産業衛生学雑誌
Online ISSN : 1349-533X
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60 巻 , 3 号
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総説
  • 能川 和浩, 小島原 典子
    2018 年 60 巻 3 号 p. 61-68
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2018/05/31
    [早期公開] 公開日: 2018/03/12
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    目的:休職中の労働者が復職するときに,就業上の配慮として軽減業務が産業医から指示されることは多い.例えば,時短勤務で復職すると休職期間が短縮する,業務負荷を軽減すると復職後の再休職が低下するなど,就業上の配慮は復職後の就業アウトカムを向上させる効果はあるのだろうか.我々は,産業保健現場からの疑問に対してGrading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation(GRADE)アプローチを採用して定性的システマティックレビューを行い,日本の産業保健現場において活用できる推奨を作成した.方法:「科学的根拠に基づく産業保健における復職ガイダンス(復職ガイダンス2017)」のレビュークエスチョンのひとつとして「P:私傷病で休職中の労働者に対して,I:復職時の就業上の配慮は,C:ない場合と比べて,O:休職期間の短縮など就業上のアウトカムを向上させるか」が公募より選定された.復職時の就業上の配慮として,時短勤務などの軽減業務に関する介入研究について,Cochrane Library,PubMed,医中誌Webを用いて文献検索を行った.632件の無作為化比較試験(Randomized controlled trial;RCT),またはコホート研究が抽出されたが,既存のシステマティックレビューは検索されなかった.復職ガイダンス策定委員会がスコープで決定した選択基準,除外基準に従い,2名が独立して文献スクリーニングを行った.介入研究は,RevMan5.3を用いてバイアスリスクの評価を行い,観察研究のバイアスリスクは,Newcastle-Ottawa scaleで評価した.GRADEPro GDTを用いて,バイアスリスク,非一貫性,非直接性,不精確,出版バイアスなどからエビデンス総体の確実性の評価を行った.GRADEのEvidence to Decisionを採用して,推奨作成グループの無記名投票により推奨作成を行った.結果:筋骨格系障害による休職者に対する時短勤務または,軽減作業に関する3研究(RCT1件,コホート研究2件)が抽出されたが,統合できるアウトカムはなかった.メタアナリシスは行わなかったが,定性的システマティックレビューの結果より,時短勤務が休職期間を短くし,軽減作業が再休職率を下げる可能性があることが示唆された.推奨作成グループで検討し,休職中の労働者に対して,復職時に就業上の配慮を行うことが筋骨格系障害において推奨された.(低いエビデンスに基づく弱い推奨)考察と結論:今回の結果は,産業保健体制の異なる海外の筋骨格系障害からの休職者に対する研究の定性的システマティックレビューによるものである.今後,我が国における,メンタルヘルス不調などほかの疾患に関する比較研究,費用対効果などのエビデンスを蓄積させていくことが求められる.

原著
  • 畑中 純子, 髙﨑 正子, 畑中 三千代
    2018 年 60 巻 3 号 p. 69-77
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2018/05/31
    [早期公開] 公開日: 2018/03/29
    ジャーナル フリー HTML

    目的:メンタルヘルス不調の労働者への支援では,産業保健スタッフと管理監督者がそれぞれの役割を果たし,連携することが求められる.しかし,他職種との連携にはいくつかの課題があり,困難なことも多い.連携を促進するには,効果的な相互作用を生じさせる必要があるとされ,そのための関係性を構築しなければならない.そこで,本研究は労働者支援において産業看護職が管理監督者との連携のために行っている関係形成の構造を明らかにすることを目的とした.対象と方法:産業看護経験5年以上でメンタルヘルスの個別支援を行っている産業看護職11名を対象に,半構造化面接を実施した.分析には,山浦の質的統合法(KJ法)を用いた.結果:関係形成の要素として示された最終ラベル(以下,ラベルのシンボルマークの事柄を≪ ≫で示す)は6つであった.産業看護職は管理監督者と連携が必要となる前あるいは後から≪日頃からの関係づくり≫を行い,面接等の場面では≪管理監督者に合わせた対応≫により,関係を築くようにしていた.そして,メンタルヘルス不調の部下に関わる管理監督者の不安や本音を共感して聴き,安心感を醸成できるように≪管理監督者の心を援助≫していた.また,産業看護職の専門性から職場での状況を判断して管理監督者が部下への関わり方を具体的に分かるように助言して≪管理監督者の行動を援助≫したり,管理監督者のみに負担が掛からないように関係者をコーディネートして≪管理監督者を周囲から援助≫していた.これらの援助は,事業場の体制や規則の中でメンタルヘルス不調の部下を支援する管理監督者の≪役割を明確にする組織づくり≫をすることで促進されていた.考察と結論:産業看護職がメンタルヘルス不調の労働者支援の役割を遂行する前から管理監督者を尊重し感情を大切にして情緒的人間関係を形成したのは,対人援助においては人間関係の質がケアの質を決定することを理解していたからであろう.そして,その関係を生かして管理監督者を心・行動・周囲から援助して役割負担の軽減を図ることで,管理監督者から専門職としての産業看護職に対する信頼を得られたと考えられた.産業看護職が管理監督者と連携するための関係形成は,連携の必要性の生じる前あるいは後から管理監督者との情緒的人間関係をつくり出し,それを基盤とした管理監督者への支援により信頼関係へと発展させるという構造であることが示唆された.

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