応用老年学
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17 巻, 1 号
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巻頭言
巻頭論文
原著論文
  • 井上 忠俊, 高石 晃子, 上城 憲司, 納戸 美佐子, 鈴木 明宏, 門脇 弘樹, 中村 貴志
    2023 年 17 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/28
    ジャーナル フリー

    目的:デイサービス利用中のアルツハイマー型認知症者に対し実施した二重課題(Dual-Task:DT)による介入が認知機能や生活動作に与える効果について検討するものである.

    方法:デイサービス利用中のアルツハイマー型認知症者40名を対象に,運動単一の課題を3ヶ月間行い,その後,認知課題と運動課題を同時に遂行するDTを追加しその前後を比較した.

    結果:運動による介入の前後比較では,Mini-Mental State Examination(MMSE),老研式活動能力指標が低下した.一方,Geriatric Depression Scale(GDS)は増加した.DT条件下訓練の前後比較では,DT歩行,ロコチェック,Fall Risk Index,MMSE,GDS,Barthel Index,老研式活動能力指標が向上した.

    結論:アルツハイマー型認知症者においてDTによる介入の有効性が示唆された.

  • 中原 純, 田渕 恵
    2023 年 17 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/28
    ジャーナル フリー

    本研究では,中高年の中日ドラゴンズファンを対象に,世代性と集団同一視の関連,世代性や集団同一視と本拠地の球場であるバンテリンドームナゴヤにおける現地観戦意欲の関連を検討する.東海3県(愛知県,岐阜県,三重県)に居住する中高年の中日ドラゴンズファン601名(男性453名,女性146名,その他2名,平均年齢54.48±7.85歳)から,オンライン調査への回答を得た.調査内容は,2021年度の中日ドラゴンズの試合観戦回数,現地観戦意欲,中日ドラゴンズに対する集団同一視,世代性であった.重回帰分析の結果,世代性が高い人ほど,中日ドラゴンズに対する集団同一視が高く,集団同一視が高い人ほど,バンテリンドームナゴヤでの現地観戦意欲が高いことが示されたが,世代性と現地観戦意欲との関連は示されなかった.中日ドラゴンズファンにとって,世代性の発達は,現地観戦意欲を促進はしないが,中日ドラゴンズを集団カテゴリーとする集団同一視を高める可能性は示唆された.

資料論文
  • 西本 憲輔, 龍神 正導, 兼田 絵美, 黒住 智子, 中島 龍彦, 上城 憲司
    2023 年 17 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/28
    ジャーナル フリー

    本研究では通所リハビリテーション利用者を世帯構造別・性別に分類し,心身機能を比較検討することで,独居世帯(95名)・夫婦のみ世帯(84名)高齢者のそれぞれの特徴を明らかにすることを目的とした.世帯構造別に各測定値を比較した結果,独居世帯は,握力,骨格筋量が有意に低下していること,夫婦のみ世帯は,認知機能低下・要介護者が有意に多いことが特徴として示された.さらに性別にて各測定値を比較した結果,女性は男性に比して握力,骨格筋量が有意に低値を示した.特に握力は夫婦のみ世帯の男性が全国平均よりも低く,骨格筋量は両世帯の男女共にサルコペニアの診断基準に該当するレベルであった.これらの結果から,通所リハビリテーションにおいては,世帯構造に関係なくサルコペニアに対する介入が必要である.また,夫婦のみ世帯は,認知機能低下・要介護者が多いため,利用者の急速な状態の変化や介護者の負担等に留意する必要がある.

  • ―性別・居住地域・居住形態との関連―
    菊地 亜華里, 石岡 良子, 小川 まどか, 増井 幸恵, 神出 計, 池邉 一典, 石崎 達郎, 新井 康通, 権藤 恭之
    2023 年 17 巻 1 号 p. 32-41
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/28
    ジャーナル フリー

    幅広い年齢の高齢者,特に超高齢者が実施する余暇活動の特徴を明らかにするために,高齢者の性別,居住地域,居住形態と余暇活動の実施状況の関連を年齢群別に検討した.分析対象者はSONIC調査に参加した2566名の地域在住高齢者であった.高齢者の性別(男性,女性),居住地域(都市部,農村部),居住形態(独居,配偶者あり家族同居,配偶者なし家族同居)を独立変数,12種類の余暇活動の実施の有無を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析を年齢群別(70,80,90歳群)に行った.70,80歳群に比べて90歳群では「宗教活動」と「休息・リラックス」の実施率が高かった.性別及び居住地域と余暇活動の関連については,90歳群でも70,80歳群と概ね共通した関連がみられた.一方,居住形態との関連では異なる特徴が見出され,90歳群では,配偶者を含む家族との同居が「趣味活動」や「旅行」といった特定の種類の活動の低い実施率と関連することが示された.

  • 森下 久美, 石橋 智昭
    2023 年 17 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/28
    ジャーナル フリー

     シルバー人材センター(以下,センター)における主な就業形態は,請負と委任である.これらの雇用以外の就業形態では,健康管理の義務がない等の事故防止体制上の制限がある.本研究では,センターにおける事故防止体制上の課題を整理し,改善に向けた糸口を探った.

     調査は,東京都内2センターの安全衛生管理の関係者である就業会員,安全委員,事務局職員を対象としたフォーカス・グループ・インタビューを実施した.結果,労働衛生の基本的な考え方である<安全衛生教育><健康管理><作業管理><作業環境管理>の4カテゴリに集約され,請負や委任という就業形態による介入上の制限や,安全衛生管理関係者3者間で教育面での意識に相違が潜在することが確認された.対応策としては,仕事の提供時に現状の資源や働き方の工夫を会員と共に検討するジョブクラフティングの活用や,安全委員を職種別に配置し,ベテラン会員から選任することなどが考えられた.

  • ―対人関係の中あるいはそれ以外で生起する感謝の検討―
    小野 真由子, 井藤 佳恵, 池内 朋子, 藤野 秀美, 長田 久雄
    2023 年 17 巻 1 号 p. 51-61
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/28
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,高齢者の感謝の対象を明らかにすることである.地域在住高齢者20名に半構造化面接を実施した.分析は既存研究から「対人関係の中で生起する感謝の対象」,「人との関係以外で生起する感謝の対象」の2つの枠組みを用いて質的内容分析を行った.1つ目の枠組みは,【子どもの頃の世話】,【過去から現在までに得た大切な人とのつながり】,【自分へのサポート】,【家族へのサポート】,【大切な人の存在】,【自己有用性】という6つのカテゴリー,2つ目は,【恵まれた生活環境】,【心身が良好な状態】,【自分にとって困難な経験】,【見えない存在】,【これまでの人生で受け取ってきたすべて】という5つのカテゴリーが抽出された.高齢者の感謝の対象は,自分から他者の利益,また自分に関係する個々の出来事や環境から人生全体へと広がっていることがわかった.背景として利他性,心理社会的発達など様々な要因の影響が示唆された.

論考
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