産業衛生学雑誌
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50 巻, 2 号
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総説
  • 森本 泰夫, 田中 勇武
    原稿種別: 総 説
    2008 年 50 巻 2 号 p. 37-48
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/04
    ジャーナル フリー
    ナノ粒子の有害性評価:森本泰夫ほか.産業医科大学産業生態科学研究所―ナノ粒子の有害性に関する研究において,既に有害性評価がなされている繊維状物質やPM2.5などの大気汚染物質の試験法やそのエンドポイントを参考として展開されていることが多い.作業環境における曝露としては,経気道的曝露が想定されるため,吸入曝露試験や気管内注入試験等の動物試験の結果が,有害性評価への貢献度は高い.動物試験のエンドポイントとして,慢性期における持続炎症や線維化及びその関連因子は,ナノ粒子の肺傷害の指標として有用と考えられる.一方,有害性評価試験の結果に差異が認められることがある.この主な原因は,試験に用いたナノ粒子のキャラクタリゼーション(ナノ粒子の物理化学的特性を明らかにすること)が充分に行われていないことにある.そのうち,特に,ナノ粒子の分散性の確認,それも曝露する直前の状態(吸入試験では動物曝露室,気管内注入試験においては,注入する懸濁液)で確認することが重要である.現状では数は少ないが,ナノ粒子のキャラクタリゼーションを行った有害性評価試験の報告が徐々に増加しており,このことが信頼性の高い有害性さらにはリスク評価につながると考えられる.
    (産衛誌2008; 50: 37-48)
調査報告
  • 松岡 治子, 鈴木 庄亮
    原稿種別: 調査報告
    2008 年 50 巻 2 号 p. 49-57
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/04
    ジャーナル フリー
    看護・介護職者の自覚的健康および抑うつ度と自覚症状との関係:松岡治子ほか.群馬大学医学部保健学科―本研究の目的は,女性の看護職および介護職者における心身の健康度の特徴,および看護者らの抑うつ度がどのような自覚症状と関係があるのかを明らかにすることである.群馬県内のA精神科病院に勤務する女性の看護職89名,介護職78名を対象に「健康チェック票THI」(THI:the Total Health Index)を用いて心身の健康度を調査した.その結果,本研究の対象集団167名における『多愁訴』,『呼吸器』,『抑うつ』,『神経症』の4つのTHI尺度得点の平均値は,3つのTHI基準集団と比較していずれも有意に高かった.本研究では夜勤の有無および看護と介護の職種の違いは,THIの尺度得点に差をもたらさなかった.喫煙率は日本の成人女子の2倍近く高かった.これらの所見は,彼女らが毎日の対人援助のためかなりのストレス状態にあることを示しており,ストレス・マネージメントのための支援の必要性が示唆された.また,抑うつ尺度得点とその他のTHI尺度得点との相関において,相関係数rが大きかった尺度は『情緒不安定』0.75,『生活不規則』0.54,『直情径行』0.53,『多愁訴』0.52であり,rが小さかったのは『消化器』0.35,『呼吸器』0.34,『口と肛門』0.32であった.本研究における抑うつの程度と関係の深い自覚症状は情緒不安定など精神心理的要素が関係するものが多く,口腔や呼吸器など具体的な特定臓器に関係した自覚症状とは関連が薄いことが明らかとなった.
    (産衛誌2008; 50: 49-57)
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