産業衛生学雑誌
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56 巻, 5 号
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原著
  • 岡崎 浩子, 土肥 誠太郎, 井手 宏, 村田 陽稔, 村松 銀次郎, 伊東 大輔, 坂根 直樹, 森本 聡尚, 内田 隆信, 片嶋 充弘, ...
    原稿種別: 原著
    2014 年 56 巻 5 号 p. 109-115
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/18
    [早期公開] 公開日: 2014/07/18
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    目的:職域における保健指導に,内臓脂肪面積の測定(以下,内臓脂肪測定)やウェブでの減量支援を用いることによる減量効果や個人の行動変容に対する効果を検証する.対象と方法:試験参加を希望し,同意したBMI 23以上の181名の社員を試験対象者とした.ランダム化並行比較試験(RCT;Randomized Controlled Trial)を行うために,その対象者を,保健指導に内臓脂肪測定とウェブ支援を併用する群(A群)と,内臓脂肪測定は行わず保健指導にウェブ支援のみ併用する群(B群)と,保健指導も内臓脂肪測定もウェブ支援も行わない群(対照群)(C群)の3群に無作為に割付けた.介入の効果をみるために,介入前と介入終了後の各群の腹囲・体重・BMIの減少量を比較検討した.また,試験開始前と介入終了後に食行動と生活活動についてのアンケートを行い,各群と行動変容の関係をみた.結果: 181名の試験対象者のうち,プロトコルに準じて試験を終了した者は150名であり,継続率は83%であった.3ヶ月間の腹囲・体重・BMIの減少量は,保健指導に内臓脂肪測定とウェブ支援を併用した群で最も大きく,有意な群間差を認めた.また,内臓脂肪測定とウェブ支援を行った群では,食行動の改善度が大きい人が多く,対照群では食行動・生活活動が悪化した人が多かった.考察:職域においてランダム化並行比較試験を行い,有効性を科学的に検証することができた.待機期間(ウェイティングリスト法)を併用する等,実施方法を工夫することにより,実際の産業保健活動を客観的に検証することが可能となり,エビデンスに基づいた活動の選択・実施にもつながると考えられた.
  • 各務 竹康, 辻 雅善, 日高 友郎, 熊谷 智広, 早川 岳人, 福島 哲仁
    原稿種別: 原著
    2014 年 56 巻 5 号 p. 116-120
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/18
    [早期公開] 公開日: 2014/07/07
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    目的:深夜勤務を伴う不規則な交替勤務に従事する労働者の深夜勤務後の疲労回復に関連する要因について検討すること.方法:福島県に本社をおく鉄道会社の従業員を研究対象とした.対象となる会社は旅客運送を行っており,乗務員など多くの従業員が,毎日就業時間の異なる不規則な交替勤務に従事している.2011年10月に従業員89人に自記式質問票による調査を行い,回答が得られた84人のうち,9月の1ヶ月間に深夜勤務(深夜0時をまたぐ勤務)に従事した男性52人を調査対象とした.深夜勤務後の疲労回復は質問票で「深夜勤務による疲れは,どのくらいで回復しますか」と質問を行い,「疲れを感じない」,「翌日に回復する」,「2,3日で回復する」「それ以上」からの選択とした.選択肢を「疲れを感じない」,「翌日に回復する」と「2,3日で回復する」「それ以上」の2群に分類した.疲労回復に関与する要因として年齢,肥満度(BMI),平日の平均睡眠時間,深夜勤務前の仮眠の有無,生活習慣病リスク (高血圧,脂質異常,糖尿病) の有無,生活ストレス蓄積の自覚,運動習慣の有無についての質問を行い,回答を得た.統計処理は,年齢,肥満度,睡眠時間についてはstudentのt検定にて平均の比較を,仮眠,生活ストレス,運動習慣については χ2乗検定による分布の比較を行い,有意水準を両側5%とした.結果:深夜勤務後の疲労が翌日までに回復すると回答した者は32人,2日以上と回答した者は20人であった.検定の結果,深夜勤務後の疲労回復が2日以上と回答した群では,生活ストレスの解消が不十分であると自覚している者が有意に多かった(p=0.035).年齢,肥満度,睡眠時間,深夜勤務前の仮眠の有無,生活習慣病リスクの有無,運動習慣については疲労の蓄積との間に有意な関連を認めなかった.また,ストレス解消手段と日常ストレスの解消については,日常ストレスの解消が不十分と回答した群では,ストレス解消手段としてお酒 (p=0.045),タバコ (p=0.030) を選択した者の割合が有意に多かった.考察:本研究では,日常ストレス解消の自覚度と,疲労の回復期間に関連が認められた.また,ストレスの解消は,解消手段により効果が異なっており,個人に合わせたメンタルケアの必要性が示唆された.
