産業衛生学雑誌
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52 巻, 3 号
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原 著
  • 山口 淑恵
    原稿種別: 原 著
    2010 年 52 巻 3 号 p. 111-122
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/02
    [早期公開] 公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    地域包括支援センターにおける業務の現状および個人特性・労働環境と職業性ストレスとの関連:山口淑恵.久留米大学医学部環境医学講座―目的:本研究の目的は,地域包括支援センターの業務の現状および,個人特性・労働環境と職員の職業性ストレスとの関連を明らかにすることである. 対象と方法:対象は,地域包括支援センターの職員251名である.地域包括支援センターの業務の現状および個人特性・労働環境と努力・報酬不均衡モデル(ERI),GHQについて調査した.解析は,個人特性・労働環境における努力・報酬比(E/R比),オーバーコミットメント(OC)のリスク,GHQ得点について X2検定により比較した.GHQ3群(低・中・高得点群)によるE/R比,OC値の関連については,一元配置分散分析を行った. 結果:地域包括支援センターの4つの基本機能のうち,「地域に総合的・重層的なサービスネットワークを構築する」,「包括的・継続的ケアマネジメント」は,機能していると解答した者の割合は,22.0%と50.4%であった.努力得点平均は15.5±5.3点で,他の先行研究の平均値の約2倍と高値であった.GHQ得点において有意差が見られたものは,労働時間( p<0.001),仕事内容に対する不安(p<0.001)であった.また,GHQ得点が高いほどE/R比も高く,多重比較の結果,GHQ低得点群とGHQ高得点群の間で著明な差が見られ( p<0.001),GHQ低得点群とGHQ中得点群の間でも有意な差が見られた( p=0.012).高いE/R比と有意に関連が認められた項目は,週労働時間50時間以上(オッズ比:10.38,95%信頼区間:2.52-42.70),雇用の不安定(オッズ比:2.75,95%信頼区間:1.22-6.21),仕事内容に対する不安(オッズ比:17.04,95%信頼区間:3.57-81.24)であった.OC値のリスク要因と有意に関連が認められた項目は,週労働時間50時間以上(オッズ比:8.04,95%信頼区間:1.99-32.41),仕事内容に対する不安(オッズ比:4.60,95%信頼区間:2.04-10.37)であった. 考察:地域包括支援センター職員の健康度は低く,ストレス度は高いことがわかった.これらの結果は,彼らが不十分な雇用形態や長時間労働の下,仕事内容に関連した不安を抱いて働いていることを示唆している.
    (産衛誌2010; 52: 111-122)
  • ―1977-2008年の定期健康診断成績の検討―
    北村 明彦, 木山 昌彦, 岡田 武夫, 前田 健次, 井戸 正利, 中村 正和, 嶋本 喬, 飯田 稔, 石川 善紀
    原稿種別: 総総
    2010 年 52 巻 3 号 p. 123
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/02
    [早期公開] 公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    抄録:都市部男性勤務者の32年間の身体所見の推移―1977-2008年の定期健康診断成績の検討―:北村明彦ほか.大阪府立健康科学センター―目的:近年,経済不況のもとでの厳しい労働環境に晒される勤労者の健康状態の悪化が懸念されている.本研究では,勤務者における循環器疾患のリスクファクターの動向をとらえるため,都市部の企業勤務者の最近32年間の定期健康診断成績を検討した. 対象と方法:大阪府下の4企業(商社1,金融2,道路公団1)を対象企業とした.1977-2008年の単年度ごとに40歳代,50歳代の男性の健診成績を検討した.経年変化を検討した所見は,最大血圧値(SBP),最小血圧値(DBP),Body mass index(BMI),血清総コレステロール値(TCH)の各平均値,及び高血圧,肥満,高コレステロール血症,喫煙,飲酒,メタボリックシンドローム関連のリスク集積の各頻度である. 結果:受診者数(40-59歳計)は,1977年の822人から1992年の2,651人まで年々増加した後,その後減少に転じ2008年は1,455人となった.高血圧の頻度は,1977年の40歳代25%,50歳代39%から40歳代は1989年の14%まで,50歳代は1992年の23%までそれぞれ年々減少した.しかし1990年代以降,SBP,DBPレベル,および降圧剤服用率の上昇に伴い,高血圧の頻度は増加に転じ,2008年には40歳代29%,50歳代47%となった.BMIの平均値ならびに肥満者の頻度は1980年代半ばから2008年まで増加の一途を辿っていた.すなわち,1990年代以降の血圧レベルの上昇の背景として,肥満者の増加が関連していると考えられた.しかしながら,非肥満者中の高血圧者の割合もまた,1990年代初期から増加していることが明らかとなり,肥満以外の他の要因の関与が示唆された.高コレステロール血症,耐糖能異常,肥満を伴うリスク集積者のいずれの頻度も近年にかけて増加していた.TCH平均値は,1977年では40歳代で195 mg/dl,50歳代で196 mg/dlであったが,2008年には40歳代で204 mg/dl,50歳代で207 mg/dlまで上昇した.肥満を伴うリスク集積者の頻度は,2008年には40歳代で13%,50歳代で15%であった.また,50歳代では,肥満していないリスク集積者の頻度が肥満を伴うリスク集積者の頻度よりも一貫して高率であった. 結論:今回の対象企業は限られたものではあるが,本研究成績により,1990年代以降の厳しい労働環境のもとで勤務者の循環器疾患発症のリスクが増加していることが示された.公衆衛生の見地より,個人的アプローチのみならず労働環境の改善を含めた包括的な予防対策の展開が望まれる.
