産業衛生学雑誌
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60 巻 , 6 号
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総説
  • 道喜 将太郎, 原野 悟, 品田 佳世子, 大山 篤, 小島原 典子
    2018 年 60 巻 6 号 p. 169-179
    発行日: 2018/11/20
    公開日: 2018/12/05
    [早期公開] 公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー HTML

    目的:日本産業衛生学会関東地方会により2017年5月に公開された『科学的根拠に基づく「産業保健における復職ガイダンス2017」』のレビュークエスチョンの一つである「休業者に対して職場の復職支援プログラムは,復職に関する就業アウトカムを向上させるか.」について,システマティックレビューにより知見を集積することを目的とした.対象と方法:Pubmed,Cochrane Library,医中誌の3つのデータベースを用いて検索を行った.ガイダンス作成グループは,システマティックレビューの結果に基づき,Evidence to Decision frameworkを用いて推奨案を作成し,投票で推奨を決定した.システマティックレビューとメタアナリシスを疾患横断的に行い,これまで明らかになっているエビデンスを統合した.本システマティックレビューの研究計画はPROSPEROに登録されている(CRD42016048937).結果:筋骨格系障害に関しては5編,メンタルヘルス不調は6編の統合を行った.心臓疾患やがんについては適格基準に当てはまる文献はなかった.筋骨格系障害では,通常のケア群より作業療法群で早く復職する結果が得られた(HR 1.58[95%CI 1.26―1.97],-40.71日[95%CI -60.69―-20.72]).メンタルヘルス不調では,心理療法的介入による復職支援プログラム群は通常のケア群に比べて休業期間が有意に短かった(-18.64日[95%CI -27.98―-9.30日]).考察と結論:筋骨格系障害による休業に対する復職支援プログラムの介入では,リハビリテーションという腰痛への直接的なアプローチに加えて,職場の上司や産業保健スタッフとの複数回のミーティングを行い,作業環境管理,作業管理,心理的問題への取り組みや認知行動療法的手法を用いることで早期の職場復帰に役立つ可能性がある.メンタルヘルス不調においては,精神科医や心理職への相談が有効である可能性や,心理療法的アプローチで面談を行うことで休業日数の短縮の可能性が示唆された.また,職場復帰におけるリワーク・プログラムの重要性が明らかになった.ただし,日本で実施された研究はないため,これらの介入方法については,国ごとの産業保健の仕組みや文化の違いから単純に導入することが出来ない点で慎重な検討が必要である.今後,日本においてエビデンスレベルの高い研究が実施される必要がある.

調査報告
  • 森鍵 祐子, 菅原 保, 中野 あゆみ, 神村 裕子, 齋藤 忠明
    2018 年 60 巻 6 号 p. 180-190
    発行日: 2018/11/20
    公開日: 2018/12/05
    [早期公開] 公開日: 2018/09/19
    ジャーナル フリー HTML

    目的:産業保健活動総合支援事業において,産業保健総合支援センター(産保センター)と地域産業保健センター(地産保)が小規模事業場を支援しているが,その活動実態はあまり明らかとなっていない.本研究は,小規模事業場への産業保健サービスの充実化につなげるため,地産保の活動実態と地産保の活動に対する主観的評価を明らかにすることを目的とした.対象と方法:平成28年9月から平成29年1月に,全国の地産保344か所の地域運営主幹377名ならびにコーディネーター507名を対象に,郵送法による無記名自記式質問紙調査を行った.地域運営主幹・コーディネーターの属性,地産保の体制と活動状況,地産保の活動に対する主観的評価等を尋ねた.結果:地域運営主幹290名(76.9%),コーディネーター413名(81.5%)から回答を得た.地域運営主幹のうち医師会産業保健担当理事が66.2%であった.コーディネーターの平均経験年数は5.7年,資格を有する者は44.6%であり,衛生管理者が最も多かった.コーディネーター以外のスタッフがいる地産保は22.0%であり,登録保健師の配置ありは29.8%であった.事業場が地産保に登録・利用するきっかけとして労働基準監督署の指導が最も多かった.地産保の活動に対する主観的評価では,地域運営主幹,コーディネーターのいずれも9割以上が活動できていると評価していた.コーディネーターから相談されると回答した地域運営主幹は相談されないと回答した者に比し(p<.001),産保センターからの相談・指示ありと回答した者は相談・指示なしと回答した者に比し(p=.006),かなり活動できていると評価していた.地区医師会が複数に比べ単独は(p=.014),コーディネーターの資格ありはなしに比し(p=.007),活動内容の情報提供を行っている者は行っていない者に比し(p=.011),事業場へのメール・ホームページでの情報提供を行っている者は行っていない者に比し(p<.001),健康相談カルテ等を使用しているコーディネーターは使用していない者に比し(p<.001),地域運営主幹への相談ありのコーディネーターはなしの者に比し(p=.028),かなり活動できていると評価していた.また活動に見合う登録産業医がいると回答したコーディネーターはいないと回答した者に比し(p=.032),活動内容の情報提供を行っている者は行っていない者に比し(p<.001),健康相談カルテ等を使用しているコーディネーターは使用していない者に比し(p=.006),資格ありの者が多かった.考察と結論:地産保の活動実態が明らかとなり,地産保によりスタッフの体制や地産保活動の展開方法が異なることが示唆された.コーディネーターのみで活動している者や資格を有しない者が多かったことから,産業保健に関する知識を有することができるよう研修を充実させることと実際の業務支援が必要と考える.地産保活動は概ね肯定的に捉えられていたが,地域運営主幹とコーディネーターの相談連絡の円滑化や広報活動の活発化,健康相談カルテ等のツールの活用が活動の活発化に影響すると示唆された.

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