産業衛生学雑誌
Online ISSN : 1349-533X
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54 巻, 6 号
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原著
  • 藤野 善久, 高橋 直樹, 横川 智子, 茅嶋 康太郎, 立石 清一郎, 安部 治彦, 大久保 靖司, 森 晃爾
    2012 年 54 巻 6 号 p. 267-275
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2012/12/12
    [早期公開] 公開日: 2012/09/21
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    電子付録
    目的:産業医が実施する就業措置について,適用範囲,内容,判断基準など共通の認識が存在しているとは言えない.本研究では,現在実施されている就業措置の実態から,就業措置の文脈の類型化を試みた.方法:就業措置の文脈を発見するために,インタビューとフォーカスグループディスカッション(FGD)を実施した.インタビューは開業コンサルタントの医師6名に行った.またFGDは計6回,19名の医師が参加した.インタビューおよびFGDのスクリプトをコード化し,就業措置の類型化の原案作成を行った.つづいて,これら類型化の外的妥当性を検証するために,産業医にアンケートを実施し,就業措置事例を収集し,提示した類型への適合性を検証した.結果:インタビューおよびFGDのスクリプト分析から4つの類型が示唆された(類型1:就業が疾病経過に影響を与える場合の配慮,類型2:事故・公衆災害リスクの予防,類型3:健康管理(保健指導・受診勧奨),類型4:企業・職場への注意喚起・コミュニケーション).また,産業医アンケートで収集した48の措置事例はすべて提示した4つの類型のいずれかに分類可能であった.また,この4類型に該当しない事例はなかった.収集した事例から,類型5:適性判断を加え,本研究では最終的に,産業医が実施する就業措置として5類型を提示した.考察:現在,産業医が実施する就業措置は,複数の文脈で実施されていることが明らかとなった.ここで提示した5類型では,医師,労働者,企業が担うリスクの責任や判断の主体が異なる.このように就業措置の文脈を明示的に確認することは,関係者間での合意形成を促すと考えられる.
調査報告
  • 難波 克行
    2012 年 54 巻 6 号 p. 276-285
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2012/12/12
    [早期公開] 公開日: 2012/09/21
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    電子付録
    目的:メンタルヘルス不調者の復職支援の効果を定量的に評価するために,異なる復職支援プログラムにおける復職後の出社継続率と費用対効果を比較調査した.方法:ある企業においてメンタルヘルス不調者に対する新旧2つの復職支援プログラムを実施し,旧プログラムで復職した142例,新プログラムで復職した54例,計196例を対象に分析を行った.新プログラムには,(1) 生活記録表を用いた復職判定,(2) 6ヶ月間の段階的な復職プラン,(3) 定期的な産業医面談,(4) 全社復職プラン検討会などを盛り込んだ.結果:新プログラムの休業期間は中央値で60日ほど長かったが,復職1年後の出社継続率は54.2%から91.6%へと改善し,復職後1年間の生産性も6,226,192万円から8,418,514円へと改善した.復職支援にかかった費用は65,945円から300,898円と増加した.経営者の視点から費用便益分析を実施したところ,本取り組みの投資収益率(ROI)は933%であった.結論:復職後の再発を予防するためには新しい復職支援プログラムが効果的であることが示唆された.
  • 小林 直紀, 笹原 信一朗, 友常 祐介, 道喜 将太郎, 商 真哲, 大井 雄一, 羽岡 健史, 梅田 忠敬, 吉野 聡, 松崎 一葉
    2012 年 54 巻 6 号 p. 286-293
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2012/12/12
    [早期公開] 公開日: 2012/09/21
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    目的:休業に関する規則や職場復帰支援制度と,メンタルヘルス不全による休業者の発生状況から,両者の関連性を検討することを目的に本調査を行った.対象と方法:某県産業保健推進センター利用歴のある150ヶ所の事業場を対象に,休復職に関する規則とメンタルヘルス不全による休業者の発生状況に関する調査用紙を配布した.結果:常勤職員数と最大休業期間(r=0.489, p<0.001),常勤職員数と休業中の金銭補償期間(r=0.315, p=0.031)との間に有意な相関を認めた.また,常勤職員数1,000人以上の9事業場においては,金銭補償期間と休業者率(r=0.670, p=0.048),金銭補償期間と平均休業日数(r=0.866, p<0.001)との間に有意な相関を認めた.考察:メンタルヘルス不全による休復職の判断においては,金銭補償期間が影響を与えている可能性が示唆された.今後は,メンタルヘルス不全者の支援体制の改善を考える上で金銭補償期間の影響を考慮した制度の見直しが必要と考えられた.
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