象に2019年11月~2020年2月に行った.質的データ分析法による分析の結果,【性的マイノリティ入居者の存在の認識】,【性的マイノリティ入居者への差別偏見に関する意識】,【対人援助の理念に基づく対応姿勢】,【入居の際の現実的な課題】,【性的マイノリティ入居者を受け入れるための準備】の5つのカテゴリが抽出された.多くは性的マイノリティ入居者に対して受容的であり,対応に有用な知識を得たいと考えていた.しかし一部には,固有のニーズに対する理解不足等があることが窺えた.性的マイノリティに関する正確な知識を得て理解を深める機会の必要性が示唆された.

  • 池内 朋子, 小野 真由子, 長田 久雄
    2022 年 16 巻 1 号 p. 89-98
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    多くの高齢者は、「迷惑をかけたくない」という思いを頻繁に口にする。他者との協調が重視される対人関係においては、他者に援助を求めることで迷惑や負担をかけてしまうことが懸念され、互いに援助を求めない関係が維持されることが推察される。「迷惑をかけたくない」という思いは、必要な支援や援助を得られずに孤立するなどの望ましくない結果を生み出すことにもつながる。本稿では、高齢者の「迷惑をかけたくない」思いと、その思いに包まれた別の意識について議論し、文献レビューから高齢者が迷惑をかけたくないとする対象やその背景・理由の調査結果を報告する。調査の結果、迷惑をかけたくない対象としてもっとも多く挙げられていたのは「家族」、とりわけ「子ども」であった。また、迷惑をかけたくないとする対象への配慮を優先し、自身のニーズを蔑ろにする傾向がみられた。高齢者のこの思いの背景およびQoLや幸福感に影響しうる可能性について考察する。

  • ―日本語版WHO-5精神的健康状態表を指標として―
    佐々木 華香, 渡辺 修一郎
    2022 年 16 巻 1 号 p. 99-107
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    目的:フラワーアレンジメントがデイサービス利用高齢者の精神的健康状態に及ぼす効果を明らかにする.

    方法:デイサービス利用者を通所曜日により介入群18名,対照群15名に分け,介入群へは2か月間に4回,1回約20分間のフラワーアレンジメントレッスンを行い,対照群には通常のデイサービスを継続した.初回レッスンの7日前及び2カ月間の介入終了7日後に日本語版WHO-5精神的健康状態表(WHO-5-J)を含むアンケート調査を実施した.また,第3回目レッスン前後のWHO-5-J得点の比較も行った.介入前後のWHO-5-J得点は対応のあるt検定にて比較した.

    結果:介入群のWHO-5-J得点は16.9点から19.8点に有意に上昇したが,対照群の変化は有意ではなかった.第3回目レッスン前後のWHO-5-J得点には有意な差はなかった.

    結論:デイサービス利用高齢者の精神的健康状態は2カ月間に4回のフラワーアレンジメントにより向上した.

  • 阿部 祐美子, 渡辺 修一郎, 伊藤 直子
    2022 年 16 巻 1 号 p. 108-118
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)入居者の生活満足度と義歯使用および嚥下機能との関連を検討した.Aサ高住の入居者68名に留置き調査を実施し,回答者の内44名に後日3回唾液嚥下積算時間を測定した.各項目と生活満足度尺度K(LSIK)の関連の2変量分析の後,LSIKを目的変数とした一般線形モデルによる検討を行った.多変量解析の結果,LSIKには,義歯使用(B=-0.96),3回唾液嚥下積算時間(B=-0.11),COVID-19の生活影響(B=-1.73),同居者以外に心配事や悩み事を聞いてくれる人の存在(B=1.48),週1回以上の外出(B=1.95),および,年齢が高いこと(B=0.08)が有意に関連していた.嚥下機能が高いことは生活満足度を高め,義歯の使用は生活満足度を低めることが示唆されたが,義歯は咀嚼・嚥下機能の維持には欠かせないため,適切な義歯の作成やさらなる改良が期待される.

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