産業衛生学雑誌
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52 巻 , 1 号
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原 著
  • 高松 詩織, 関根 道和, 立瀬 剛志, 鏡森 定信
    原稿種別: 原著
    2010 年 52 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/05
    [早期公開] 公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    地方公務員における飲酒パターンと睡眠の質:高松詩織ほか.富山大学医学部保健医学教室―目的:本研究は,飲酒パターンと睡眠の質との関連性を評価することを目的とした. 方法:T市の18歳から65歳までの全職員2,118名を対象とし,2008年6月,自己記入式質問紙法による横断調査を行った.ロジスティック回帰分析を使用し,独立変数に飲酒パターン(頻度と1日に摂取するアルコール量を組み合わせたもの,1週間に摂取するアルコール量,タイミング)を用い,従属変数に日本語版ピッツバーグ睡眠調査票による睡眠の質を用い,飲酒,睡眠の質に影響を与える可能性のある,対象者の年齢,婚姻状況,要介護者の有無,飲酒習慣,運動習慣,喫煙習慣,仕事の特徴(職位,カラセックによる職域ストレス,交替勤務の有無),BMI,慢性疾患の有無で調整した.睡眠薬を使用すると回答した人と,記入の不備があった人を除いた男性661名(44.8±11.8歳),女性618名(39.0±12.7歳)を分析対象とした. 結果:男性において,飲酒習慣がない人を基準とした場合の,1週間に1回以上の飲酒習慣のある人の睡眠の質が低いことに対する調整オッズ比は0.52(95%信頼区間:0.32-0.85)と有意に低値であった.また,飲酒習慣のない人を基準とした場合,毎日1-3杯飲酒する人の睡眠の質が低いことに対するオッズ比は0.32(0.13-0.84),1週間で7-14杯飲酒する人は0.30(0.13-0.70),食事時のみに飲酒する人は0.37(0.17-0.77)と,有意に低値であった.女性では,飲酒パターンと睡眠の質との間に有意な関連性を認めなかった. 結論:睡眠薬を使用していない男性では,睡眠の質には,いくつかの飲酒パターンが関連することが示唆された.
    (産衛誌2010; 52: 1-11)
  • 角谷 学, 泉 博之, 窪田 誠, 山下 剛司, 神代 雅晴
    原稿種別: 原著
    2010 年 52 巻 1 号 p. 12
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/05
    [早期公開] 公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    作業中の休憩時間の設定による身体的作業負荷パターンの違いが心拍数の回復に及ぼす影響について:角谷 学ほか.産業医科大学産業生態科学研究所人間工学研究室―作業の継続による疲労の蓄積を予防するためには,作業中に適切な休憩を設定し,一連続作業時間と休憩の配分を適正化することによって作業後の速やかな生体負担の回復を促すことが有効である.しかしながら,この作業中の休憩配分による生体負担回復効果について,作業の身体活動負荷強度および作業者の体力の個人差の影響を併せた検討はほとんどなされていない.そこで本研究では,10名の健常男性(平均年齢22.3±1.7歳)を対象とし,自転車エルゴメーターを用いて50 W及び100 Wの2段階の身体活動強度を設定し,身体活動後の心拍数の回復に及ぼす活動強度および作業負荷パターンの影響について検討した.また,対象者個人の体力(VO2max)の影響についても検討を行った.負荷パターンに関しては,作業中の休憩配分の違いにより①無休憩型,②大休憩1回型,③小休憩頻回型の3つの身体的作業負荷パターンを設定した.その結果,50 Wの負荷において小休憩頻回型が他の負荷パターンに比べて安静時心拍数の水準への早期回復が認められた.一方,100Wの負荷では全ての負荷パターンにおいて安静時心拍数の水準への30分以内の回復は認められなかった.さらに個人の体力を考慮すると,小休憩頻回型は低体力群(平均VO2max:42.2±3.7 ml/kg/min)における50Wの負荷および高体力群(平均VO2max:54.5±4.1ml/kg/min)における100 Wの負荷で早期回復に対する効果が認められた.また30分間の心拍数回復過程において,作業による身体活動負荷強度および負荷パターン,個人の体力の違いが心拍数上昇率に与える影響について調べるため,二元配置分散分析を用いて検討を行った.その結果,身体活動負荷強度と心拍数上昇率との間に強い関係が認められた.負荷パターンに関しては,高体力群の100Wの負荷強度において小休憩頻回型と心拍数上昇率との間に関係が認められた.負荷パターンによる負担軽減効果は身体活動負荷量と個人の体力との相互関係によって現れ方が異なっていた.今後の産業保健活動においては,人間工学的視点から,まず作業による身体活動負荷強度を評価し,作業者個人の体力と負荷強度に応じた適正な休憩時間配分を行うことで生体負担の早期回復を目指す作業管理を行っていくことが大切である.