  • 角谷 学, 中村 忍, 杉尾 佑夏, 平岡 浩子, 栗田 恵美, 原田 あゆみ, 松本 三重子, 中西 理恵子, 杉浦 徹太郎
    原稿種別: 原著
    2014 年 56 巻 5 号 p. 121-127
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/18
    [早期公開] 公開日: 2014/07/07
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    目的:メタボリックシンドローム(以下MetS)発症の予防・解消を目的とした特定健康診査・特定保健指導は40歳以上が対象とされているが,本研究は若年時のBMI増加と40歳代でのMetS発症との関連を検討することを目的とした.方法:30歳時点でMetS該当ではなかった男性877名を対象とした.対象を30歳時のBody Mass Index(以下BMI)により非肥満群(BMI<22),肥満予備群(22≤BMI<25)および肥満群(25≤BMI)に分類し,それぞれの群におけるBMIおよびMetS関連因子(収縮期血圧,拡張期血圧,空腹時血糖,HDLコレステロール,中性脂肪値)の30歳から35歳までの変化と40歳以降におけるMetS発症リスクとの関係についてCox比例ハザードモデルを用いて検討した.さらにBMI増加量別の非肥満群および肥満予備群におけるMetS発症リスクについても併せて検討した.結果:30歳から35歳までのBMIの増加は非肥満群(ハザード比2.80,95%信頼区間1.61–4.88),肥満予備群(ハザード比2.00,95%信頼区間1.44–2.77)ともに40歳以降でのMetS発症と有意に関連していた.また,非肥満群ではBMIが5年間で2以上増加した増加群(ハザード比9.39,95%信頼区間1.52–57.70)が,肥満予備群では増加群(ハザード比10.13,95%信頼区間4.30–23.80)に加えBMIの変化が5年間で1以上2未満増加した微増群(ハザード比2.30,95%信頼区間1.03–5.11)においてもMetS発症リスクと有意に関連していた.結語:若年時のBMI増加は将来のMetS発症リスクとなり,特に30歳時点のBMIが低い状態であっても,その後の上昇の程度で将来のMetS発症率に違いが生じることが示された.このことから職域のMetS発症抑制対策においては若年者の体重安定化に向けた取り組みも必要であると考えられた.
  • 松本 悠貴, 内村 直尚, 石田 哲也, 豊増 功次, 久篠 奈苗, 森 美穂子, 森松 嘉孝, 星子 美智子, 石竹 達也
    原稿種別: 原著
    2014 年 56 巻 5 号 p. 128-140
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/18
    [早期公開] 公開日: 2014/07/18
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    目的:ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)に代表される睡眠尺度の多くは,実際の睡眠時間や日中の眠気といった量的問題や,睡眠の維持・導入といった質的問題を捉えてある.それらに加えて,24時間型社会となった今日では起床時刻・就寝時刻といった位相の問題まで視野に入れていく必要があり,かつ睡眠の位相・質・量のいずれに問題があるのかを把握するためには各々に測定・評価しなければならない.そこで我々は位相・質・量の3つの睡眠関連問題について測定する3次元型睡眠尺度(3 Dimentional Sleep Scale; 3DSS)の日勤者版を開発した.本研究はその信頼性・妥当性を検証することを目的とする.対象と方法:対象は製造業およびサービス業に従事する日勤労働者635名(男性461名,女性174名)で,平均年齢は40.5歳であった.質問紙は全17項目から成り,事前研究結果および専門家との討議を参考に睡眠の位相・質・量に関する質問を設定した.回答偏向分析後,探索的および確認的因子分析を行った.信頼性はクロンバックα信頼性係数を算出して求め,尺度の得点化・上位-下位分析を行った.仮説検定ではPSQIおよびSDSより位相・質・量それぞれに関連した項目を抜粋し,3DSSの各尺度得点との相関をみて収束的妥当性および弁別的妥当性の検証を行った.また,PSQIの総合点と3DSSの各尺度得点との相関についても検証を行った.結果:回答偏向分析にて回答に大きな偏りはみられなかった.探索的因子分析の結果2項目が削除されたが3つ因子が抽出され,位相に関する質問5項目,質に関する質問5項目,量に関する質問5項目の計15項目となり,確認的因子分析においても15項目モデルの方が適合度が高かった.α 信頼性係数は下位尺度毎では位相 = 0.685,質 = 0.768,量 = 0.717であった.仮説検定では,収束的妥当性については仮説がすべて採択された.弁別的妥当性については新尺度および既存尺度の質尺度と量尺度の間で仮説をやや上回る相関がみられていた.PSQIの総合点と3DSSの各尺度得点との相関についてもすべて仮説が採択された.考察:本研究において,我々の開発した3次元型睡眠尺度(3DSS)の日勤者版について,日勤労働者を対象として使用するにあたり,必要と考えられる信頼性・妥当性が示された.今後さらに対象者数を増やし調査を重ねることで尺度の標準化およびカットオフ値の設定を行っていきたい.
