応用老年学
Online ISSN : 2759-4556
Print ISSN : 1882-6245
ISSN-L : 1882-6245
最新号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
巻頭論文
原著論文
  • 森 裕樹, 清野 諭, 山下 真里, 横山 友里, 植田 拓也, 小林 江里香, 内田 勇人, 藤原 佳典
    2024 年 18 巻 1 号 p. 23-35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル フリー

     大都市在住の後期高齢者を対象に,COVID-19感染拡大前後での通いの場の参加状況の変化とその関連要因を検討した.2021年8月に郵送調査を行い,29,490名のデータから感染拡大前後での通いの場種別の参加状況を従属変数,基本属性や生活状況,健康状態を独立変数としたロジスティック回帰分析を実施した.感染拡大後の新規参加は,通いの場種別を問わず非対面交流と有意であった.さらに,通いの場の種別によっては,新規参加が性別や居住形態,所得,教育歴,スマートフォン使用と有意に関連していた.一方,参加中断は,通いの場種別を問わず女性やフレイルと有意であった.通いの場の種別によっては,参加中断が婚姻状況,スマートフォン使用,就労に加え,非対面交流や主観的健康感と有意に関連していた.以上より,通いの場の種類や内容に応じて,高齢者が通いの場への参加自粛または中断へと至る過程は異なる可能性が示唆された.

  • ―ACPの準備性におけるデスカフェの有効性の検討―
    萩原 眞由美, 井藤 佳恵, 島影 真奈美, 新開 省二
    2024 年 18 巻 1 号 p. 36-53
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル フリー

     高齢社会の進展に伴い、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning ; ACP)の実践が推奨されている.医療・看護・介護の分野における努力にもかかわらず,地域の高齢者や周囲の人々のACPに関する認知度は低い.ACPの普及には日常の中で自分ごととして,死への思いを自発的に発言する場が必要と考える.そこでデスカフェに着目し,デスカフェが生や死に対する考え方にACP実践の準備につながる変化をもたらすか,20~60歳代以上のデスカフェ参加経験者24名を4組に分け,フォーカスグループインタビューを行い調べた.グループフォーカス法による質的内容分析の結果,【生について考えるようになった】【死について考えるようになった】【生や死について考えることをやめた】という3つのカテゴリーが抽出され,それぞれのサブカテゴリーを詳細に検討したところ,前二者のカテゴリーに該当する変化がACPの準備教育になると考えられた.

  • -住宅地ウォーキングとの比較で-
    鈴木 知明, 渡辺 修一郎
    2024 年 18 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル フリー

     地域在住高齢者で,普段からウォーキングの習慣がある人にとって,ゴルフ場におけるウォーキングがストレスを軽減する効果があるかどうかを検証した.男性5名,女性5名,計10名(73.7±4.4歳/65~81歳)を対象とした.日程の間隔を空け,山間部ゴルフ場(高低差は約30m),及び住宅地(高低差は約5m)のそれぞれ約3kmのコースを約2時間かけてウォーキングをし,その前後で唾液中アミラーゼ活性と気分プロフィール尺度であるPOMSを測定した.女性の唾液中アミラーゼはゴルフ場ウォーキング後に有意に低下した.POMSについては,ゴルフ場ウォーキングによりTA(緊張・不安),AH(怒り・敵意),さらにTMD(total mood disturbance・ネガティブな気分状態)が有意に低下した.POMSによる解析から,住宅地ウォーキングよりもゴルフ場ウォーキングの方がストレスを低減すると考えられた.

  • 松岡 洋子, 沼田 裕樹, 渡邉 大輔, 中島 民恵子
    2024 年 18 巻 1 号 p. 62-74
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,居宅介護支援事業所の介護支援専門員が,ケアマネジメント実践においてインフォーマル資源(IFと略す)を活用する際の促進要因・阻害要因を明らかにすることである.首都圏を中心に5年以上の経験を持つ介護支援専門員20名に半構造的インタビューを行ない,得られたデータをたえざる比較法によって分析した結果,4つの促進カテゴリー「本人を生活者として見るパーソンセンタード姿勢」「IF固有の価値」「地域を巻き込む行動力」「介護保険限界への危機感」と,4つの阻害カテゴリー「要介護状態に焦点化する介護保険サービス優先姿勢」「IFの脆弱性」「地域にIF少なく情報集約なし」「介護保険制度不備への不満」が生成され,これらは,「本人をアセスメントする視点」「IF評価の視点」「地域への視点」「制度・環境への視点」という4つの領域で構成されていた.IF活用を推進するには,介護支援専門員が対個人だけではなく,地域や制度も含む包括的な視点をもつことの重要性が示唆された.

  • 三宅 沙侑美, 山野 洋一, 田中 共子
    2024 年 18 巻 1 号 p. 75-88
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル フリー

     本研究では,デイサービスに勤務する介護士のソーシャルスキル尺度群の一部を成す3つの尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討した.まず,先行研究を元に,尺度原案を作成し,基礎スキルと実用スキルの2階層に分けた。本研究では,そのうち基礎スキルにあたる「自己管理」「観察・推察」「自立支援」,すなわち介護士の自己との向き合い方や,状況によらない利用者との基本的な関わり方に焦点をあて,これら3つの尺度原案を用いて,介護士を対象とした質問紙調査を実施した.500名の回答を分析したところ,各尺度の因子構造が見出され,α係数は.68から.89となり,各尺度の内的整合性が確認された.また,GFIAGFICFIRMSEASRMRを基準として,モデルの適合度が許容範囲内であることが確認された.さらにこのSS尺度には,一般的なSS尺度である「KiSS-18」と有意な正の相関がみられた.以上の結果から,本尺度は信頼性と妥当性を備えた尺度と考えられた.

