産業衛生学雑誌
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50 巻, 5 号
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短報
調査報告
  • 久保智英, 城 憲秀, 武山英麿, 榎原 毅, 井上辰樹, 高西敏正, 荒薦優子, 村崎元五, 井谷 徹
    原稿種別: 調査報告
    2008 年 50 巻 5 号 p. 133-144
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/21
    [早期公開] 公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    「自覚症しらべ」による連続夜勤時の疲労感の表出パターンの検討:久保智英ほか.労働安全衛生総合研究所―本研究の目的は,「自覚症しらべ」を用いて連続夜勤時の特徴的な疲労感の変動パターンを明らかにする事であった.10名の健常男性(平均年齢±SD;22.9±3.2歳)が本実験に参加した.参加者は9日間連続して実験室に宿泊し,以下の条件を経験した;適応夜(0:00-7:00),模擬日勤(10:00-18:00),基準夜(0:00-7:00),4連続模擬夜勤(22:00-9:00)および昼間睡眠(12:00-18:00),3夜の回復夜(0:00-7:00)と2日の模擬日勤(10:00-18:00).それぞれの模擬勤務中に,参加者は英文転写課題(30min),機能検査(20 min),小休憩(10 min)を1時間ごとに実施するよう要求された.疲労感は,2002年に日本産業衛生学会・産業疲労研究会が作成した「自覚症しらべ」を用いて評価した.この質問紙は,5要因にカテゴリー化された25項目の主観的な疲労の訴えから構成されている:ねむけ感(I群),不安定感(II群),不快感(III群),だるさ感(IV群),ぼやけ感(V群).回答者は感覚の強さに応じてそれぞれの項目を「まったくあてはまらない」,「わずかにあてはまる」,「すこしあてはまる」,「かなりあてはまる」,「非常によくあてはまる」から評価するよう要求された.これら5つの感覚の強さは,それぞれ1ポイントから5ポイントのスコアとされた.階層的クラスター分析の結果は,連続夜勤時に疲労感の変動パターンが少なくとも3つ,つまりCluster A,Cluster B,Cluster Cの変動パターンの存在を示唆した.各Clusterの疲労訴え項目をもとに,Cluster A,Cluster B,Cluster Cはそれぞれ「脳賦活系の負担」,「局所筋あるいは中枢神経系の負担」,「情動的負担」を反映していると考えられた.Cluster AとCluster Cのスコアについては,夜勤回数の増加につれて有意に改善する傾向が観察された(それぞれF(11,99)=3.07, p<0.01,F(11,99)=3.37, p<0.01).一方,Cluster Bは夜勤回数に関らず,模擬夜勤時間の経過とともに悪化していた.これらの事から,連続夜勤時の疲労感の特徴的な変動は,さまざまな負担感覚の解離として表出する事が示唆された.
    (産衛誌2008; 50: 133-144)
  • ―実施医療機関を対象とした質問票調査結果報告―
    長尾 典尚, 西川 晋史, 清本 芳史, 轟 美和子, 寶珠山 務, 高橋 謙
    原稿種別: 調査報告
    2008 年 50 巻 5 号 p. 145-151
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/21
    [早期公開] 公開日: 2008/08/22
    ジャーナル フリー
    石綿外来・石綿健診の全国実態―実施医療機関を対象とした質問票調査結果報告―:長尾典尚ほか.関西労災病院救急部―旧石綿製品取り扱い工場の従業員や近隣住民等に中皮腫が多発していることが2005年6月に明らかとなって以来,石綿による健康被害が社会問題化した.その後,国民の健康不安に応答する形で,「石綿外来」や「石綿健診窓口」が全国の医療機関に開設されるに至った.そこで,石綿外来・石綿健診の実施施設を対象に,活動実態と課題を明らかにする目的で質問票調査を行った.有効回答137施設のうち,クボタショック以降に開設した施設が半数以上を占めた.石綿曝露歴の問診実施頻度では,「生活歴」,「居住歴」,「家族の職業歴」の項目が「本人の職業歴」に比べて低く,問診票を活用する施設は7割以上であった.また石綿診療担当医は「マンパワー不足」と「石綿曝露評価」で特に苦慮していた.受診者からの相談内容は,石綿関連疾患,石綿曝露,補償に関することのほか,多岐に及んでいた.中皮腫を初めとする石綿関連疾患は当面増加することが予測される中で,石綿関連疾患の早期発見と治療は喫緊の課題であり,その一翼を担う石綿外来や石綿健診窓口の役割は重要である.限られた資源を使い,有効な診断および治療とともに正確かつ効率的な石綿曝露歴の同定を可能にする診療支援体制を整備する必要がある.
    (産衛誌2008; 50: 145-151)
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