産業衛生学雑誌
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45 巻, 3 号
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総説
  • 合志 清隆, 加藤 貴彦, 安部 治彦, Robert M WONG
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 45 巻 3 号 p. 97-104
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/09/10
    ジャーナル フリー
    潜水法には圧縮ガス潜水と息こらえ潜水(素潜り)がある. 前者では脳と脊髄ともに影響を受けるが, 脊髄障害がより高頻度にみられる. これに対して後者の素潜りでは, 減圧障害を起さないとされてきたが, 潜水漁民の聞き取り調査を行なうと脳卒中症状として頻発していることが明らかとなった. 潜水に伴う脳病変では, 潜水方法による差異はなく, 不活性ガスの気泡による動脈原性の脳塞栓症が考えられる. また, 脳障害は症候学的には動脈ガス塞栓症と診断されてきたが, 発生機序による分類では減圧症に該当することが多く, 分類法によりその診断に乖離が生ずる. これに対して, 脊髄障害は圧縮ガス潜水にみられるが, 脊髄硬膜外静脈の灌流障害によるとの説が有力であり, 治療法もほぼ確立されている. しかし, 潜水に従事する労働者の一部には減圧障害に対する認識が低く, 過度の潜水を避けるように啓発することが重要である.
原著
  • 鈴木 桂子, 北池 正, 宮崎 有紀子, 野尻 雅美
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 45 巻 3 号 p. 105-113
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/09/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は海外派遣労働者の精神健康度に関連する要因を明らかにすることである. 対象は30~49才の某電気製造業男性社員で北米, 東南アジア, 西欧地域の初回派遣者でかつ現地間異動をしていない317名である. 対象者に自記式質問紙調査を実施した. 調査項目は精神健康度の指標であるGeneral Health Questionnaire (GHQ)12項目, 基本特性(年齢, 派遣期間, 派遣地域, 職種)4項目および社会文化要因, 医療衛生要因, 業務要因, 日常生活要因, 対人関係要因, 自然環境要因の37項目である. 分析はGHQ得点を目的変数とし, 説明変数を基本特性と各種要因とし重回帰分析を行った. その結果, 海外派遣労働者のGHQ得点と有意な関連がみられた要因は, 社会文化要因である風俗習慣の違いによる不自由さ(β=0.256), 医療衛生要因である医師の指示理解能力のなさ(β=0.129), 業務要因である現地人上司との関係の悪さ(β=0.229), 年休消化日数(β=−0.129), 日常生活要因の週1回未満の運動習慣(β=0.141), 喫煙習慣(β=0.136), 対人関係要因の家族交流のなさ(β=0.177), 相談者の不在(β=0.138), 単身派遣(β=0.119), 現地交流のなさ(β=0.117)であった. 関連がみられた10項目のうち4項目が対人関係要因であることから, 海外派遣労働者の精神健康にとって, 対人関係が重要であることが考えられた.
調査報告
  • 斉藤 政彦, 糟谷 歩
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 45 巻 3 号 p. 114-119
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/09/10
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患は日本人労働者における突然死の最多原因の一つである. 高脂血症, 高血圧, 高血糖, 肥満や喫煙習慣などは虚血性心疾患の危険因子とされている. 一般に心筋の中でも心内膜下は心外膜下に比較して虚血が起こりやすいとされている. Buckbergは大動脈起始部脈波における収縮期と拡張期の面積比%(拡張期面積:TTI÷収縮期面積:SPTI×100)が心内膜下の心筋血流量と強い相関を示すことを実験的に確かめ, 心内膜下生存率:Subendocardial Viability Ratio : SEVR(TTI/SPTI)として報告した. 我々は某鉄鋼関連企業男性従業員178名を対象に, SphygmoCor(AtCorメディカル社製)を使用してSEVRを求め, 喫煙 · 飲酒習慣や健康診断結果との比較検討を行った. その結果, 喫煙者, 肥満者, 脈拍の速い者, 血中脂質異常者, 空腹時血糖値異常者では有意にSEVRが低かった. またSEVR 140%以上の正常群(120例)と140%未満の低下群(58例)とに分けて検討したところ, 低下群では年齢が有意に高く, BMI, 脈拍が速く, 総コレステロール, 中性脂肪, 血糖値は有意に高く, またHDLコレステロールは有意に低かった. さらにSEVR低下群では正常群に比較して, 高脂血症や高血糖症例が有意に多かった. 重回帰分析の結果, 脈拍と年齢が有意な独立予測因子であった. SEVRは無侵襲で短時間に測定でき, 虚血性心疾患の危険因子と相関し, 動脈硬化に伴う心筋虚血の一指標として, また健康診断結果に基づく保健指導において有用であると考えられた.
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