    (産衛誌2010; 52: 123-132)
  • 中野 治美, 井上 栄
    原稿種別: 原 著
    2010 年 52 巻 3 号 p. 133
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/02
    [早期公開] 公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
    東京圏在住サラリーマンの通勤時身体運動量:中野治美ほか.大妻女子大学家政学部公衆衛生研究室―目的:東京圏在住サラリーマンの中強度以上身体活動の量を測定し,電車通勤者とクルマ通勤者とで比較する. 対象と方法:歩数および身体活動の測定には,身体活動強度METs(=安静時の何倍かを表す単位)を1分ごとに記録する身体活動量計(オムロンHJA-350 IT)を使った.データをパソコンに移して,通勤時間帯および全日の運動量「エクササイズEx」(=METs(≥3)×時間)を計算した. 結果:電車通勤男性群(74人)は,朝夕の通勤にそれぞれ70±30,103±43分を使い,朝+夕通勤時のExは3.4±1.7で,これは全日のEx 5.3±2.4の64%を占めた.この全日Exは,クルマ通勤男性群(78人)の全日Ex 1.8±0.8の2.9倍であった.1日の歩数は,電車通勤男性群9,305±2,651歩で,クルマ通勤男性群3,490±1,406歩の2.7倍であった. 考察:厚生労働省「健康づくりのための運動指針2006」は,週23 Ex以上の身体運動を推奨している.東京圏在住の電車通勤サラリーマンの運動量は大きく,週日5日間では男性で平均26.5 Exとなり,電車通勤は生活習慣病予防に貢献しているように見える.
    (産衛誌2010; 52: 133-139)
  • 小松 優紀, 甲斐 裕子, 永松 俊哉, 志和 忠志, 須山 靖男, 杉本 正子
    原稿種別: 原 著
    2010 年 52 巻 3 号 p. 140
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/02
    [早期公開] 公開日: 2010/04/14
    ジャーナル フリー
    職業性ストレスと抑うつの関係における職場のソーシャルサポートの緩衝効果の検討:小松優紀ほか.東邦大学医学部看護学科―目的:本研究は,職業性ストレスと抑うつの関連性における職場のソーシャルサポート(以下サポート)の緩衝効果について検証することを目的とした. 対象と方法:調査方法は無記名自記式質問紙を用いた横断的研究である.対象者は某精密機器製造工場に勤務する40歳以上の男性712名であった.調査項目は,年齢,職種等の属性,抑うつ,職業性ストレス(仕事の要求度・仕事のコントロール),職場のサポート(上司のサポート・同僚のサポート)等であった.職業性ストレスと職場のサポートの測定はJCQ職業性ストレス調査票(JCQ)を用いた.抑うつは抑うつ状態自己評価尺度(CES-D)を用い,得点が16点以上の者を抑うつ傾向とした.職業性ストレス,サポートについては各尺度の得点を中央値で二分し,得点の高い群を高群,低い群を低群とした.職業性ストレスおよびサポートの高低別のCES-D得点の平均値の比較をt検定にて行った.またCES-D得点を従属変数とし,対象者の属性,職業性ストレス,サポート,職業性ストレスとサポートの交互作用項を独立変数として階層的重回帰分析を行った.交互作用が有意であった場合には,年齢を共変量として共分散分析を行い,職業性ストレスの高低別にサポートの高低がCES-D得点に及ぼす効果を検討した. 結果:調査の結果,全対象者のうち抑うつ傾向者は23.2%であった.仕事の要求度の高低別のCES-D得点は,高群が低群よりも有意に高かった.仕事のコントロール,上司のサポート,同僚のサポートそれぞれにおけるCES-D得点は,各低群が高群よりも有意に高値であった.階層的重回帰分析を行った結果,仕事の要求度,仕事のコントロール,上司のサポート,同僚のサポートはそれぞれCES-D得点に対する有意な主効果が認められた.さらに仕事のコントロールと上司のサポートの要因間でCES-D得点に対する有意な交互作用が認められた.また,仕事のコントロールの低い状況でのみ,上司のサポート高群よりも低群のCES-D得点が有意に高値であった. 結論:これらのことから,上司によるサポートは仕事のコントロールの低さと関連する抑うつを緩衝する効果がある可能性が示唆された.
    (産衛誌2010; 52: 140-148)
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