調査報告
  • 影山 淳, 小田切 圭一, 鈴木 直子, 本田 久美子, 尾上 和永, 山本 誠, 水田 潔, 上原 明彦
    原稿種別: 調査報告
    2014 年 56 巻 5 号 p. 141-151
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/18
    [早期公開] 公開日: 2014/07/07
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    背景:健康問題や健康リスクを抱える人々を対象にした,数ヶ月から1年程度の期間継続する教育プログラムの教育効果については多くの報告があるが,対象を絞らず個人属性が様々である製造業従業員を対象に行う集団健康教育の教育効果についての報告はあまりない.目的:職域におけるポピュレーションアプローチとしての集団健康教育の教育効果を明らかにし,製造業従業員が自ら健康を管理・改善するための行動変容を支援する教育方法について検討すること.方法:定期健康診断受診時に「歯周病」をテーマに1時間の集団健康教育を1回実施し,歯周病の知識,歯周病予防のための口腔ケア方法,生活習慣改善の必要性を教育した.289名(平均年齢42.1±11.3歳,男性175名,女性114名)を対象に自記式質問紙調査を行い,教育による知識習得,歯科衛生行動と生活習慣の変化,歯周症状の変化をマクネマー検定で比較した.知識習得と歯科衛生行動,および行動変容と歯周症状の関連性についてカイ二乗検定で比較した.個人属性による知識習得と行動変容の違いをフィッシャーの正確確率検定で比較した.健康教育の満足度とそれに影響する要因を重回帰分析により検討した.結果:教育後,歯周病の知識に関する設問のほとんどで理解度の上昇が認められ教育1ヶ月後においても知識が定着していた.一部の設問では教育直後に比べ,1ヶ月後は正答率の低下を認めた.歯科衛生行動では教育1ヶ月後に望ましい行動変容が認められたが,生活習慣は変化が認められなかった.知識の習得と行動変容には関連性は認められなかったが,行動変容と症状の変化には関連性が認められた.個人属性による知識習得,行動変容への一貫した相違は認められなかった.受講者の集団教育の満足度に最も影響するのは教育テーマであった.結論:我々が行った集団健康教育は受講者の歯周病に関する知識習得に有用であった.行動変容が得られた場合には,歯周病症状の改善が認められるものの,一方では知識の習得と行動変容に関連性がなかったことから,行動を妨げる要因の検討と行動変容を促すため環境整備を含めた支援が必要であることが示唆された.適切な教育テーマの選択は集団健康教育の評価に影響し,教育効果を得るために重要だと考えられる.知識の確実な定着,歯科衛生行動の習慣化そして生活習慣の改善のために,継続教育の必要性が示唆された.
  • 吉田 えり, 山田 和子, 森岡 郁晴
    原稿種別: 調査報告
    2014 年 56 巻 5 号 p. 152-161
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/18
    [早期公開] 公開日: 2014/07/07
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    目的:男性看護師においては,首尾一貫感覚(Sense of Coherence,SOC),ストレス反応,SOCとストレス反応との関連を明らかにした研究は見当たらない.本研究では,病院に勤務する男性看護師のSOC,ストレス反応,SOCとストレス反応との関連性を明らかにすることを目的とした.対象と方法:男性看護師51名と女性看護師51名を解析対象者とした.女性看護師は,年齢を±1歳で,有する資格を看護師あるいは看護師と保健師で,勤務部署を「内科系病棟」「外科系病棟」「その他の病棟」の3区分で,男性看護師にマッチさせた.調査項目は,属性,SOC,職業性ストレス簡易調査票,勤労者のためのコーピング特性簡易尺度(Brief Scales for Coping Profile,BSCP)であった.SOCとストレス反応との関連は,心理的あるいは身体的ストレス反応を従属変数として,重回帰分析で検討した.結果:男性看護師の年齢の中央値は27歳で,四分領域は24–30歳であった.臨床経験年数の中央値は4年で,四分領域は2–7年であった.SOCの総得点には,男女間の差が認められなかった.男性の心理的な仕事の負担(質)は女性に比べ少なく,職場環境によるストレスは高かった.ストレス症状では,男性の抑うつ感が強かった.ストレス反応に影響を与える因子では,男性の上司・同僚からの支援度は女性に比べ低かった.BSCPの下位尺度では,男性の「他者への情動発散」と「回避と抑制」は女性に比べ高く,「問題解決のための相談」は低かった.SOCの総得点は男女とも,ストレス要因9因子,影響因子4因子,BSCP6下位尺度,年齢で補正しても,ストレス反応の心理的ストレス反応と身体的ストレス反応に有意な関連を認めた.SOCの下位尺度である処理可能感は,男性においてのみ心理的ストレス反応と身体的ストレス反応に関連性が認められた.結論:SOCは,性差を認めなかった.抑うつ感は男性の方が強かった.SOCの総得点と心理的ストレス反応・身体的ストレス反応との関連性は男女とも同様の傾向を示したが,SOCの下位尺度の関連性には性差を認めた.
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