  • 井上 忠俊, 高石 晃子, 仙波 梨沙, 吉村 和也, 石野 悟史, 中野 敦雄, 小濃 徹大, 秋葉 雄太, 後藤 みなみ, 中村 貴志
    2024 年 18 巻 1 号 p. 89-96
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル フリー

    目的:認知機能の低下が歩行機能に影響をおよぼすことが報告されており,二重課題条件下での歩行状態が悪化することや快適歩行の速度が遅延することが示されている.しかし,認知症者の快適歩行の規則性についての検討は十分ではない.今回,アルツハイマー型認知症者を対象に歩行を録画し動画解析を行った.本研究は対象者の認知機能と歩行機能の関連性を明らかにすることである.

    方法:対象は当デイサービス利用者のなかでアルツハイマー型認知症の診断を有している72名とした.対象者に認知機能や歩行機能,また生活機能の評価を行いそれぞれの項目について相関関係及び関連性を検討した.歩行機能の評価として動画解析アプリケーション「トルト」による分析を実施した.トルトは歩行機能を速度,規則性,左右差を評価できる.

    結果:認知機能と関連性が見られた項目は手段的日常生活動作,歩行規則性,歩行速度であった.

    結論:今回使用した動画解析アプリケーション「トルト」は医療専門職以外のスタッフでも測定が可能であること.また,アルツハイマー型認知症者の認知機能と歩行機能は関連性が見られることが示唆された.

  • 植田 大雅
    2024 年 18 巻 1 号 p. 97-106
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル フリー

    <背景>生活の場であると位置付けられている特別養護老人ホーム(以下,特養)においても介護保険制度における自立支援の理念の元,連携協働による機能訓練の取り組みの必要性が言われている.そこで本研究において,機能訓練指導員の多職種連携を進めるための工夫について明らかにすることを目的とした.

    <方法>2023年1月から3月にかけて東京都内の機能訓練指導員5名を対象に面接調査を行い,M-GTAにて分析した.

    <結果と考察>機能訓練指導員が介護職員を中心に多職種と連携・協働を円滑化するための工夫について分析した結果,7個の概念,2つのサブカテゴリー,2つのカテゴリーが生成された.このプロセスとして《日ごろからの意識的な人間関係づくり》を基盤に《介護職員のニーズを意識した働きかけを行う》という2つのカテゴリーが生成された.連携体制構築のために機能訓練指導員の主体的活動による工夫が明らかになった.

資料論文
  • ―ILSA-JにおけるJST版活動能力指標の分析から―
    鈴木 隆雄, 鄭 丞媛, 西田 裕紀子, 大塚 礼, 島田 裕之, 牧迫 飛雄馬, 金 憲経, 大渕 修一, 河合 恒, 藤原 佳典, 阿部 ...
    2024 年 18 巻 1 号 p. 107-116
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル フリー

     日本は急速な超高齢社会を迎え,平均寿命の著しい伸びとともに,高齢者の生活機能も大きく変容し,健康水準の高い活力ある高齢者が増加している.

     本研究では,我が国の地域在宅高齢者を対象とした老化に関する多数のコホート研究の統合研究(「長寿コホートの統合的研究;Integrated Longitudinal Study on Aging in Japan: ILSA-J」)で収集された高次生活機能評価指標であるJST版活動能力指標(JST-IC)を用いて,現代の地域在宅高齢者における生活活動能力の現状を報告した.JST-ICでは総合スコアおよび4項目の下位尺度(新機器利用,情報収集,生活マネジメント,社会参加)について性別および年齢階級別の平均値と標準偏差を算出した.その結果,男女間では情報収集以外の全ての項目で性差が認められ,年齢階級間では男女ともに全ての項目で有意差が認められ,加齢に伴いスコアは低下していた.本研究では,高齢者の高次生活機能の一端を明らかにし,今後の利活用に資する資料とした.

  • 谷田 純, 中山 文
    2024 年 18 巻 1 号 p. 117-124
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル フリー

    近年,高齢者参加型の演劇活動が盛んになり,高齢者の身体的,社会的,精神的状態の向上の効果が期待されている.本研究では,加齢による身体機能の低下を補い,高齢者と若者との世代間ギャップを解決する手段として,高齢者演劇の可能性を明らかにした.高齢役者の負担を軽減する空中ディスプレイを導入した実験演劇『抜き書き版・リア王─老いとジェンダー』を実施し,高齢者への影響,世代間理解への影響について検証を行った.その結果,高齢者の社会参加を促す手段としての有効性を確認することができた.

  • 辛島 順子, 水上 由紀, 原島 恵美子
    2024 年 18 巻 1 号 p. 125-135
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル フリー

    地域包括支援センターから捉えた地域高齢者の栄養管理の対応状況と管理栄養士との連携強化について検討することを本研究の目的とする.

    2023年7月~8月に東京都と神奈川県の地域包括支援センターを対象に地域高齢者の栄養管理と多職種連携に関する質問紙調査を実施した.調査の結果から,地域包括支援センターには地域高齢者の栄養に関連する相談が寄せられ,地域包括支援センターの専門職が栄養に関する対応を行っていたが,食事調査を踏まえた栄養アセスメントや栄養管理の実施は低率であった.地域包括支援センターではさまざまな専門職と連携するが,管理栄養士と定期的に連携している割合は12.5%であった.高齢者の栄養管理については,管理栄養士にさまざまな期待が寄せられ,管理栄養士の積極的な介入だけでなく,地域包括支援センターと管理栄養士の連携強化や管理栄養士の配置など栄養管理体制の整備が重要である.

事例報告
feedback
Top