産業衛生学雑誌
Online ISSN : 1349-533X
Print ISSN : 1341-0725
58 巻 , 4 号
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原著
  • 畑中 純子
    2016 年 58 巻 4 号 p. 109-117
    発行日: 2016/07/20
    公開日: 2016/07/29
    [早期公開] 公開日: 2016/06/16
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    目的:本研究はうつにより休業した従業員の職場復帰において産業看護職が行う個人支援の構造を明らかにすることを目的とした.対象と方法:うつによる休業からの職場復帰支援を行っている産業看護職10名を対象に半構造化面接を実施した.データ分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ法を用いた.結果:分析の結果,9つのカテゴリーが生成された.職場復帰支援は(1)病状回復優先期,(2)復帰準備期,(3)職場適応期の3つの時期に大別された.それぞれの時期での看護行為は,〈療養できる環境整備〉〈つなぐ〉〈周りから支持〉という間接支援と,従業員との〈関係性の構築〉により進展していく〈療養のための心の準備への支援〉〈社会的心理的課題克服への支援〉〈自立への支援〉への直接支援とに分けられた.これらの支援の根底には産業看護職が従業員と職場の双方にとって〈有益となる職場復帰への支援〉を行うという思いがあった.産業看護職によるこれらの支援過程は,従業員がうつにより休業したことで失った自信を徐々に取り戻して,円滑な職場復帰を遂げるための【自信回復への支援プロセス】であった.考察:職場復帰には病状に応じた各期の課題があり,産業看護職は従業員がそれぞれの課題を乗り越えられるための支援を行っていたと考えられた.また,職場復帰支援では職場の協力がその成否に大きく影響するといわれており,従業員への直接支援のみならず関係者との調整が従業員への間接支援として必要であったと推察された.結論:職場復帰の各期において間接・直接支援を行うことにより,従業員が自信回復を図れるためのプロセスを支援することが,産業看護職の支援の構造であると示唆された.

  • 松田 有子, 根岸 茂登美, 大谷 喜美江, 荒木田 美香子, 東 敏昭
    2016 年 58 巻 4 号 p. 118-129
    発行日: 2016/07/20
    公開日: 2016/07/29
    [早期公開] 公開日: 2016/06/13
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    目的:本研究の目的は,産業看護職の救急処置に関する基礎的能力向上を図るために開発した救急処置研修プログラムの妥当性と有用性を評価することである.方法:研究デザインは比較対照研究で,対象者は事業場に勤務する看護職69名(介入群:35名,待機群:34名)とした.研修プログラムはインストラクショナルデザインの手法を用いて開発し,一次救命処置トレーニング,救急処置の基本,ファーストエイド,シミュレーショントレーニングを組み合わせた内容とした.研修は2012年4~8月に実施した.研修の評価はThe Kirkpatrick Model of Training Evaluationを用いレベル1:Reaction(反応),レベル2:Learning(学習),レベル3:Behavior(行動)について評価した.The Kirkpatrick Model of Training Evaluationはレベル1~4まであるが,本研究ではレベル3までを評価した.評価内容は,レベル1では研修内容についての興味,理解,職場で活用できるかなど0~10点のVisual Analogue Scale(VAS)法,レベル2では知識テスト(正誤式15問),レベル3では救急体制に関する活動の有無とした.結果:対象者の属性および事業場の特性で介入群と待機群に有意差のある項目はなかった.研修の満足度(レベル1)は8.5~9.7点であった.知識テスト(レベル2)では,研修前の得点は介入群11.0点,待機群11.1点で有意差はなかった.3か月後の得点は,介入群12.5点,待機群11.0点で有意差が認められ,介入群では研修前より研修3か月後の得点が有意に上昇した.3か月後の実践度(レベル3)では,「必要物品の管理・見直し」「役割の見直し」「産業看護職との救急体制についての話し合い」を実施した割合が介入群で有意に高かった.考察:本研究で用いた産業看護職のための救急処置研修プログラムは,参加者の満足度が高く,知識の向上,行動変容に寄与することが示唆され,妥当な内容であったと考える.

  • 岩切 一幸, 高橋 正也, 外山 みどり, 劉 欣欣, 甲田 茂樹
    2016 年 58 巻 4 号 p. 130-142
    発行日: 2016/07/20
    公開日: 2016/07/29
    [早期公開] 公開日: 2016/06/13
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    目的:本研究は,腰痛予防に有用な福祉用具を導入しても残る介護者の腰痛発生要因をアンケート調査により明らかにすることを目的とした.対象と方法:対象施設は,福祉用具を積極的に導入し,様々な安全衛生活動に取り組んでいる8つの高齢者介護施設とした.対象介護者は,それらの施設に勤務する介護者全員とした.調査票は,本調査用に作成した施設管理者記載の施設用アンケートと介護者記載の介護者用アンケートを用いた.施設用アンケートでは,施設の基本情報と安全衛生活動について調査した.介護者用アンケートでは,介護者の基本情報,取り組んでいる安全衛生活動,移乗介助方法,入浴介助方法,腰痛の症状,職業性ストレスの程度を調査した.結果:施設用アンケートの配布数は8部,回答数は8部,回収率は100%であった.介護者用アンケートの配布数は404部,回答数は373部,回収率は92.3%,そのうち性別・年齢の記載のない者を除いた367名を解析対象者とした.介護施設では,種々の安全衛生活動に取り組んでおり,多くの介護者がそれらの活動に参加していた.また,施設ではリフトをはじめとした種々の福祉用具を導入し,多くの介護者が移乗介助や入浴介助において福祉用具を使用していた.過去の調査に比べると重度の腰痛者割合は少ないことが伺われたが,それでもなお,10.1%の介護者が仕事に支障をきたすほどの腰痛(重度の腰痛)をかかえていた.その原因を探るために,得られたデータをロジスティック回帰分析にて解析したところ,入居者ごとの介助方法を実施していない,同僚間にて介助方法に関する話し合いをしていない,福祉用具の使用を指導されていない,作業ローテーションを工夫していないことが,重度の腰痛との間で関連性が認められた.また,移乗介助および入浴介助において無理な作業姿勢をとっている,人力での入居者の持ち上げを行っている,移乗介助において作業時間に余裕がない,入浴介助において作業人数が不足していることも,重度の腰痛との間で関連性が認められた.考察:今回,腰痛要因として抽出された安全衛生活動は,ほとんどの施設において介護者に指導されている内容であった.しかしながら,介護者によっては入居者ごとの介助方法を実施しなくなり,それにともなって同僚間での話し合いや福祉用具の使用,作業ローテーションの工夫がおろそかになり,適切な作業姿勢や動作が行われなくなることで,仕事に支障をきたすほどの重度な腰痛になっていたと示唆された.これらのことから,福祉用具を導入しても残る介護者の腰痛発生要因は,適切な介助方法が十分に徹底されなくなることと考えられた.それを防ぐためには,介護者の意識改善,介助方法を定期的に再確認する体制の構築,入居者一人一人の作業標準を介護者間で議論・検討した上で徹底させていくといったリスクアセスメントと労働安全衛生マネジメントシステムの実施が必要と思われた.

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