産業衛生学雑誌
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46 巻 , 6 号
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原著
  • 加藤 章子, 土井 由利子, 筒井 末春, 牧野 真理子
    2004 年 46 巻 6 号 p. 191-200
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/09/21
    ジャーナル フリー
    青年海外協力隊員の職業性ストレス―職業性ストレス簡易調査票を用いて―:加藤章子ほか.国立保健医療科学院疫学部―青年海外協力隊の事業は,1965年に外務省所管(後に国際協力機構Japan International Cooperation Agency)として途上国の衛生および社会経済状況の改善を目的に発足されたボランティア活動事業である.近年,派遣国で活動する隊員において,メンタルヘルスに関する問題が増加傾向にある.過去の調査から,ストレス要因として仕事が重要な要因であることは推測されていたが,これまで派遣中の隊員を対象とした職業性ストレスに関する研究はなかった.そこで,隊員におけるストレスおよび仕事におけるストレス要因について検討するために,2003年10月から12月にかけて,横断的疫学研究を実施した.対象者は,調査時世界67ヵ国に派遣中の20~40歳の全隊員1,084人であった(男性485人,女性599人;派遣期間がそれぞれ11ヵ月,7ヵ月,4ヵ月の隊員は316人,332人,436人).対象者の約80%は,情報技術,医療福祉,教育,研究などの専門技術をもち,派遣国の職場組織の中で活動を行っていた.職業性ストレスの尺度には,日本人勤労者を対象に開発された職業性ストレス簡易調査票を用いた.加えて,属性,人格特性(エゴグラム)および他の健康情報についての質問項目も含めた.回収率は,86.9%であった.心理的ストレスについては,カットオフ値を越えた者の割合は5.5%(n=49)であった.平均値(±標準偏差)は,男性4.22(±3.98),女性4.89(±4.40)(p<0.05),派遣期間の長い順にそれぞれ5.15(±4.17),5.05(±4.45),3.93(±4.40)(p<0.01)であった.身体的ストレスについては,カットオフ値を越えた者の割合は,2.9%(n=26)であった.平均値(±標準偏差)は,男性1.10(±1.68),女性1.41(±1.74)(p<0.01),派遣期間の長い順にそれぞれ1.47(±1.77),1.35(±1.89),1.11(±1.55)(p<0.05)であった.さらに,多変量ロジスティック解析を用い心理的ストレス反応と関連する要因について検討を行ったところ,仕事の負担の高さ,対人関係の悪さ,仕事の適合性の低さ,上司や同僚からのサポートの低さ,生活の不満足といった要因が認められた.本研究により,心理的ストレス反応のカットオフ値を越えた者の割合は身体的ストレスよりも高いことが示唆された.また,日本における勤労者と同様,本研究の隊員においても心理的ストレスと仕事におけるストレス要因との間に有意な関連が示唆された.以上より,ストレス関連によるメンタルヘルスの問題や疾病の発症を予防するという観点から,心理的ストレスを有する早期の段階で,心理面での健康状態の確認やカウンセリングが重要であると考えられた.さらに,派遣前の研修の中で,隊員に対するストレス対処法について教育することも考慮すべきと思われる.(産衛誌2004; 46: 191-200)
  • 岩切 一幸, 毛利 一平, 外山 みどり, 堀口 かおり, 落合 孝則, 城内 博, 斉藤 進
    2004 年 46 巻 6 号 p. 201-212
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/09/21
    ジャーナル フリー
    近年,VDT(Visual Display Terminals)機器の普及により,職場におけるVDT作業者数およびVDT作業時間は増加している.それに伴い,VDT作業に関する疲労対策に取り組んでいる事業所も増えている.本研究では,このような職場におけるVDT作業者の疲労状況と疲労に関連する項目を検討し,改善すべき要因の候補を見いだすことを目的としたアンケート調査を実施した.調査票は3,927部配布し,2,374部(回収率:60.5%)回収した.解析対象者は,20歳から59歳までのVDT作業者1,406名(男性1,069名,女性337名)とした.疲労と調査項目との関連性の検討には,ロジスティック回帰分析を用いた.疲労自覚症状の訴えは,男女ともに眼の痛み・疲れが最も多く(72.1%),次いで首・肩のこり・痛み(59.3%),腰のこり・痛み(30.0%),手・腕の痛み・疲れ(13.9%)が多かった.いずれの疲労自覚症状においても,女性は男性に比べ高い有訴率を示した.眼の痛み・疲れには,男女ともに気流への不満の有無が最も関連し,従来眼の痛み・疲れの要因とされてきた照明の映り込みや文字の見やすさは関連しなかった.これは,職場での照明環境が改善され,グレア対策が進められているためと考えられる.首・肩のこり・痛みにはキー入力中の肩の持ち上がりとマウスの形状・操作位置が関連し,手・腕の痛み・疲れにはマウスの操作位置と机の高さが関連した.腰のこり・痛みには,椅子の座り心地とキー入力中の手首を浮かせた姿勢が主に関連した.筋骨格系の疲労では,VDT作業に関する疲労対策が実施されてきているにも関わらず,従来の報告と同様の項目が関連した.