    (産衛誌2010; 52: 12-20)
調査報告
  • 下村 智子, 若林 一郎
    原稿種別: 調査報告
    2010 年 52 巻 1 号 p. 21
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/05
    [早期公開] 公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    事業所での定期健康診断における貧血有所見率の地域差:下村智子ほか.兵庫医科大学環境予防医学―貧血項目は労働安全衛生法により定期健康診断の法定項目に含まれている.本研究では事業所定期健康診断における貧血有所見率の地域差について調査し,その要因について検討した.平成14年度の全国都道府県別の定期健康診断の有所見率について,生活習慣と関連する主な7項目中で特に貧血有所見率に注目し,都道府県別の諸因子との関連性についてSpearman順位相関係数を用いて検討した.貧血有所見率には地域差(5.2-11.7%)が見られ,岩手県,秋田県,山形県などの東北地方と,福井県,島根県,長崎県などで高い傾向を示した.都道府県別の貧血有所見率は血圧,血中脂質,肝機能,心電図,血糖,尿糖のすべての項目の有所見率と有意な相関を示した.都道府県別の貧血有所見率は貧血の受療率と有意な相関を示したが,子宮筋腫患者数や子宮悪性新生物粗死亡率とは有意な相関を示さず,鉄欠乏性貧血患者数や鉄摂取量との間にも有意な相関は見られなかった.都道府県別の貧血有所見率は,女性人口比率,女性就業者比率および就業者平均年齢と有意な相関を示し,一方,大規模事業所(300人以上の従業員数)の割合(50人以上の従業員数の全事業所数に対する)とは有意な負の相関を示した.事業所定期健康診断の貧血有所見率には大きな地域差が見られるが,その要因としての性器出血を伴う婦人科疾患の頻度や食事性鉄摂取量の関与は少なく,事業所での衛生管理状態や女性就業者比率を反映する可能性が示唆された.
    (産衛誌2010; 52: 21-27)
  • 高原 龍二
    原稿種別: 調査報告
    2010 年 52 巻 1 号 p. 28
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/05
    [早期公開] 公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    組織の心理的問題改善への意識調査の寄与に関する一事例:高原龍二.社団法人国際経済労働研究所―組織における心理的問題への対策のために用いられる意識調査は,対策が必要であるかを検証することと,必要であるならばどういった点が問題の要因であるのかを数量的に明確化することで組織的判断の材料とすることが主な目的といえる.本稿では,組織の心理的問題への対策の必要性を明らかにし,有効な対策へのヒントとなるように,共同調査項目と組織特有の問題や対策についての独自項目を組み合わせた意識調査を受託し,対策後にその有効性を確認するために経年調査を行った事例を報告する.従業員の負担感が高く,精神疾患休職者数が多い大手メーカー系企業の地方工場にて,労働組合を通じてヒアリングを行い,その結果に基づいて設計した項目を含んだ質問紙調査を行った.共同調査項目を用いた分散分析からは,従業員のメンタルヘルスや労働意欲が有意に低いことが示され,多母集団同時分析による意識構造の比較や,独自項目との相関からは,人の入れ替わりの激しさや指揮系統の混乱といった該当組織特有の状況の中で,仕事量の多さと雰囲気の悪さによって人間疎外的な状況が形成されていることが示された.結果は労働組合によって経営陣に伝えられ,労使での対策が実施された.1年後,労使での対策を項目化したものを加えて再調査を実施し,対策の検証を行った.分散分析からは有意な改善が示され,経年対応させたアグリゲート・データを用いた重回帰分析からは,労使での対策の一部が有効であった可能性が示唆された.本事例のように,調査の受託主体と対策の主体が異なる場合,組織的判断への資料や効果性の確認のために,調査設計や統計的分析を工夫して,実証的に組織の実態を提示することは有益な手段であると考えられる.
    (産衛誌2010; 52: 28-38)
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