  • 福井 里江, 原谷 隆史, 外島 裕, 島 悟, 高橋 正也, 中田 光紀, 深澤 健二, 大庭 さよ, 佐藤 恵美, 廣田 靖子
    2004 年 46 巻 6 号 p. 213-222
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/09/21
    ジャーナル フリー
    組織風土尺度30項目版(外島・松田,1992,1995)の短縮版を作成し,信頼性と妥当性を検証するため,民間企業2社の正社員819名を対象として自記式質問紙調査を実施した.調査内容は,原版の組織風土尺度30項目版,NIOSH職業性ストレス調査票(the Generic Job Stress Questionnaire, GJSQ),および一般健康調査12項目版(the 12-item General Health Questionnaire, GHQ-12)であった.組織風土尺度には伝統性尺度,組織環境性尺度という2つの下位尺度があり,それらの得点の高低によって,各従業員が認知する組織風土を伝統自由・組織活発型(イキイキ型),伝統強制・組織活発型(シブシブ型),伝統自由・組織不活発型(バラバラ型),伝統強制・組織不活発型(イヤイヤ型)に分類することができる.原版の組織風土尺度の主成分分析を行った結果(バリマックス回転,因子数2),それぞれの因子における因子負荷量が0.50以上であった各6項目を短縮版に採用し,組織風土尺度12項目版(the 12-item Organizational Climate Scale, OCS-12)とした.内的一貫性は伝統性因子がα=0.63,組織環境性因子が0.71と許容範囲であった.OCS-12の各下位尺度はGJSQの多くの下位尺度およびGHQ-12と有意に相関し,構成概念妥当性が比較的高いことが示された.OCS-12を用いて分類した組織風土の4類型間では,イキイキ型における職業性ストレスが最も良好であった.OCS-12は職場の組織風土に関する従業員の認知を測定する上で,おおむね十分な信頼性と妥当性を有することが示唆された.
  • 田中 かづ子, 前田 享史, 田中 正敏, 福島 哲仁
    2004 年 46 巻 6 号 p. 223-228
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/09/21
    ジャーナル フリー
    振動工具使用による手腕振動曝露と体位平衡維持機能の障害との関連を明らかにするため106人の男性林業作業者について重心動揺測定,気導聴力検査と質問紙による使用工具の種類,チェンソー使用年数などの調査を行った.我が国では林野庁や労働省の通知や告示により1976年を境にチェンソーの振動加速度が3G以下のものでなければならなくなり,それ以前と比較して振動加速度が著しく低減した機種となった事実がある.従って,調査年次2000年において,チェンソー使用年数25年以上の群(使用年数25年以上群)とチェンソー使用年数24年以下の群(使用年数24年以下群)によって林業作業者を2群に分け検討した.使用年数25年以上群は使用年数24年以下群に比べて,外周面積(aENV),矩形面積(aREC)で表した重心動揺値や500,1,000,2,000,4,000,8,000Hzにおける聴力レベルの平均値はいずれも有意に高値であった.相関係数からは,4,000Hzにおける聴力レベル,チェンソー使用年数,年齢はaENVと有意な関係があることが示された.しかし,チェンソー使用年数は年齢と有意に相関しており,aENVに及ぼす年齢の影響を排除するために,全対象作業者を10歳間隔の年齢層(20~70歳代)に分け,使用年数25年以上群と使用年数24年以下群の同歳代間でaENVを比較した.各歳代において使用年数25年以上群のaENV平均値は使用年数24年以下群に比べて高値であり,特に40歳代では有意な差が認められた.更に,両群の作業者の年齢が一致する46~68歳の範囲に入る作業者について aENV平均値を比較すると,使用年数25年以上群は使用年数24年以下群に比べて有意に高値であった.チェンソー使用の作業者への影響を検討する場合,現場で受けた作業振動と騒音の負荷を乖離して検討することは難しいが,体位平衡維持機能の低下には,過去に曝露された激しい振動が関与している可能性が考えられた.
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